念願の再結成と2025年からのワールドツアーを発表したオアシス。日本独自企画のコンプリート7インチ・シングル・コレクションBOX、 『リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展』(11月1日より六本木ミュージアムにて開催)も注目を集めるなか、ギャラガー兄弟が残した珠玉の40曲をランキング形式で一挙紹介。
15年におよぶいがみ合いを経て、リアム&ノエルのギャラガー兄弟がオアシスを再び始動させる。再結成のニュースと2025年のツアーの発表を受けて、ブリットポップの先駆者である彼らの曲を聴き直すファンが急増し、Spotifyではオアシスの楽曲の再生回数が690%増加したという。しかし、代表作である1994年発表の『Definitely, Maybe』と1995年作『(Whats the Story) Morning Glory?』の2枚のアルバムにしか興味がないリスナーには同情したくなる。なぜなら彼らは、後期のシングルから全盛期に残した数多くのB面曲など、ギャラガー兄弟が残した数多くの名曲を聴き逃しているのだから。本誌が選んだリストにも、その多くが含まれている。だが何はともあれ、まずは「Wonderwall」を。
『コンプリート7インチ・シングル・コレクションBOX Vol.1』
(赤盤:2024年10月30日リリース)
1994年4月にリリースされた「Supersonic」から、1998年5月に日本のみでリリースされた「Dont Go Away」までのシングル15枚を、7インチのクリアレッド・カラーヴァイナルで収録(15枚組)【封入特典】ノエル・ギャラガーアクリル・スタンド
『コンプリート7インチ・シングル・コレクションBOX Vol.2』
(青盤:2024年11月13日リリース)
2000年4月にリリースされた「Go Let It Out」から、2009年3月にリリースされた「Falling Down」までシングル15枚を、7インチのクリアブルー・カラーヴァイナルで収録(16枚組)【封入特典】リアム・ギャラガーアクリル・スタンド
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貴重な展示品の品々でオアシスの歴史を多角的に振り返る「リヴ・フォーエヴァー: Oasis 30周年特別展」は11月1日(金)より開幕。全30種以上の販売グッズラインナップも解禁
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※以下、『コンプリート7インチ・シングル・コレクションBOX』★:Vol.1収録曲 ◆:Vol.2収録曲
40位「All Around the World」(1997年)★
『Be Here Now』に収録されたこの曲には、ギャラガー兄弟のビートルズ愛(あるいは模倣癖)が色濃く表れている。約10分にも及ぶ同曲は、ファブ・フォーの『Magical Mystery Tour』に収録されていてもおかしくない。長すぎるのは確かだが、リアムが得意とする「シャァァイン」というフレーズ、耳に残る「ナナナ」コーラス、そして没入感のあるストリングスの魅力は否定できない。リリースから8年後、「All Around the World」はAT&TのテレビCMに起用されたことで再び注目を集めた。 —J.H.
39位「Go Let It Out」(2000年)◆
新世紀を迎えたばかりの頃、オアシスは「スープの世界でフォークを振り回す大男」の如き存在だった。ブリットポップの帝国は衰退しつつあり、エレクトロニックなロックが台頭し始めていた。90年代の輝きが失われつつある中、ギャラガー兄弟は「Go Let It Out」で時代の流れに真っ向から抗ってみせた。「俺たちが最高のバンドだってことに、誰もがこのアルバムでようやく気づくはずだ」と当時リアムは語っている。2000年代最初のシングルの基盤となっているのは、ドラムンベースのグルーヴと社会に対する不満だ。「王子や王がおがくずの輪の中で踊るピエロのように映ることは、驚きに値するのか?」とノエルは疑問を呈する。言い換えるとこういうことだ。「コーラス(サビ)の部分は要するに、イギリスではなぜ有名人たちが救いようのないアホのように振る舞うのか、不思議で仕方ないってことさ」 —S.G.
38位「Lord Dont Slow Me Down」(2007年)◆
勢いに満ちたこの曲はアルバムにこそ収録されていないが、ノエル・ギャラガーがこの曲を誇りに思っていることは明らかだ。オアシスとしてライブで披露されたことはないものの、ノエルはソロとしてこの曲をステージで披露している。彼がこの曲に入れ込んでいる理由は明らかだ。ザ・フーやザ・キンクス、そしてボブ・ディランの「Highway 61 Revisited」をミックスした稲妻の如きモッド・ロックのこの曲の魅力は、切り裂くようなリフ、キース・ムーン風の派手なドラム、そしてノエルの手に汗握るようなボーカルだ。リアムが歌うデモバージョンはより一層狂気じみている。ライブで演奏されなかったのは、どちらが歌うべきか決められなかったからかもしれない。—J.D.
37位「Sad Song」(1994年)
『Definitely, Maybe』の発売30周年を記念して、バンドはあどけなささえ残るリアムがリードボーカルを務めたバージョンの「Sad Song」をリリースした。しかし本誌は、当初イギリス、日本、フランスでのみ公開されていたこのバラードのノエルが歌うバージョンに票を入れる。シンプルなアコースティックギターの伴奏に合わせて、ノエルが切ない歌詞(「僕たちは欺き、嘘をつく/誰もそれを間違いだとは言わない/だから理由を問わない」)を情感豊かに歌い上げるこの曲には、彼の魅力が凝縮されている。控えめで優雅な「Sad Song」は、派手で大音量というイメージの強いオアシスの異なる一面を浮かび上がらせる。—J.H.
36位「Half the World Away」(1994年)
憧れのビートルズがそうだったように、オアシスのB面曲の中にはシングルに匹敵するものがある。「Half the World Away」はその好例だ。1994年に「Whatever」のB面としてリリースされ、その後『The Masterplan』にも収録された哀愁漂うこの曲は、控えめだからこそ多くのファンに愛されている。「今いる状況からどうしても抜け出したくて、どこか別の場所を夢見ている。家を出て、自分のことを誰も知らないところに行きたい、そういう気持ちを歌った曲だ」とノエルは語っている。彼がラスベガスに滞在していた時に書いたこの曲は、バート・バカラックの「This Guys in Love With You」からカントリーウェスタンのコードを「拝借」し、そこにマンチェスターで育った彼の物憂げさが加味されている。暗くて憂鬱だというノエル自身の印象とは対照的に、ファンはこの曲に「去りたいという願望と、留まりたいという相反する感情」という成長に伴う奇妙なパラドックスを感じ取った。—S.G.
35位「Round Are Way」(1995年)★
「Round Are Way」は、ノエルが次々と優れた曲を生み出していた1995年に書き上げたもののひとつだ。このタイトルは「俺たちの街では」という意味のマンチェスターの方言(Round Our Way)が、同じくマンチェスター出身のスレイドが好んだようなやり方でスペルを変えたものだ。「Wonderwall」のB面に収められた3曲のうちの1曲であるこの曲は、端的に言ってしまえばマッドネスの「Our House」のアップデート版だ。マンチェスター郊外の町バーネージで過ごした幼少期に想いを馳せる同曲は、力強いグラムロックのビート、「Got to Get You into My Life」を思わせるホーンセクション、ナイン・ビロウ・ゼロのマーク・フェルサムによる情熱的なブルースハープ、いたずら好きな新聞配達員、25人対25人のサッカーの試合を懐かしむ歌詞も魅力だ。「Round Are Way」は今でも、アルバム未収録のオアシスの傑作のひとつとして愛され続けている。—D.E.
34位「Soldier On」(2008年)
オアシスの最後の言葉を放ったのはリアムだった。2008年の『Dig Out Your Soul』に収録された「Soldier On」は、ノエルの脱退により解散したオアシスの最後のアルバムを締めくくる曲だ。深い霧と歪みとの中をかき分けるように響いてくるリアムの声は、消耗しながらも次の戦場へと重い足取りで向かっていく兵士を思わせる。最後のアルバムがこの抽象的な反抗のアンチアンセム「Soldier On」で幕を閉じることは、皮肉でありながらもしっくりくる。どこか不穏で、何もかもを見通しているかのような超越した知性を感じさせる同曲は、重々しくゆっくりと展開していく。バンドの代表曲に見られるような壮大な旋律を拒むことで、その逞しさと迫力が一層際立っている。泥の中に引き摺り込まれていくような切迫感を漂わせながらも、リアムは不気味なほど冷静に「踏ん張れ、友よ、歌を歌え」と語りかける。そこから浮かび上がるのは、打ちのめされながらも、屈すまいと必死で踏ん張り続けている男の姿だ。—S.G.
33位「Stop Crying Your Heart Out」(2002年)◆
リアムはこの曲が収録されたアルバムについて「タイトルも気に入らなかった。ヒーザン・ケミストリー? ふざけんな」と語っており、作った記憶がないとさえ主張しているが、「Stop Crying Your Heart Out」での彼のボーカルは秀逸だ。この曲は、虚勢に満ちたブリットポップを自意識という泥沼にどっぷり浸かった2000年代初頭のロックのフォーマットに落とし込むという、オアシスによる実験の成果だ。新世紀を迎えてからはバンドの人気に翳りが見えていたが、この曲のほろ苦いメッセージは同時多発テロ後の社会のムードと共鳴し、久々の商業的成功を収めた。ちなみに、サッカーが大好きな彼らは2002年ワールドカップでのイングランド敗退を予想しており、この曲の切ないムードは予想通りの結果に対する世間の感情と見事に一致した。ノエルはこう振り返っている。「俺らはイングランドが次で負けると分かってたし、そうなったら金が入ると思ってた。チャリーンってな」 —S.G.
32位「Sunday Morning Call」(2000年)◆
4作目のタイトル『Standing on the Shoulder of Giants』に単数形と複数形が混在してしまっていることは、バンドがどれだけ疲弊していたかを物語っているのかもしれない。音楽的でしっとりとした「Sunday Morning Call」は、サイケデリックでコカイン浸けだった『Be Here Now』での荒々しい鼻声とは対極にある。当時30代前半で、父親にもなっていたノエルは、自分が永遠に生き続けるわけではないことを悟り始めていた。この曲のクレジットにリアムの名前は見られない。アルバムに華を添える秀逸な曲ではあるが、これをシングルとしてリリースするという彼らの判断と同じくらい、イギリスでこの内省的な歌が4位にランクインしたことは意外だった。 —S.R.
31位「Going Nowhere」(1997年)
『Be Here Now』の制作時にレコーディングされた「Going Nowhere」が、「Stand by Me」のB面としてのみリリースされていることは不可解だ。この曲の陰鬱なムードは「スターダムへようこそ、出口はすべて閉ざされている」というものだ。富を得たばかりのノエルは、「高級車を買うぜ/ジャガーかな」というオアシス史上最も秀逸(あるいは醜悪)なラインのひとつを歌いながらも、その豊かさに息苦しさを感じているようにも思える。事態の悪化を示唆し、さらに悪くなっていくであろうことを予感させる「Going Nowhere」におけるバート・バカラック風のサウンドは、金色に塗り固められたメランコリーを一層際立たせている。そこから垣間見えるのは、コカインに溺れた男の暗澹たる内面だ。 —S.R.
30位「Falling Down」(2008年)◆
2008年のアルバム『Dig Out Your Soul』からの3枚目のシングル「Falling Down」は、2009年8月のオアシス解散前にリリースされた最後のシングルとなった。この曲は、同年春にイギリスのシングルチャートで10位に達し、日本のアニメ『東のエデン』のオープニングテーマに起用されたことで、より広い層からの支持を集めた。ノエルの夢見心地なリードボーカル、前のめりなグルーヴ、軽やかなアコースティックギター、そしてサイケデリックなメロトロンの音色が印象的な「Falling Down」は、彼がその後始動させるノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズの音楽的方向性をはっきりと予見させていた。 —D.E.
29位「Where Did It All Go Wrong?」(2000年)
ノエルが歌う曲の中でも最も辛辣なもののひとつに数えられ、破局の訪れを予見するこのバラードは、不当に酷評された2000年作『Standing on the Shoulder of Giants』に収録されている。恐怖と後悔に満ちた「Where Did It All Go Wrong?」はアルバムのハイライトであり、アラン・ホワイトのドラムと、ノエルによる不穏な鍵盤の音色が光る。ノエルはこの曲で、パーカッション以外のすべての楽器を演奏している。サビでは「わかってほしい/それが消えることはない/君が死ぬその日までずっと付きまとう」と叫び、ノエルは途方に暮れながらこう問いかける。「どこで何もかもが狂ってしまったんだ?」 —J.H.
28位「Im Outta Time」(2008年)◆
2008年のアルバム『Dig Out Your Soul』に収録された胸を打つ名曲「Im Outta Time」は全英チャートで12位を記録し、1994年の「Shakermaker」以来初めてトップ10入りを逃したオアシスのシングルとなった。その一因はおそらく、バンドのトレードマークである大胆さが欠けていたことだろう。たとえジョン・レノンのインタビュー音声が曲の最後に挿入されていなかったとしても、内省的で感傷的な「Im Outta Time」はレノンがパンを焼いていた時代のアウトテイクのようであり、イギリスで最も大胆なロックバンドの曲だとは思えない。それでも、リアムの驚くほど繊細なボーカルが際立っているこのトラックは、オアシスの名曲のひとつに数えられるべきだろう。 —D.E.
27位「The Importance of Being Idle」(2005年)◆
レイ・デイヴィスが書いたキンクスの曲と言われてもまったく違和感のない「The Importance of Being Idle」は、軽快なストロークと、怠惰の讃歌というべき皮肉な歌詞(「人生は短い/楽しくなきゃ生きてる意味がない」)が印象的だ。2005年のアルバム『Dont Believe the Truth』のハイライトであり、ノエルがボーカルを担当した曲としては「Dont Look Back in Anger」に続いてUKチャート1位を獲得した2つめのシングルとなった。この曲はビートルズとABBAが保持していた記録を破る19曲連続のUKトップ10ヒットとなっただけでなく、彼らにとって最後の全英ナンバーワンシングルでもあった。 —D.E.
26位「Songbird」(2002年)◆
「Songbird」はオアシスのレコードに初めて収録されたリアムによる曲だ。オアシスは常にマッカートニー/レノンの影響を公言していたが、ノエルが『Magical Mystery Tour』や『Sgt. Peppers』寄りであるのに対して、「Songbird」には『Help!』のような即効性と、スピーカーから飛び出してくるような勢いがある。まさにリフ一本勝負で、無駄な要素は一切ない。「ごちゃごちゃ言わずに核心を突く」というリアムの姿勢は、オアシス解散後のソロとしてのキャリアにも共通しており、そのクオリティと人気は驚くべきことにノエルのそれに匹敵する。「Songbird」は、オアシスがどんな未来を歩もうとも、リアムがそう簡単には消えないことをはっきりさせた。 —S.R.
25位「Stand by Me」(1997年)★
『Be Here Now』の核ともいえるこの一流のバラードは、「日曜に料理をして、全部吐き出した」という、ノエルが経験した食中毒の体験をストレートに描いた歌詞で幕を開ける。しかし、リアムは圧倒的な表現力でその粗野な表現に感情を込め、それはサビでの「そばにいてくれ/これからどうなるかなんて誰にもわからない)」という切実な叫びに帰結する。ちなみに、ライブアルバム『Familiar to Millions』でのバージョンには、スポットライトを当てられて目が眩んだリアムが演出チームに「そのライトを俺に向けんじゃねぇ!」と怒鳴る一幕があり、笑えるので一聴の価値ありだ。—J.H.
24位「The Hindu Times」(2002年)◆
『Heathen Chemistry』からシングルカットされたこの曲のタイトルは少し疑問を感じさせるものの、リアムが得意とする「High」と「Sunshine」というフレーズがあるオアシスの曲はたいてい当たりだ。紛れもなくロックなこの曲は、2000年代の作品群の中でもアティテュードが際立ったトラックのひとつだ。リアムは最初のヴァースで「俺には才能がある/スピードをキメる、空中を歩いてるみたいだ」と自信満々に歌い上げ、彼がロックスターだという忘れかけていた事実を思い出させてくれる。 —J.H.
23位「Lyla」(2005年)◆
2005年作『Dont Believe the Truth』からシングルカットされた「Lyla」に登場するこのライラという女性が、「Dont Look Back in Anger」に出てくるサリーの妹だという昔からあるノエルについてのジョークは、オアシスの神話やタイムラインが組み合わさって生まれた愉快で無意味なファントリビアにすぎない。それはさておき、キレのあるギターや生き生きとしたボーカルが映えるこの曲は、紛れもなく広大な野外スタジアム級のロックだ。また特筆すべき点は、リンゴ・スターの息子であり、以前はザ・フーのドラマーだったザック・スターキーが、アラン・ホワイトに代わって初めてドラムを叩いていることだ。結果として生まれた、バンド史上最も明るくポップな作品のひとつとなったこの曲について、ノエル自身も「跳びはねるための曲だ」と語っている。 — J.L.
22位「Shakermaker」(1994年)★
1994年にリリースされたオアシスの2枚目のシングル「Shakermaker」は、ノエルの盗作癖が原因でバンドを法的トラブルに巻き込んだ最初の曲だ。この曲のメロディは、70年代初頭のコカ・コーラのジングル「I'd Like to Teach the World to Sing」に酷似していた。重厚なギターサウンドとリアムの挑発的なリードボーカルが魅力のこの曲は全英11位を記録したが、バンドが手にした金はごく僅かだった。コカ・コーラから盗作訴訟を起こされたバンドは、最終的に約50万ドルで和解したと言われている。 — D.E.
21位「Shes Electric」(1995年)
『Morning Glory』に収録されたこの名曲で、ノエル・ギャラガーがマッカートニー譲りの甘美なメロディーを奏でたことを受けて、リアムはいつもの冷笑ではなくチャーミングなファルセットでサビを歌い上げている。オアシスの2枚目のアルバムからのシングル群が彼らのビッグさを証明した一方で、壮大なバラードでも仰々しいロックでもなく、ある女の子とその兄に母親、そして12人の従兄弟たちについての他愛のないナンセンスであるこの曲からは、彼らの意外なほど幼い一面を垣間見ることができる。アウトロは紛れもなく「With a Little Help from My Friends」のパクリだが、これもある種の愛情表現なのかもしれない。 — S.V.L.
20位「I Am the Walrus」(1994年)★
オアシスはビートルズへの執着心をカバーの数々という形で処理してきたが(「Octopuss Garden」は何とか聴くに耐えうる)が、このライブの定番の出来は秀逸であり、長年にわたってハードコアなファンたちを惹きつけている。原曲よりも早いテンポ、ウォール・オブ・サウンドを彷彿させる幾重にも重ねられたギター、そして比較的レアなリアムのファルセット。正直なところ、「イングリッシュガーデンに座り、太陽を待っている」という一節はオアシスの歌詞であってもおかしくない。 — J.N.
19位「Talk Tonight」(1995年)
1994年のオアシスの初めてのアメリカツアーの際に、ドラッグのせいで壊滅的な「パフォーマンス」を披露してしまったWhisky a Go Goでのギグの後、ノエル・ギャラガーはバンドを辞める決意を固めてサンフランシスコに飛んだ。ショーのバックステージで出会った女性のアパートを訪れた彼がひどく動揺しながらこぼす愚痴を、その女性は何も言わずに夜遅くまで聞いていたという。その後ノエルが書き上げた「Talk Tonight」では、バンドの爆発的なエネルギーが痛々しいほどの脆さに置き換えられ、彼はトレードマークの冷笑ではなく純朴な誠実さを見せている。オアシス史上屈指のB面であるこの曲で描かれるのは、本当に辛い時に誰かがそばにいてくれることへの素直な感謝の気持ちだ。 — J.L.
18位「Stay Young」(1997年)★
「ヘイ、年を食うなよ、無敵でいろ!」。成長や老いに2本指を突きつけるかのように、リアムはそう言い放つ。バンドのフロントマンは若さの魅力を余すことなく表現してみせたが、ノエルは不満だったらしくこの曲が気に入らないと語っている。当初は『Be Here Now』に収録される予定だったが、ノエルがその出来に納得していなかったために、シングル「D'You Know What I Mean?」のB面に収録されることになった。それでも、「Live Forever」と歌詞の内容が似ているこの曲は、今でも多くのファンから愛されている。 —J.H.
17位「Morning Glory」 (1995年)★
リアムが「すべての夢は叶う/鏡とカミソリの刃に繋がれていれば」とがなりたてるこの曲は、コカイン中毒の暗い側面に対する痛烈な批判のようだが、1995年当時のギャラガー兄弟の振る舞いを踏まえればやや偽善的にも思える。R.E.M.の『Document』とビートルズの『Revolver』の間のどこかに位置するこの曲は、無造作を装った天才的なロックンロールのミックス&マッチという、オアシスが得意とする手法の産物だ。ガタガタと震えながら叫び声を上げ、空を突き上げるようなギターもまた、一晩中コカインを吸い続けてラリっているかのようだ。 —J.D.
16位「Dont Go Away」(1997年)★
コカインにまみれた狂気と過剰さに満ちた『Be Here Now』において、「Dont Go Away」は誠実な一面を垣間見せる。壮大で美しいミッドテンポのこの曲では、喪失感を受け入れようと努める姿が描かれる。バンドが無名だった頃から存在していたこの曲のデモを、彼らはリバプールで行われた初期のセッションで録音していたが、当時の他の曲の自信満々なトーンに合わなかったためか、長い間お蔵入りとなっていた。『Be Here Now』の消耗し切ったロックスターの肩にのしかかる重圧を表現したこの曲は、今日ではオアシス史上屈指のバラードのひとつとされている。 —J.D.
15位「Little by Little」(2002年)◆
ノエル・ギャラガーの酒の勢いに任せたありきたりな言葉は、1997年に1カ月間タイで過ごした後、明らかに禅めいたニュアンスを帯びるようになった。「完璧ではなくとも、俺たちは自由だ」と彼は歌う。「憧れた星の如く、俺たちも消えていく」。ピンク・フロイド風のマイナーキーの曲かと思えば、サビではオアシスが知っている唯一の涅槃である仰々しいメロディがブーメランの如く帰還し、世界が狂ってしまっても前を向いていようというポジティブなメッセージが発せられる。ノエルによると、リアムがボーカルの録音に苦戦していたために自分で歌うことにしたという。「デスクに座ったリアムが、『くそったれ、やるじゃねぇか』って悔しがってるのが目に見えるようだった」と彼は語っている。数年後、いつも謙虚なリアムは「俺はどんな曲でもノエルより上手く歌える。たとえ木の鳩に股間を蹴られてもな」とツイートした。—S.G.
14位「Roll With It」(1995年)★
『Morning Glory』からの2枚目のシングルを、ノエルは後に「クソだ」と一蹴するが、私たちはこれに反対する。ミドルテンポのビートが響くこの曲からは、ビートルズの『Revolver』に対するノエルの思い入れが伝わってくるだけでなく、リアムほど「B」や「D」を強調しながら歌えるヴォーカリストは他にいないことを確信させてくれる(「Dont ever BEEEE DEnied」)。「Roll With It」とブラーの「Country House」が同じ週にリリースされたことを受けて、音楽メディアが両者の対決を煽ったことで「ブリットポップの戦い」の盛り上がりは最高潮に達した。(そのラウンドはブラーに軍配が上がった)。 —J.N.
13位「DYou Know What I Mean?」(1997年)★
『(Whats the Story) Morning Glory?』のメガヒットによって一層高慢になったギャラガー兄弟は、逆再生のボーカル、轟音のフィードバック、誰かが唾を吐く音が入ったこの8分近くに及ぶ曲を、1996年のアルバム『Be Here Now』からの最初のラジオ局用シングルに選ぶという大胆な行動に出る。そして誰もそれを止めなかった。振り返ってみると、「D'You Know What I Mean?」は、過剰で騒々しいこのアルバムの幕開けに相応しい曲だった。『Be Here Now』全体としてはともかく、この曲は今なお色褪せていない。「Wonderwall」のようなメロディこそないものの、脅威と不遜さというオアシスの気まぐれなフロントマンの魅力がその穴を見事に埋めたアンセムだ。 —J.H.
12位「Whatever」(1994年)★
彼らはイギリスのニール・イネスが1973年に残した知られざるポップソング「How Sweet to Be an Idiot」のメロディを盗んだかもしれないが……まあそれはいい。彼らにとって初のアルバム未収録シングルとなったこの曲では、基盤となるロンドン・セッション・オーケストラによるストリングスが「やりたいことを好きなようにやる」というリアムの反抗的な宣言を上品に引き立てている。3年後、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団がアルバムでオアシスの曲をカバーしたことはよく知られているが、酷い出来なので無視して、この曲を繰り返し聴いた方がいい。 —J.N.
11位「Slide Away」(1994年)★
虚勢や空いばりが目立つものの、ノエルは根っからのロマンチストだ(「Talk Tonight」にはアルファオスさえ泣き崩れる)。『Definitely, Maybe』の最後から2番目に収録されたこの曲は、当時のノエルと彼の恋人との波乱に満ちた関係を描いている。リアムが歌う「君が夢に出てきて、年老いていくことについて話し合った」という歌詞は、「でも君は言った、お願いだからやめてと」という痛切な言葉に帰結する。もちろん、すべての曲の解釈は人それぞれだ。一例として、あるオアシスファンはRedditに「俺は『Slide in, baby / Together well fly(こっちへおいでベイビー、一緒に飛ぼう)』っていうタトゥーを入れてる」と投稿している。愛は愛ということだ。 —J.N.
10位「Some Might Say」(1995年)★◆
オアシス初の全英ナンバーワンシングルとなったこの曲は、ノエルが作ったデモが元になっているが、それはよりスローテンポかつハードで、彼の言葉によれば「もっといやらしい」ものだったという。しかし、『(Whats the Story) Morning Glory?』に収録されたバージョンは、ブリットポップ特有の艶が加わり、ストーンズの迫力とビートルズ的な明るさが絶妙に融合した曲に仕上がっている。歌詞は他のオアシスの曲と同様に意味不明で風変わりだが、「いつか栄光の日が訪れるだろう」という力強いコーラスは、16年に及んだ保守党政権の交代に沸くイギリス国民の心を捉えた。「オアシスが『トップ・オブ・ザ・ポップス』に出ていた。『Some Might Say』がチャートの首位に立った時だと思う」と、ベテランのイギリス人ジャーナリストで歴史家のジョン・サヴェージは、ドキュメンタリー『Live Forever: The Rise and Fall of Britpop』で回想している。「彼らを見ながら、私ははただ泣いていた。何かが大きく変わり始めていると感じたんだ」。 —J.D.
9位「Rock n Roll Star」(1994年)
1994年の夏の時点で、ギャラガー兄弟のことを知っている人はほぼ皆無だった。しかし、デビューアルバム『Definitely Maybe』の冒頭を飾るこの曲が終わる頃には、彼らはロックスターになっていた。オアシスの歴史の幕開けとなった同曲は、このバンドの絶対的なルールを定義した。ビッグなリフ、日付が変わっても覚えていられるほどシンプルな歌詞、そして不思議なほどの本物感。光り輝くスターになりたいというリアムの叫びは無数の人々の共感を呼び、この曲は30年間にわたってカラオケやロードトリップのプレイリストの定番曲であり続けている。鍵となる言葉は「今夜」だ。この曲を大音量で流している間だけは、あなたもまたスターなのだ。—S.V.L.
8位「The Masterplan」(1995年)◆
「これは俺が書いた中で最高の曲だと思う」。「Wonderwall」のB面に収録された、ファンの間でも人気の高いこの曲について、ノエル・ギャラガーは『NME』にそう語った。オーケストラの伴奏をバックにノエルが歌い、結局のところ人生には道筋などないと主張するこの壮大なバラードは、間違いなくギャラガー兄の代表作だ。「この曲は君の人生を要約している」と、彼はベスト盤『The Masterplan』のライナーノーツに寄せている。「わかってるのは、俺たちが何も知らないってことだけだ」。アメリカのファンの大半が初めてこの曲を聴いたのは、リアムがドタキャンしたことで有名な1996年の『MTV Unplugged』でノエルが披露した時だったはずだ。—J.H.
7位「Champagne Supernova」 (1995年)★
チャペル・ローンの「Red Wine Supernova」以前、アルコール飲料に関連するスーパーノヴァな曲といえば、「Champagne Supernova」だけだった。『(Whats the Story) Morning Glory?』の最後を飾るこのブリットポップのアンセムについて、ノエル・ギャラガーは「おそらく俺史上最もサイケデリックな曲」と語っている。それはつまり、彼が『Sgt. Pepper』を聴いて「Lucy in the Sky With Diamonds」に影響を受け、空についての名曲を書こうとしたということだ。このパワーバラードは、ザ・ジャムのポール・ウェラーによる泣けるソロと、「ゆっくりと廊下を歩く/大砲の弾よりも速く/俺たちがハイになっている間、君はどこにいたんだ?」というトリッピーな歌詞も印象的だ。あなたがこの曲の意味について考えたことがあるとしたら、それはノエルも同じだ。「歌詞のなかには酔っ払ってた時に書いたものもある」と彼は1995年に『NME』に語っている。「意味はその時の気分次第で変わるんだよ」。 —A.M.
6位「Cigarettes & Alcohol」(1994年)★◆
リアムが得意とする「サンシャァァイン」というフレーズの歌い方がジョニー・ロットンの冷笑を思わせるせいもあるだろうが、「Cigarettes and Alcohol」はパンク史上最も衝撃的でシニカルな曲群を思い起こさせる(チャック・ベリーとT・レックスのリフのパクリ方も一要因だろう)。セックス・ピストルズの「No Future」とは異なり、ここでは未来がはっきりと描かれているが、そこに叶わない夢やひどい仕事(見つかればの話だが)しかないのなら、「いっそのことコカインでもやっちまえ」というわけだ。チープな方法で命を縮めるスリルを祝福するそのアティテュードはまさにNo Futureだが、この曲は誇り高き自己破壊によって「今」を謳歌するという彼らのステートメントだ。その生き方は健康的でも健全でもないが、ロックしてしていることだけは確かだ。 —J.B.
5位「Acquiesce」(1995年)◆
これをオアシス史上最高のB面曲とする見方には強く賛成だ。『(Whats the Story) Morning Glory?』のセッション時に録音された「Acquiesce」は、結果的に1995年発表の同アルバムには収録されなかったが、「Some Might Say」のUK版シングルのB面としてリリースされた。1998年のコンピレーションアルバム『The Masterplan』にも収録されたこの曲は、時代を超えて多くのファンから愛され続けている。彼らにとって、これはリアムとノエルの究極のコラボレーションだ。弟が皮肉たっぷりにヴァースを歌い上げると、兄は「俺たちはお互いを必要としている / お互いのことを信じている」という団結を呼びかけるコーラスで応じる。普段はいがみ合ってばかりいた2人だが、「Acquiesce」では完璧なハーモニーを奏でている。 —J.H.
4位「Wonderwall」(1995年)★
「なんだよこの曲は」。兄ノエルが当時の彼女のために書いたとされるこの胸を打つバラードを1995年5月に初めて聞いた時、弟のリアムはそう反応した。それから30年が経った今、「Wonderwall」はロックのスタンダードとなり、Spotifyでの再生回数は20億回を超え、エド・シーランやポール・アンカなど、数多くのアーティストにカバーされている。リアムも今ではこの曲を気に入っているが、ノエルは依然として複雑な思いを抱いているようだ。2019年のインタビューで、彼はこう語っている。「この曲の冒頭の3秒を演奏すれば、みんなが『待ってました!』ってなるんだよ。偉大なアーティストには必ずそういう曲がひとつやふたつあるもんだけど、幸運なことに俺には5曲もある。でも面白いことに、俺自身はこの曲をまるで気に入ってないんだよ」 —A.M.
3位「Supersonic」(1994年)★
ノエル・ギャラガーはMojo誌のインタビューで、1994年にオアシスがキャリアをスタートした頃のアティテュードについてこう語っている。「俺たちはU2に挑む。このバンドが目指しているのはそこだ。フェルトやNeds Atomic Dustbinなんて眼中にない。俺が狙うのはもっと遥かに高いところなんだよ」。ジョン・レノンの雰囲気とジョニー・ロットンの冷笑、幾重にもレイヤーされたギターの轟音、そして「俺は俺でなきゃダメなんだ/他の誰にもなれない」という堂々たる宣言が魅力の「Supersonic」は、その不遜さが単なる虚勢ではないことをはっきりと感じさせる。ノエルはこの曲を30分で書き上げたと主張しており、「めちゃくちゃテンションが上がってる / ジントニックをくれ」や「エルサっていう女の子を知ってる / 彼女は胃腸薬にハマってる」といった脈絡のない歌詞さえも超現実的に響く。彼にその力を与えたロックの神々は、やがてオアシスをその神殿へと迎え入れることになる。 —J.D.
2位「Live Forever」(1994年)★
友人、バンドメンバー、恋人、あるいは延々と酒を酌み交わした赤の他人に対してこういった思いを抱いたことがないなら、あなたは本当に生きているとは言えないのかもしれない。「君は俺と同じなのかもな / 俺たちには奴らには絶対に見えないものが見える / 君と俺は永遠に生き続ける」という歌詞をノエルが書いたとき、無数の若者たちが毎晩のように抱く非現実的でロマンチックなファンタジーが解き放たれた。感化されやすい何百万もの若者たちは、彼らの曲にこの世界の知られざる知恵を見出して「Yes!」と叫んだ。その一部は、自分たちが見たものを形にしようとバンドを始めた。だが彼らが書いた曲のどれひとつとして、「Live Forever」の普遍性の半分も宿すことはできていない。 —S.V.L.
1位「Dont Look Back in Anger」(1995年)★◆
「Wonderwall」はミームやカラオケ、キャンプファイヤーの定番曲として親しまれているが、オアシスの神殿においてより高い位置に君臨する曲がある。誰かと肩を組んで歌うと映える力強いバラードというオアシスの十八番を体現する「Dont Look Back in Anger」は、ビートルズ愛をストレートに表現しながらも独自の魅力を宿しており、「人生をロックンロールバンドに委ねないで / 彼らはすべてを投げ捨てるから」という悟りの境地をも示している。だがもうひとつ、この曲には明白で特別な意味合いがある。「Dont Look Back in Anger」で歌われる、受容と許しを重んじ、後悔や恨みを持たずに前を向いて生きていくことを必要としていたのは、誰よりもノエルとリアムの兄弟だった。長い年月を経て、2人はようやくその道を選ぶことにしたのかもしれない。 —J.B.
From Rolling Stone US.
『コンプリート7インチ・シングル・コレクションBOX Vol.1』
日本独自企画:3000セット完全生産限定盤
2024年10月30日 (水) リリース
封入特典:ノエル・ギャラガー アクリル・スタンド
購入リンク:https://sonymusicjapan.lnk.to/Oasis_vol1
『コンプリート7インチ・シングル・コレクションBOX Vol.2』
日本独自企画:3000セット完全生産限定盤
2024年11月13日 (水) リリース
封入特典:リアム・ギャラガー アクリル・スタンド
購入リンク:https://SonyMusicJapan.lnk.to/Oasis_vol2
BOX詳細:https://www.sonymusic.co.jp/artist/Oasis/info/567414
【展示会情報】
リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展
会期:2024年11月1日(金)~11月23日(土)
会場:六本木ミュージアム
主催:ソニー・ミュージックエンタテインメント、ソニー・ミュージックレーベルズ、ソニー・ミュージックパブリッシング
後援:ブリティッシュ・カウンシル 協賛:ADAM ET ROPÉ
公式サイト:https://oasis-liveforever.jp/
公式インスタグラム:https://www.instagram.com/oasis30th/
映画『オアシス:ライヴ・アット・ネブワース 1996.8.10』
監督:ディック・カラザース
出演:オアシス
上映時間: 約110分
制作年:2021年/制作国:イギリス
2024年10月18日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか、全国ロードショー
© Big Brother Recordings Ltd
© Jill Furmanovsky
公式サイト:https://www.culture-ville.jp/oasisknebworth1996810
オアシス
『Definitely Maybe(邦題:オアシス)』30周年記念デラックス・エディション
発売中
<2CD>
■豪華ハードカヴァー・デジブック×三方背スリーブケース仕様
■日本盤のみの仕様
・高品質Blu-spec CD2仕様
・英文ライナー訳/歌詞・対訳/新規解説 (妹沢奈美) 付
SICX30217-30218 税込¥4,400 【完全生産限定盤】
購入リンク:https://SonyMusicJapan.lnk.to/Oasis_2cd
<4LP>(輸入盤国内仕様)
■日本盤のみの仕様
・英文ライナー訳/歌詞・対訳/新規解説 (妹沢奈美) 付
・日本語帯付き
SIJP185-188 税込¥16,000 【完全生産限定盤】
購入リンク:https://SonyMusicJapan.lnk.to/Oasis_4lp
<デジタル>