大正製薬は1月10日、「正月疲れ」に関する調査の結果を発表した。調査は2024年12月13日~12月17日、全国の30歳~59歳の男女2,416人を対象にインターネットで行われた。

正月明けに疲れを感じている人は6割

30~50代の男女を対象に、正月明けに疲労の症状があったか聞いたところ、62.0%が「疲れ」があったと回答した。多くの人が何かしらの疲労悩みを抱えていることが伺える。

  • お正月疲れ

正月明けに疲れを感じるのは睡眠不調が原因?

「寝正月」という言葉があるように、正月休みには普段以上にゆっくりと寝て過ごしている人も多いかもしれない。しかし、正月明けに「疲れがあった」と答えた240人に「疲れの原因はなんだと思いますか?」と尋ねたところ、「睡眠の不調」と答えた人が47.9%と、意外なことに他の原因に比べ「睡眠の不調」が目立つ結果となった。では、なぜ正月明けに睡眠の不調を自覚するのか。

  • 「正月疲れ」の原因

生活リズムの乱れ

同様に正月明けに「疲れがあった」と答えた240人に、「正月の生活リズムは普段と比べてどうでしたか?」と尋ねたところ、「生活リズムがいつもより乱れていた」が63.8%、「生活リズムはいつもと変わらなかった」が28.8%、「生活リズムはいつもより良かった」が7.5%と、正月はいつもより生活リズムが乱れていることが分かった。

暴飲暴食

「正月はどのような食生活(食事)を送りましたか?」と尋ねたところ、「間食が多かった」が39.2%、「量が多かった」が33.3%、「献立に偏りがあった」が30.0%、「いつもと変わらなかった」21.7%と、食生活の乱れが散見される結果となった。正月期間中、特別な料理やお酒を楽しむ機会が増える一方で、食べ過ぎや食べる食材の偏りが見られたことが分かる。

食生活の乱れと「睡眠不調」の間には実際にどういった関係があるのか。飽和脂肪と砂糖の摂取量が多く、食物繊維の摂取が少ないと、睡眠が浅く、覚醒度が高くなるとの報告がある。また高脂肪食の摂取が、睡眠やホルモン分泌、代謝などの1日のリズムを調節する時計遺伝子に悪影響を及ぼすことが分かっている。

正月疲れを和らげるための方法

睡眠リズム・環境を整える

規則正しい生活習慣や寝具など、睡眠環境の見直しが最も重要となる。良い睡眠を促すために、寝る前に読書や軽いストレッチ、瞑想などリラックスできる時間を設けることで、心身の緊張を和らげることができる。

栄養バランスを整える

暴飲暴食を控えることはもちろん、正月期間中の栄養素の過剰摂取を挽回するために、摂取した栄養素を代謝させることも重要となる。果物、野菜、ビタミン剤などを積極的に摂取し、エネルギー代謝に役立つビタミンB群を補うことができる。

さらに、睡眠の質と疲労回復に意識したい栄養素として、タウリン、GABA、グリシン、トリプトファンについて解説する。

タウリン

タウリンは抗酸化作用を発揮する非タンパク質性のアミノ酸の1種。2023年6月には「Science」誌でタウリンの寿命延長作用や骨量増加、筋力増強作用など、抗老化にまつわる作用が報告された。また、2024年3月には大正製薬から、タウリンが睡眠を調節する因子(睡眠調節因子)の発現異常を抑制するという研究成果が発表された。タウリンを摂取することは、疲労回復や良質な睡眠にもつながり、快適な朝のスタートをサポートすることが期待される。一方で、タウリンの血中濃度は年齢とともに減少するため、日々の摂取を意識したい栄養素といえる。

GABA

GABA(γ-アミノ酪酸)は非タンパク質性のアミノ酸の1種であり、食品として手軽に摂取できる成分。GABAの摂取は、入眠までの時間の短縮やノンレム睡眠時間の増加に効果的。近年では、健康維持の観点から腸内環境を整えることが注目されており、一部の乳酸菌やビフィズス菌はGABAを産生することが報告されている。GABAを増やすためには、GABAそのものを摂取するだけでなく、乳酸菌やビフィズス菌を摂取することも有効となる。

グリシン

グリシンは体内でも産生されるアミノ酸の1種で、様々な生理機能に関与している。疲労や睡眠には細胞にダメージを与える酸化ストレスが関わっているが、グリシンは酸化ストレスを抑制するグルタチオンの元になる成分として知られている。グリシンの摂取は深部体温(体の内部の体温)を低下させ、睡眠の質を向上させることが報告されている。

トリプトファン

トリプトファンは乳製品や魚類などに含まれる必須アミノ酸の1種で、日々の食事から摂取しなければならないアミノ酸。トリプトファンは睡眠を促すホルモンであるメラトニンへと体内で変換される。メラトニンは深部体温を下げることで睡眠を促すが、日中に光を多く浴びることで夜間の分泌量が増加する。また、ビタミンB6はトリプトファンからメラトニンへの変換をサポートする栄養素として知られている。睡眠を促すメラトニン分泌のためには、トリプトファンの摂取だけでなく、日光浴やビタミンB6の摂取も意識できる。