複数の金融商品を購入している場合、商品の価格が変動することにより、はじめに決定した資産配分が崩れてきます。また、金融商品は買って終わりではなく、ライフステージによるリスク許容度の変化に応じた調整が大切です。

そこで、資産配分の見直しを適切なタイミングで行いましょう。この記事では資産配分の見直しについて、その重要性やポイントを詳しく解説します。

■ポートフォリオ、リバランスとは

<ポートフォリオとは>

投資における「ポートフォリオ」とは、”どの金融商品にどのくらいの割合で投資するか”という資産配分を意味します。ポートフォリオを作る際は、投資先をなるべく分散させることが重要です。そして、分散投資の効果をより高めるには、株や債券、不動産など値動きの異なる資産に幅広く投資することが欠かせません。

たとえば、株と債券は基本的に正反対の性質を持ち、異なる値動きをします。また、国内の景気が悪くても、海外には景気の良い地域があり、その反対のケースもあり得ますので、地域を分散することも大切です。

ポートフォリオの一例を挙げますと、国民年金や厚生年金の保険料の積立金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」では、国内株式25%、国内債券25%、外国株式25%、外国債券25%という基本ポートフォリオを採用しています。このように複数の資産に分散投資することで、ある資産が値下がりしても別の資産でカバーできる可能性があるのです。

また、ポートフォリオは投資家の年齢やリスク許容度(収益がマイナスに振れてしまった場合、どれくらいまでならマイナスを受け入れられるかの度合い)、投資目的などに基づき個別に設計されるのが望ましいとされています。

たとえば、若い人なら長期的な資産形成が可能になり、万が一値下がりしても時間をかけて回復できることから、比較的大きなリターンが見込める株式の比率を高めに設定することが推奨されます。

一方、リタイアや年金生活が近い高齢の人なら、債券の比率を高めに設定するのが一般的です。この年代の人は、老後資金を確実に確保する必要があるため、株式市場の急激な変動による資産の目減りを避けたいからです。債券は株式と比べると価格変動が小さいですが、定期的な利子収入も見込め、より安定的な資産運用が期待できます。

<リバランスとは>

一度ポートフォリオを設定して運用を始めても、経済状況によって、ある資産は大きく値上がりし、反対にある資産は大きく値下がりするということが起こり得ます。その場合、資産の比率を元に戻さないと、安定的な運用を目指すことができなくなります。

資産を元の配分比率に戻すことを、「リバランス」といいます。リバランスは、値上がりして配分が増えたものを売り、値下がりして配分が減ったものを買い増すのが基本的なやり方です。

たとえば、株式50%・債券50%の比率で保有していたけれど、株式市場の上昇によって株式70%・債券30%に比率が変わってしまったとします。その場合、株式の一部を売却、もしくは債券を買い増すことで、株式50%・債券50%の比率に戻すのです。

配分比率がずれたままだと、リスク(価格変動)が大きくなり過ぎたり、期待した収益が得られなくなったりする可能性があります。そのため、保有資産を定期的に見直し、調整することが重要です。

■リバランスのタイミングややり方、リアロケーションとの違い

<リバランスのタイミングと方法>

リバランスは、四半期・半年・1年ごとなど期間を決めて定期的に行うという考え方が一般的です。ただし、金融商品によっては購入や売却に手数料がかかり、また、値上がり益からは税金が差し引かれます。あまり頻繁にリバランスを行うとコスト負担が大きくなるため、注意しましょう。

定期的に見直す以外にも、相場が大きく動き、リスク許容度を超えるような配分変化が起きた時のみリバランスを行うという考え方もあります。

次に、リバランスの具体的な方法を確認してみましょう。リバランスには主に、以下の2通りの方法があります。

1.運用資産内で調整する方法

一つめは、保有する資産の中で比率の大きくなってしまった資産を売却し、比率の小さくなった資産を購入して運用資産内でリバランスする方法です。

たとえば、株式50%・債券50%の比率が株式60%・債券40%になってしまい、株式60万円・債券40万円を保有している場合、株式を10万円分売却し、その代金で債券を10万円分購入してリバランスを行います。

2.新たな資金で調整する方法

もう一つは、比率の大きくなった資産は売却せず、比率の小さくなった資産に新たな資金を投入してリバランスする方法です。

たとえば、株式50%・債券50%の比率が株式60%・債券40%になってしまい、株式60万円・債券40万円を保有している場合、債券を20万円分追加購入して株式60万円・債券60万円となるようリバランスを行います。

なお、資産配分の見直しは、資産の配分比率が変わった時だけでなく、ライフステージに変化が起きた時にも必要です。たとえば、独身のうちは株式中心など、リスクが大きい代わりにリターンも大きくなるようなポートフォリオで運用していたとします。

しかし、結婚して子どもが生まれ教育費という新たな支出が加われば、取れるリスクは減少するため、債券中心などより安定的なポートフォリオに調整する必要があります。

ただし、転職した、病気で入院したなど生活に変化があるたびに資産の見直しを行うと、かえって投資の効率が悪くなってしまいます。資産の見直しは、多くても年2回を限度に行いましょう。

ライフステージの変化による資産配分の見直しは、リバランスというより「リアロケーション」という資産配分そのものの見直しに当てはまります。次に、リバランスとリアロケーションの違いについて見ていきましょう。

<リアロケーションとの違い>

リバランスと似た言葉に、「リアロケーション」があります。リアロケーションとは、資産配分そのものを見直すことです。ライフステージの変化に伴って運用方針が変わった場合は、どのような資産配分が適切なのか検証し、ポートフォリオの変更を行います。

たとえば、30〜40代では収益性を重視し、株式70%・債券30%の比率でポートフォリオを設定していたとします。しかし、退職してセカンドライフを送る場合は、安定性を重視し、株式30%・債券70%といったポートフォリオに設定し直す必要があります。

リバランスとリアロケーションの違いをもう少しまとめると、リバランスとははじめに設定した資産配分に調整し直すことで、資産配分そのものは変える必要がありません。一方、リアロケーションとは資産配分そのものを見直すことですので、資産配分を変える必要があります。

また、リバランスは当初の投資目的やリスク許容度を変えることはないのに対し、リアロケーションは投資目的やリスク許容度を変更します。

なお、リアロケーションは経済状況や世界情勢に大きな変化があった場合に行うこともあります。たとえば、これまでは海外市況が好調で海外の資産を多く保有していたけれど、経済動向が変化して国内市況が好調になったため、国内の資産を多めに保有するようリアロケーションを行う、というケースです。

■押さえておきたいリバランスのポイント

安定的な運用や、期待した収益確保のためには欠かせないリバランス。最後に、リバランスを行う際に押さえておきたいポイントを確認しましょう。

1.はじめに設定したポートフォリオは崩れていないか

リバランスの基本は、当初設定したポートフォリオが崩れていないか確認することです。資産のバランス配分は、市場の動きによって常に変化していますので、目標とする資産配分が維持されているか確認します。その際、

・資産クラス別(株式、債券など)の保有比率
・国内資産と海外資産の比率
・通貨別の保有比率
・業種やセクター別の偏りがないか
・個別銘柄への集中度

などの観点からチェックを行います。資産配分が崩れていないか確認するほか、為替によるリスクが大きくなっていないか、特定の銘柄や業種に集中投資し過ぎていないかなどの点もよく見てみましょう。

2.ライフステージの変化に適したポートフォリオになっているか

リバランスを行う機会には、ライフステージの変化に合ったポートフォリオになっているかどうかも確認しましょう。たとえば、以下のような人生の節目となる出来事は、投資スタイルやリスク許容度に大きな影響を与えます。

・結婚や出産
・住宅購入
・転職や退職
・病気など健康状態の変化
・相続の発生

先ほどもあったように、たとえば、子どもが産まれて教育費という新たな支出が増えると、リスクを取れる余裕が減少します。そのため、より安全性の高い資産配分にシフトする必要があるのです。その他、運用目的や期間、運用方針が変わっていないか確認し、投資の見直しが必要ないか検討しましょう。

3.金融市場や経済状況に大きな変化はないか

常に変化している金融市場に応じ、ポートフォリオの調整が必要になることもあります。特に、金利の変動や経済成長率の変化は、資産価値に影響を与える可能性があります。金融市場や経済状況については、以下のような点を確認してみましょう。

・主要国の金利動向
・為替相場の変動
・地政学的リスクの発生有無
・各国の経済指標

これらに大きな変化が起きた場合は、自身のポートフォリオの確認や適切な対応が必要です。

■ポートフォリオの「定期検診」を忘れずに

普段は時間や手間をかけずに投資している人も、完全に放置してしまうのではなく、定期的な資産配分の見直しをしましょう。投資を続けるには、日常生活に支障がないことも大切ですが、リバランスというポートフォリオの「定期検診」も欠かせないのです。

「年に1回」など定期的なリバランスのほか、金融市場やライフステージに変化があった時など、自分なりのタイミングを決めて見直しを実施してみましょう。