ホットハッチの現状|今や貴重なICEのホットハッチ、8代目VWゴルフとBMW M135を試す

『Octane』UKスタッフによるレポート。今回は最新ホットハッチである8代目VWゴルフとBMW M135に試乗し、その乗り味をレポート。

【画像】『Octane』UK編集部が試乗した人気の最新ホットハッチ2台(写真8点)

伝統的なホットハッチというセグメントが、移り変わる自動車業界の中で消えつつある現状は、何度も繰り返されるトレンドのひとつだろう。フランスの自動車メーカーから小型のガソリンパフォーマンスカーがすっかり姿を消してしまったことが、その深刻さを物語っている。電気自動車(EV)がその穴を埋めようとしているものの、追加される500kgもの重量はスポーツサルーンやSUVと比べても隠しきるのが難しい。それだけに、ドイツのメーカーがこの魅力的なセグメントに忠実であり続けていることに、少し安心を覚えるのだ。その象徴とも言えるフォルクスワーゲン・ゴルフGTIが、最近のアップデートでその地位をさらに強固なものにした。

ゴルフGTIは初代ゴルフの誕生以来、常にラインナップの一部であり続け、現在では「Mk8.5」という最新の形に進化している。今回の改良では、主にMk8で導入された操作性に関する問題点を解決することに重点が置かれている。パフォーマンスカーにおいて優先順位が低いように思われるかもしれないが、ホットハッチにとって「使いやすさ」は非常に重要な要素だ。前モデルでは「ESCスポーツ」モードの設定がタッチスクリーンの奥深くに隠されており、これが操作を煩雑にしていたが、今回のモデルではメインスクリーンにショートカットが追加された。また、車内の警告音をオフにする機能も簡単にアクセスできるようになっている。

車の基本構造に大きな変更はないが、現在ではオートマチック専用のモデルとなっている(これはミニを含む多くのホットハッチでも同様だ)。7速DSGトランスミッションは、フォルクスワーゲンの速い車で長年採用されてきた2.0リッターターボエンジン「EA888」と相性が良い。ラインナップは261bhpを発生するGTIと、296bhpのGTIクラブスポーツの2モデルから。クラブスポーツにはフロントディファレンシャルロックが装備され、ドライブモードにはニュルブルクリンク専用の「スペシャル」設定が含まれている。このモードは荒れたB級道路での走行に最適だ。

さらに予算を追加すれば、328bhpの四輪駆動モデル「ゴルフR」が手に入る。このモデルは英国で非常に人気があり、第4世代ゴルフR32の登場以来、25万台以上が販売された。そのうちの5分の1が英国での販売台数というのだから驚きだ。オプションを含めると価格は5万ポンド近くになるが、この車は幅広い性能を持ち、遊び心のあるリアアクスルの挙動まで楽しむことができるのだ。さらに、ワゴンモデルも用意されているのもポイントだ。

市場の現状を考えると、この「R」のような高価格帯のモデルには多くの競合が存在する。そのパワーはシビックタイプRに匹敵し、価格帯はGRヤリスに近い。さらに、アウディS3、メルセデスAMG A35、そして最近大幅にアップデートされたBMW M135といった、ドイツ製四輪駆動モデルとの競争も激化している。

BMW M135は、今回の改良で大胆で自信に満ちたデザインを手に入れた。以前の「F40」と比べると印象が大きく変わり、8速オートマチックに代わって7速デュアルクラッチトランスミッションが採用された。搭載される2.0リッター4気筒エンジンの出力は296bhp、トルクは295lb-ftと若干抑えられたが、短いギア比と俊敏なシフトによってその分の楽しさを補っている。2速で50mph、3速で70mphと切り替わるため、英国の田舎道では頻繁にシフトチェンジを行うことになる。ヘッドアップディスプレイには回転計も表示され、この操作をさらに楽しくしてくれる。

乗り心地の硬さを除けば、M135は圧倒的な安定感を誇り、4輪に均等にグリップが配分される。コーナリングスピードは自信を持って高められるが、その一方でゴルフRの4Motionシステムほど遊び心のある挙動は見られない。しかし、4万3000ポンドの1シリーズには、単なる楽しさ以上の価値が求められるべきだろう。そのため、インテリアは非常に高品質に仕上げられている。より大きなBMWからダウンサイジングしても、損をした気分にはならないだろう。ただし、技術の進化に伴い、操作性のクセが少し目立つようになった点は否めない。完璧ではないにせよ、それでもこの車が存在していること自体が大きな喜びをもたらしてくれるのは間違いないだろう。

文:Stephen Dobie