大谷翔平、ワールドチャンピオンの大きな壁に…パドレスとの対戦成績、打撃…

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 大谷翔平選手が今季ロサンゼルス・ドジャースで新たに体験したものが、サンディエゴ・パドレスとのライバリティな関係だ。両チームは2024年の開幕戦を戦い、最後まで地区優勝争いを繰り広げた。今回は、このライバリティの観点から、大谷選手をはじめとする両チームの主力打者の比較を行っていきたい。(文:島倉孝之)
 

開幕戦から“ヒートアップ”
 「Beat LA‼」(ロサンゼルスを倒せ!)
 これは、サンディエゴ・パドレスがワイルドカードゲームを勝ち抜けてロサンゼルス・ドジャースとのディビジョン・シリーズでの対戦を決めた時に、ペトコ・パークのファンが一斉に叫んだ言葉だ。球場の電光掲示板も「BEAT LA」の文字を遠慮なく堂々と掲げ点滅させていた。
 
 2024年の開幕戦を戦い、最後まで地区優勝争いを繰り広げたパドレスとドジャース。そのライバリティはディビジョン・シリーズでさらにヒートアップした。ドジャースに移籍した大谷翔平選手もこのライバリティの真っただ中にいる。
 

 
 2024年レギュラーシーズンでの両チームのチーム打率、チームOPS、総得点、および直接対決での得点は以下のようになっている。

 ドジャース:.258 .781 842(うち対パドレス56)
 パドレス :.263 .745 760(うち対ドジャース62)
 
 OPSはドジャース、打率はパドレスが上回っている。総得点はドジャースの方が多いが、直接対決に限れば、勝ち越したパドレス(13試合中8勝)が上回っている。
 
 両チームのWAR3.0(数値は米分析サイト『Fan Graphs』による、以下同)以上の野手およびその主な成績は以下のとおりである。
 

 
 両チームとも4人ずつの選手が該当する中、すべての項目で大谷選手が最高値を記録している。特に同選手のWAR、WPA、盗塁の突出ぶりが目立つ。
 
 OPSでみると、ドジャースの4人がパドレスの4人を上回っている。パドレスでは、ルーキーのジャクソン・メリル選手のWARが最も大きい一方、パドレスではジュリクソン・プロファー選手が合計で約4.8のWPAを記録している。
 
 以降は、上記8人に絞っていく。なお、首位打者を獲得したパドレスのルイス・アラエス選手の今季のWARは、パドレス移籍後に限れば1.2、マイアミ・マーリンズ在籍時も含めると1.1になる。





レギュラーシーズンではパドレスが優勢も…?
 両チームのレギュラーシーズンの直接対決に限ると、また異なる傾向も見えてくる。
 

 
 本塁打数1~2のドジャースの4人に対し、パドレスはタティス、マチャド両選手が3~5本の本塁打を記録している。OPSも、タティス、マチャド両選手が9割台前半の大谷選手を上回った。
 
 打点はベッツ選手の14が抜けて大きい。WPA(直接対決での合計)は大谷選手が約0.9と最も大きい。タティス、メリル、ベッツ選手がこれに続き、他の4選手に差をつけている
 
 全体に、直接対決では、大谷選手のほかベッツ、マチャド、タティス各選手の成績が良い。2010年代に、ベッツ、マチャド両選手は、ア・リーグ東地区のチームで中心選手として活躍しチームをポストシーズンに導いてきた。
 
 この経験が直接対決になると活きるのかもしれない。タティスには独特の個性が好影響を及ぼしたことも考えられる。
 

 
 現地時間9月24日~26日のレギュラーシーズン最後の直接対決3連戦に限った比較は以下のようになる。
 

 
 ここでも高い数値を出しているのが大谷選手だ。打率は5割、OPSは14割をマーク、8人中5人がマイナスを記録したWPAは突出して高い値を示した。
 
 パドレスでは、タティス、マチャド両選手がOPS10割超えの活躍を見せた。8人からの本塁打は、タティス選手からの1本だけだった。








両チームの主力で一番いいスイングをしたのは…
 今季から導入されたスイング指標を用いた比較を以下に行った。横軸は平均バットスピード、縦軸がスイング数に対するスクエア・アップ率(バットスピードと球速からの理論上の最大打球速度の80%超の打球(スクエア・アップ・スイング)を打てた割合)である。
 

 
 この2指標は一般に負の相関があり、右上に行くほどバットスピードとコンタクトやミートのバランスの取れたスイングとなる。
 
 ベッツ、プロファー、メリル、ヘルナンデス各選手の座標が左上から右下に一直線に並んでいる中、マチャド、タティス、大谷各選手の座標がこの右上に位置している。
 
 そして、一番バランスが取れたスイング内容を示しているのが、実は大谷選手なのだ。大谷選手は時速76.3マイル(約122.キロ)の平均バットスピードを持ちながらスクエア・アップ率も27.4%を記録している。
 
 その他、ベッツ選手のスクエア・アップ率(37.3%)の高さも際立っている。全体に、質の高く特色のあるスイング内容を示している選手が特に直接対決でも好成績を残している感がある。
 

 
 以上、ライバル関係を高めているドジャース、パドレスの主力打者の成績比較からは、大谷選手の潜在能力の高さが改めて浮き彫りになったほか、タティス、マチャド、ベッツ選手といった質の高く特色のあるスイング内容を示す選手が、特に直接対決で好成績を残していることがわかった。
 
 その中には過去のプレーオフでの経験が豊富な選手もいる。大谷選手も、9月下旬のパドレス戦でこのライバリティに大きな足跡を残したほか、パドレスと再戦したディビジョン・シリーズでも、初戦に本塁打を打ち勝利に貢献した。ライバル対決の歴史の中で今後大谷選手がどのような歴史を残すのだろうか。
 
 ライバリティの中の日本人選手。個人的には、ニューヨーク・ヤンキースとボストン・レッドソックスが火花を散らした時代の松井秀喜選手が思い出される。
 
 実は私自身のMLBへの興味、関心を高めたのが、ドジャースのデーブ・ロバーツ監督も現役時代体感したこの2チームのライバリティだった。当時を彷彿とさせる新たな楽しみ方も大谷選手のドジャース移籍のおかげで生まれた気がする。


 


 
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【了】