第83期順位戦A級(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は4回戦が進行中。10月18日(金)には中村太地八段―千田翔太八段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、相掛かりの力戦形から抜け出した中村八段が99手で勝利、今期順位戦成績を2勝2敗としています。

戦型は相掛かりに

中村八段1勝2敗、千田八段2勝1敗で迎えた本局はともに上を見て戦うために重要な一局。中村八段の先手番で始まった本局は相掛かりの空中戦へと進みます。右桂の活用を急いで速攻を目指した先手に対し、後手の千田八段は一歩損の代償に右銀の活用を急ぐ力戦調の対抗策を打ち出しました。

数局あった実戦例を外れ、ここから二人の戦いが始まります。千田八段が棒銀の要領で盤上左方からの攻めを見せれば中村八段は力強い金上がりで対応。8筋の受けを放棄して攻め合いに転じるこの構想がうまく、実戦はここから一気に先手ペースへと転じます。千田八段としては仕掛けの前後に誤算があった模様です。

金が決め手の快勝譜

手番を得た中村八段に好手が続きます。自陣四段目にいた金をグイグイ押し出して敵陣に進入させたのが意外な決め手で、できたスペースに角をのぞけば後手玉への寄せをにらむ要となって攻めが切れません。右辺の攻めと連動して飛車の成り込みに成功した中村八段の指し手は最後まで冷静でした。

終局時刻は17時35分、最後は自玉の詰みを認めた千田八段が投了。最後の1手詰まで指した投了図からは千田八段の無念さがにじみ出ていました。本局は序盤から終盤まで構想通りに攻め切った中村八段の快勝譜に。これで勝った中村八段、敗れた千田八段ともに2勝2敗となって5回戦以降の戦いへと臨みます。

水留啓(将棋情報局)

  • 中村八段はこれで公式戦3連勝と好調をキープ(未放映のテレビ対局除く)

    中村八段はこれで公式戦3連勝と好調をキープ(未放映のテレビ対局除く)