ドジャース、ワールドシリーズ進出に”伏線”があった!? パドレスとの地…

メジャーリーグ 最新情報
 ニューヨーク・メッツとのリーグ優勝決定シリーズを制し、4年振りとなるワールドシリーズの舞台へ駒を進めたロサンゼルス・ドジャース。下馬評ではプレーオフ敗退の予想も少なくは無かったが、ここまでたどり着いた要因は何か。先ずはサンティエゴ・パドレスとの激戦を掘り下げ、地区シリーズを制したその理由を分析した。(文:Eli)
 

今シーズンのメジャーリーグは
[PR]

 
 先ずは各チームの前評判を見ていく。ロサンゼルス・ドジャースはビリオンダラーを消費したオフがありながらも、先発投手陣の怪我に見舞われたことで、残った先発投手は怪我明けの山本由伸、TJ手術明けから調子の上がらないウォーカー・ビューラー、トレードで獲得したジャック・フラハティーの3枚だった。
 
 攻撃側ではムーキー・ベッツ、大谷翔平、フレディ・フリーマンのMVPトリオにオールスター級を6番打者までそろえた強力打線だが、過去2年のLDS敗退の経験から打線のパフォーマンスは期待できないのでは、といった状況だった。
 

 
 一方、サンティエゴ・パドレスは「最も弱点がないチーム」と呼ばれた。投手側ではディラン・シース、ダルビッシュ有、マイケル・キングが先発を固め、リリーフも勝ちパターンがロベルト・スアレス、タナー・スコット、ジェイソン・アダム、ジェレミア・エストラーダと三振を多く奪える投手が多くいた。
 
 攻撃側は6番にザンダー・ボガーツを置く厚い打線で、対アトランタ・ブレーブスのWCSで勝ち抜き勢いがあった。特に9番キャッチャーのカイル・ヒガシオカはブレーブスとのWCSで2本のホームランを打つ絶好調にあった。
 
 米分析サイト『Fangraphs』の予想システムではLDS進出確率はドジャースが52.3%、パドレスが47.7%と拮抗していた。比較としてヤンキース対ロイヤルズでは61.1%対38.9%である。米メディア『The Athletic』が専門家に投票を募ったところ80%がパドレスのシリーズ突破を予想していた。
 
 このような状況をひっくり返してGame 5まで進んだドジャースがシリーズを制した理由を分析する。






大舞台で示した“組織力”

 
 シリーズ5試合で投手交代がされたのは合計24回、オープナーを含めれば25回だが、ドジャースブルペンはそのうち11回を無失点で帰ってきている。
 
 特にGame 3~Game5では投手陣が24イニング連続無失点を記録し、強力パドレス打線を封じている。点を取られなければパドレスの強みである強力リリーフ陣を活かす場所がなくなり、この点でも勝利を大きく近づけただろう。
 

 
 元々信頼できる先発投手の不足、さらには山本の中5日ルールの厳格適用からクリエイティブな投手運用が求められていたが、ロバーツ監督以下現場のドジャース首脳陣は素晴らしい運用を演じた。
 
 米メディア『The Athletic』によればGame 4 の試合開始9時間前には首脳陣が集まりミーティングを行い、勝つために必要な27個のアウトをどのようにとるかを協議したという。
 
 試合開始の30分前になっても協議・見直しを行い、それぞれの投手の役割、特にどの打者を誰が担当するかなどを確認していたようだ。
 
 米メディア『Fox』のフィールドリポーターを務めるTom Verducci氏によれば、フェルナンド・タティスJr.はドジャースの無失点イニング中に9打席に立ったが7人の投手に対応する必要があった。2回対戦したのはGame5の先発である山本のみだ。
 
 昨季のNLDSに敗れた際、ドジャース編成本部長アンドリュー・フリーマンは敗戦の原因を”Organizational failure(=組織の失敗)”としていたが、今年の勝因は反対に”Organizational Success(=組織の成功)”と言えるだろう。






意地を見せたMVP
 
 2021年のNLCS vs ブレーブスから続くドジャース打線の沈黙。ムーキー・ベッツは2022年に14打数1安打、2023年は11打数0安打とレギュラーシーズンと比べれば失望が続いていた。今年のNLDSもGame 1では3四球も0安打、Game 2では4打数0安打と不振を極めていた。
 
 今季のベッツは特に外角への球に苦しんでいた。パドレス投手陣はGame 1、Game 2を通して徹底的に外角へのフォーシーム、スライダー、スイーパーを投げベッツを抑えた。

 

 
 これに対してベッツはGame 3でシンカー/スイーパーの横変化球を駆使するマイケル・キングに例によって外角を攻めたてられたが、6球目の若干甘く入ったスイーパーをとらえてホームランとした。
 
 続いてGame 4ではディラン・シースの真ん中フォーシームをとらえてホームランとした。この対応力はさすがベッツと言ったところだ。






MVPトリオだけじゃない

 
 このシリーズではダブル・ヘルナンデスの活躍も目立った。2人ともポストシーズンでの実績を買われてドジャースと契約した選手だ。
 
 テオスカー・ヘルナンデスは3年契約を探したが、困難なことが分かるとポストシーズンでの活躍場所を求めてドジャースと契約したことを代理人が明かしている。
 
 キケ・ヘルナンデスはレギュラーシーズンで大不振に陥ったが、ドジャースがあきらめずに起用し続けたのはポストシーズン77試合で通算OPS.890の実績を持っているからだ。
 
 トレードデッドラインで獲得したトミー・エドマンも下位打線で大きな役割を果たした。表面的な数字だけを見るとシリーズで打率.235、OPS.471と物足りなく感じる。
 
 しかし、元々守っていたセンターに加え、ミゲル・ロハス離脱後はショートとキャッチャーを除いた最も難しい2ポジションを掛け持ちするなど、追加点が欲しい場面でセーフティーバントを決めるなど、チームの要望に応える活躍をしている。

 

 

山本由伸のバウンスバック
 
 同じ日本人として山本由伸の活躍にも触れないわけにはいかない。山本は投球の80%をフォーシーム、スプリット、カーブで組み立てる。Game 1の立ち上がりではフォーシーム、スプリットを主に使い、カーブをほとんど使わなかった。
 
 ところがスプリットを地面に叩きつけたり、甘く浮いたりしてしまうなど全く操ることができなかった。1回の後半からカーブを混ぜ始めたが、既に3失点した後であり、更にはクセを見抜かれていて、3回5失点という散々な結果となってしまった。
 
 しかし、Game 5ではフォームを修正しクセを見抜かれるのを防止。球種面ではGame 1 である程度頼れる存在だったフォーシームの割合を増やした。
 
 全体的なコマンドも改善され、ストライクゾーンを攻めることができた。最終的には5回無失点でダルビッシュとの投手戦を制してドジャースをNLCSに送ることができた。
 
 ドジャースはこのポストシーズンで山本の中5日ルールを厳格に適用しており、必然的に活躍の場が減ることになるが、少ない登板数だからこそ出た試合では無双の投球を今後も期待したい。


 


 
【関連記事】



 

 
【了】