大和ハウス工業は11月19日、「(仮称)大阪マルビル建替プロジェクト」を本格始動したことを発表した。
「大阪マルビル」は、大阪府の超高層ビルの先駆けとして1976年に竣工し、その円筒形のユニークな形状から大阪のランドマーク的な存在として長らく親しまれてきた。しかし、50年近くを経過し、建物・設備の老朽化や周辺施設との競争力の低下が課題となってきた。そこで2022年5月、より質の高い商品・サービスを提供するために建替えることを決定し、2024年9月に地上部分の解体を完工した。
そしてこのたび、ホテルやオフィス、コンサートホール・舞台、商業施設など様々な用途の複合施設を新設する建替プロジェクトが本格始動した。同社は今後、大阪の新たなランドマークとして、地域に根差し、愛される施設となるよう推進していくという。
大阪マルビル建替プロジェクト(仮称)の外観
同プロジェクトでは、大阪マルビルの形状を継承する。多種多様な人や用途、情報などがここに集まり、利用者の気持ちが高まることを期待し、それらが絡まり合うよう、建物の構成を単一の「マル」ではなく、多重に積層する「マル」で表現している。
大樹のような円筒形状は、ガラスカーテンウォール(非耐力壁のガラス)で構成し、外装には大樹の枝葉をイメージした緑化ルーバーを計画。地上には大樹の木陰を感じられるよう、半屋外の屋根下空間「ピロティ」を設ける。
また、ピロティと連続する球体アトリウムを設け、地下街「ディアモール大阪」とつなぐことで、地下から水を引き上げる大樹のように、地下から地上、そしてまちへと賑わいをつないでいく。
大阪マルビルの「回る電光掲示板」の継承
同プロジェクトでは、大阪マルビルの「回る電光掲示板」継承に向け、建物頂部にうめきたを含む大阪駅周辺からも視認できるデザインを施す検討を進めている。(現時点の検討内容であり、今後の検討・協議などにより変更となる可能性がある)
球体デジタルアトリウム
同プロジェクトでは、LEDディスプレイの投影映像に没入できる球体のデジタルアトリウムを設置する計画。地下2階から地上4階までの巨大な球体を施設内に形成する。デジタル映像を360度投影するアトリウムを地下と地上を結ぶ結節点として大阪駅周辺の新たなスポットとする。
ホテルやコンサートホール・舞台、ミュージアムなど多種多様な施設用途
同プロジェクトでは、都市再生特別地区(地区名称:梅田一丁目中央地区)の制度を活用し、宿泊・文化・イノベーション・集客・交流機能等の集積を図り、国内外からの来街者を惹きつける新たな魅力を創出することで、大阪の国際競争力向上に資する施設整備を行う。具体的には、展望スペースやミュージアム、ホテル、イノベーションオフィス、コンサートホール・舞台、商業施設など多種多様な用途で構成する。超高層ビル(高さ60mを超える建築物)で国内最多の用途が複合する施設となる予定。
ホテルでは、ラグジュアリーホテルや都市型ホテルを誘致し、2種類のホテルで総客室数約280室を計画。イノベーションオフィスとしては、世界トップクラスのイノベーション拠点を形成する計画だという。多種多様な人や情報が集まるワークスペースを設置し、入居するスタートアップの成長を支援するプログラムやコミュニティの提供を検討している。コンサートホール・舞台では、クラシックコンサートを主にしながら、舞台・客席の規模を変更できる設備を採用することで、多目的での芸術体験ができる空間を設計する。商業施設としては、大阪マルビルの雰囲気を継承する空間を計画しており、施設の用途と親和性のある店舗を誘致する予定。
また、一棟の中に多種多様な機能があるため、文化機能や宿泊機能、イノベーション拠点の相互連携による、新たな魅力、価値の創出にも取り組む。
施設構成
同プロジェクトは、最高高さ約192mと、うめきた含む大阪駅周辺で最も高く(2024年10月31日現在)、地上40階、地下4階の複合ビルを開発する計画。高層階から、展望スペースやミュージアム、ホテル、イノベーションオフィス、コンサートホール・舞台、商業施設、駐車場などで構成される。今後、賑わい創出の場、文化交流の場としての役割を果たしていく。
周辺整備や緑化推進
同プロジェクトでは、開発する敷地内だけではなく、地域の魅力や活力の向上に向けた整備を行う予定。ピロティとしてまちに開放し、そこから連続する周辺地域の歩行環境改善や修景なども検討している。地下では、四つ橋線「西梅田駅」に接続する地下通路を新設し、改札口も設ける予定。周辺整備完了後には、まちの賑わい創出のためのエリアマネジメントにも取り組む。
都市再生のシンボルツリーを目指して、低層部の壁面に緑化ルーバーを設置する。また、計画地周辺の緑化も推進していくことで、「居心地が良く歩きたくなる」まちづくりに貢献していく。
自然エネルギーと省エネ技術の活用によるZEBや木材利用
同プロジェクトでは、建物の遮断熱性能を向上させるとともに、自然エネルギーや省エネ技術を採用することで、ZEB認証の取得を目指す。
また、CO2の固定化や森林資源循環などへの貢献のため、木材利用も進める。同社の非住宅建築物における木造や混構造、内外装の木質化などの取り組み「Future with Wood」の一環として、内外装に木材の採用を計画している。
さらに、BCP対策のため、非常用発電機やコージェネレーションシステム、雑用水利用などによる電力や水のバックアップを行うことで、レジリエンス性に優れた計画とする。