予備軍も含めると、日本人の5~6人に1人がかかるといわれる「糖尿病」。「自分は大丈夫」と思っている人は少なくないかもしれませんが、糖尿病は病状が進行するまで自覚症状が現れにくい病気であることをご存じでしょうか?

遺伝的な要因もありますが、糖尿病は日頃の生活習慣を見直すことで予防できる病気です。そこで、ここでは知っておきたい糖尿病の初期症状や糖尿病にならないための生活習慣などを解説します。

■糖尿病とはどのような病気?

日本の国民病ともいえる糖尿病とは、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が慢性的に高くなってしまう病気のことです。本来、膵臓から出るホルモンであるインスリンが血糖値を一定の範囲に収める働きを担っていますが、糖尿病になるとインスリンが十分に働かなくなり、血液中に糖があふれてしまいます。細胞に入るとエネルギー源となるブドウ糖も血液中では血管を破壊して動脈硬化を引き起こし、脳卒中や心筋梗塞の原因になります。また、目の網膜や腎臓、神経も傷つけるため「糖尿病網膜症」「糖尿病性腎症」「糖尿病神経障害」は糖尿病の3大合併症として知られています。

■糖尿病になりやすい人の特徴は?

糖尿病には大きく分けて、膵臓からインスリンがほとんど出なくなることによって血糖値が高くなる「1型糖尿病」と、インスリンが出にくくなったり、インスリンが働きにくくなったりすることで血糖値が高くなる「2型糖尿病」があります。日本の糖尿病患者の約95%を2型糖尿病が占めているため、単に「糖尿病」という場合は「2型糖尿病」を指します。発症年齢や患者の体型を比べると、1型糖尿病と2型糖尿病では次のような違いがあります。

1型糖尿病
・小児・若年者に多い
・やせ型の人が多い

2型糖尿病
・中高年に多い
・肥満体型の人が多い

ただし、やせ型の人や若年者でも2型糖尿病を発症することもあるため「太っていないから」「若いから」といって安心はできません。以下にあてはまる場合、糖尿病のリスクが高くなるため注意が必要です。

・太っている、または過去に太っていた
・血縁者に糖尿病の人がいる
・食べすぎてしまうことが多い
・甘いものや脂っこいものが好き
・お酒をたくさん飲む
・たばこを吸う
・運動不足
・睡眠不足
・高血圧
・ストレスが多い

■糖尿病の初期症状は?

糖尿病の大部分を占める2型糖尿病は、ほとんど自覚症状がないままじわじわと進行し、症状が現れたときにはかなり病状が進行していることも少なくありません。糖尿病の早期発見には定期的な健康診断が欠かせませんが、次のような症状が出た場合、糖尿病を疑ったほうがいいかもしれません。

・やたらとのどが渇き、尿が多くなる
・疲れやすく、だるくて動けなくなることがある
・たくさん食べているのに体重が減る

また、血糖値が高い状態が長期間続いたことにより合併症が進行すると、以下のような症状が起こることがあります。

・目がかすんだり、視力が落ちたりする
・手足にしびれや痛みがある
・立ちくらみを起こしやすい
・足がむくむ
・感染症にかかりやすくなる

■糖尿病にならないための生活習慣

「生活習慣病」と呼ばれるだけあって、糖尿病を予防するには日頃の生活習慣を整えることが一番。食生活の乱れや喫煙、過度の飲酒、睡眠不足、運動不足、ストレスなどが糖尿病のリスクを上昇させるため、生活習慣全般を見直すことが大切です。具体的には次のことを意識するといいでしょう。

・主食、主菜、副菜を揃えて、栄養バランスの取れた食事を摂る
・よく噛んでゆっくり食べる
・野菜から先に食べ、腹8分目を意識する
・夜遅い時間や寝る前には食べない
・飲酒は適量を守る
・喫煙者は禁煙する
・ウォーキングやジョギング、水泳、筋トレなどの運動を習慣にする
・適正体重を保つ(BMI25未満を維持)
・入浴や趣味の時間などでストレスを上手に発散する
・十分な睡眠を取る

■自覚症状が現れにくい病気だが、早期発見するためにはどうすればよい?

すでに述べた通り、初期段階ではほとんど自覚症状がなく、密かに進行していくのが糖尿病の恐ろしいところ。糖尿病を早期発見するには、定期的に健康診断を受けて血糖値をチェックすることが大切です。

2型糖尿病の場合、ある日突然高血糖になるわけではなく、じわじわと血糖値が上がっていくため、定期的な血液検査で血糖値とHbA1cを調べることが糖尿病の早期発見につながります。

糖尿病は予防と早期発見が肝心。糖尿病のかかりやすさには遺伝的な要因もありますが、血縁者に糖尿病の人がいても、日頃の生活習慣を整えることで糖尿病の発症リスクを下げることができます。生活習慣の見直しと定期的な健康診断で、健康維持に努めましょう。

最後に糖尿病の予防方法に関して、内分泌・糖尿病内科の専門医に聞いてみました。

ここでは大多数を占める2型糖尿病について述べさせていただきます。2型糖尿病は遺伝的な要素と環境要因がともに関与して発症します。環境要因とは食べ過ぎ、運動不足、肥満、喫煙、睡眠不足といった生活習慣が主です。最近の我が国の傾向として、男性を中心とした肥満割合増加に伴う糖尿病発症が増えてきています。肥満傾向(BMI25以上)の方はまずは糖尿病改善効果が示されている-3%程の減量を初期目標にしていただければと思います。

一方でやせすぎ(BMI18.5未満)も糖尿病発症につながる可能性が言われています。個々に合った生活習慣の見直しをしましょう。急激な食事制限や過度な運動は却って体調悪化や怪我、継続困難の要因となりますので注意しましょう。まとまった運動の時間が取れない方は一日の歩数を今より10%増やすなどでも良いです。継続できる内容から開始し、習慣化していきましょう。

伏見 宣俊(ふしみ のぶとし)先生

一宮西病院 内分泌・糖尿病内科/部長
資格:日本糖尿病学会 糖尿病専門医、日本内科学会 総合内科専門医、日本消化器病学会 消化器病専門医