29歳の西井監督にとって、2時間サスペンスはリアルタイムで見た経験があまりなく、むしろ友近のパロディが入り口だった。それだけに、今回の制作にあたって過去作品を見てみると、「まさかあんなに毎回お決まりのパターンがあると思わなかったです。“本家はこれなんだ!”と、友近さんの追体験をしたような感じでした」と印象を語る。

その“お決まりのパターン”をふんだんに盛り込んだ今作。友近は「いい意味での違和感があるんですよね。“なんでそこでこの人がいつも事件見てるの!?”とか、“『何か分かったんですか?』と聞かれても『いや、何でもない』って……言うたらええやん!”とか、そういうシーンは今回自分で演じながら頭の中でツッコんでました。だから、みんなでツッコみながら見るのが面白いドラマなのかなと思いますね」と話し、各地で開催している上映イベントの意義を感じているようだ。

  • 東京で開催したトーク&特別上映イベント

自分のやりたい夢がかなった気分だという友近。周囲からは「“やられた!”って悔しがる人もいたんです」といい、「実はみんな、口に出して言わないけど2時間サスペンスが好きで見てたんですよね。だから、先にやれたんだと思って、うれしかったです」と、“してやったり”の笑顔を見せた。

今回大きな反響を得て、多くの人が2時間サスペンスに愛着を持っていたことに気付かされたという西井監督。「以前は各局で毎週やってたし、それが当たり前すぎたので、尊さが分かっていなかったのかもしれないですね。気づいたらなくなっていて、ある日ポッとこの動画が出てきたので、“これが私の日常だったんだ!”という人もいれば、“何だこれ!?”という人もいるのが面白いです」と興味深く受け止めた。

2時間サスペンスに親しんでいた人からは「落ち着く」という声もあったそうで、「殺人が起きてるのに(笑)」と、その感覚に驚かされたそうだ。

テレビ放送“凱旋”の夢「ツッコみながら見るには一番」

今後の展望として、『外湯巡りミステリー』のシリーズ化にも意欲を見せるが、テレビ放送に“凱旋”することも夢見る西井監督。「みんなで同時に見ながら感想をSNSに投稿するというのが、今回はできなかったなと思っていたんです。みんなでツッコみながら見るには、やっぱりテレビが一番いいと思います」と語る。

そして、改めて見どころを聞いてみると、友近は「もうこの世界観の全部です。決して、私たちは何か面白いことを言ったり、ボケたりしていなくて、その世界観を忠実に演じているだけなので、それを皆さんがツッコんで見てくれるのが楽しい見方だと思います」とアピール。

西井監督も「まずは見ていただいて、その後どう料理していただくかは皆さんの自由です。自分だけの楽しみ方を見つけて、ぜひ2回、3回と味わっていただければ」と呼びかけた。