ヤマハ発動機は、手動車いすに後付けで装着する車いす電動化ユニットの新製品「JWG-1」の国内販売を2025年1月より開始することを発表しました。約10年ぶりのフルモデルチェンジを果たした本製品は、日本市場を皮切りに欧米など世界各国へ順次導入する計画なのだそう。先日行われた発表会でその特徴を聞いてきました。

  • ヤマハ発動機から2025年1月に発売する「JWG-1」

電動車いす国内市場の大半を占める「JWシリーズ」

車いすは、大きく分けて手動車いすと電動車いすがあり、さらに電動車いすにも1本のレバーを手で倒して操作する「ジョイスティックタイプ」、手動車いすと同様に操作しながらサポートする「アシストタイプ」、ハンドルによって向きを変えることのできる「ハンドル型タイプ」と大きく分けて3種類があるのだそう。ヤマハ発動機では、手動車いすに電動化ユニットを装着して電動車いす化する簡易型の「ジョイスティックタイプ」と「アシストタイプ」のドライブユニットの開発、製造、販売を行っています。

同社が電動車いすの開発を開始したのは1989年のこと。1993年に誕生した世界初の電動アシスト自転車「PAS」の電動ユニットを応用した軽くて車に積載可能で操作しやすい電動ユニットの販売を1995年より開始。その翌年には、簡易型ジョイスティック電動車いすを発売し、以来、ヤマハ発動機の電動車いすがスタンダードの1つになるまでに至ったと同社 執行役員 ランドモビリティ事業本部SPV事業部 事業部長 村木健一氏は話します。

  • ヤマハ発動機 執行役員 ランドモビリティ事業本部SPV事業部 事業部長 村木健一氏

さらに、車いすの国内市場規模について同社 SPV事業部 JWビジネス部 部長 高橋愛氏によれば、2023年の国内出荷台数は約46万台、このうち電動車いすは約5%の2万台余りとなっており、この2万台のカテゴリー別台数は、ジョイスティックタイプ・アシストタイプ簡易型が22%。その多くが同社の電動ユニットが占めているといいます。

  • ヤマハ発動機 SPV事業部 JWビジネス部 部長 高橋愛氏

同社が取り扱う電動車いすユニット「JWシリーズ」の特徴について「手動車いすと電動車いすのメリットを持ち合わせる製品となっており、手動の軽さやコンパクトサイズによる機動力、電動のパワーや坂道・段差などでの走破性、そしてユーザーが選ぶほとんどの手動車いすにJWユニットを取り付けることが可能となっている」と高橋氏は説明しました。そのメリットをより向上させた車いす電動化新ユニットが来年1月より国内販売を開始する「JWG-1」です。

「JWG-1」の特徴は?

2015年の「JWX-1 PLUS+」と「ジョイユニットX PLUS+」以来、約10年ぶりのフルモデルチェンジを果たした「JWG-1」の主なポイントは3つ。電動化ユニットの性能、操作部、バッテリー・充電器と主要部を大幅にアップデートしたと、同社 SPV事業部 第2開発部 JW技術グループ グループリーダー 水谷浩幸氏は詳細を語ります。

  • ヤマハ発動機 SPV事業部 第2開発部 JW技術グループ グループリーダー 水谷浩幸氏

電動化ユニットで最も向上したのは動力性能。新たに開発したモーターにより、タイヤ軸トルクは従来モデルの25.3Nmから50.1Nmに、ユニット耐荷重量は125kgから160kgへと強化しました。

  • 従来モデルと乗り比べてみたが、前に引っ張る力強さをより感じた

操作部では、液晶画面とデザインを大きく変更。従来ユニットでは液晶画面がジョイスティック操作部の手前にありましたが、操作する際に画面が手に隠れてしまい見づらいというユーザーの声から、新ユニットでは液晶画面を前方に設置したのだそう。

  • 「JWG-1」の操作部 液晶画面がしっかりと見える

フルカラー液晶を採用したことで表示部を鮮明化し、従来モデルではできなかった警告内容を文字化することにより、車両状態をより分かりやすくしました。また、従来モデルは、電源や速度調整はトグルスイッチ操作で行っていましたが、新モデルではボタンスイッチの採用で使いやすさを向上させるとともに、ジョイスティックコントローラーをより洗練されたデザインに変更したといいます。

  • 従来モデルの操作部

また、介助者の操作部にも液晶画面を採用し、従来モデルでは右側のハンドルにしか取り付けられなかったものを左サイドにも取り付けられるように、さらに縦と横どちらの方向でも装着可能となりました。

  • 「JWG-1」の介助操作部

入力方式もアップデートしており、従来モデルでは押しボタンスイッチの入力だったのに対し、新モデルではレバー入力に変更。押しボタン入力を長時間行うと親指が疲れてしまうというユーザーの声から刷新したといいます。

  • 「JWG-1」の介助用入力部

バッテリーは、36V 6.45Ahのリチウムイオンバッテリーを搭載。従来のバッテリーより1.2kgの軽量化、サイズは約60%にコンパクト化しました。

  • 左:「JWG-1」のバッテリー、右:従来のバッテリー

充電器は、持ち運びやすいよう軽量小型化を行い、バッテリーを置いて充電できるクレードル部分を別体化しコンパクト化。また、クレードルの代わりにオプション品である車載ケーブルを使えば車載状態での充電も可能としました。

  • 「JWG-1」の充電器

市場からの多くの声を反映し、電動化ユニット性能、操作部、バッテリー・充電器を大きくアップデートすることで、「もっと操作しやすく」「もっと安心に」「もっと自由に」の商品コンセプトを実現できたと水谷氏は振り返り、高橋氏は最後に、「JW事業は、日本を中心に車いす事業を展開してきたが、今後は電動化ユニット専業メーカーとして、ユニット及びシステム部品の開発、製造に専念する。パートナーとの競走拡大、グローバル展開の強化、さらには、車いす以外の領域への電動化ユニットの展開も検討している。ぜひ、今後の展開にもご注目いただきたい」と今後の展開について述べました。