ドジャースはやっぱり強かった…2024年レギュラーシーズンの総括、WSへ向け…

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 2024年のレギュラーシーズンでは、例年通りの強さを見せたロサンゼルス・ドジャース。ナショナル・リーグ全体2位のフィラデルフィア・フィリーズに3.0ゲーム差をつけ、メジャー最多の98勝をあげたが、そこに至るまで様々な壁が立ちはだかった。そこで今回は、ドジャースの今季レギュラーシーズンを振り返ろうと思う。(文:Eli)
 

今シーズンのメジャーリーグは
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“これまで以上に“頑張ったオフ


 
 2020年以降、ムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマンの希代のスーパースター以外には長期契約を出さずに人員整理を続けてきたロサンゼルス・ドジャース。これは2023年オフのために行ったと言っても過言ではない。
 

 
 大谷翔平と10年7億ドル、山本由伸と12年3億2500万ドルで契約し、立て続けに2桁年契約を2つ渡した。さらにはタンパベイ・レイズからトレード加入したタイラー・グラスノーとは5年1億3600万ドルで契約延長、テオスカー・ヘルナンデスとは単年ではあるが2250万ドルの契約を結んだ。
 
 チームへの投資を渋るオーナーが増え、金満球団と呼ばれるチームも選手育成に重心を置き持続可能な球団運営を始めるようになった近年では、このビリオンダラーを費やすオフは異常な動きと見えた。
 
 一方で、レギュラーシーズンでは他チームを圧倒する成績を残しながらプレーオフでは毎年失望的な結果を残すチームを、本気で根底から改革するのだ、という気概が見えた動きでもあった。







期待値を遥かに上回った“ユニコーン”

 
 元来大谷翔平の価値は投手・DHを同時に高いレベルでこなせるところにあった。ドジャースが7億ドルを費やしたのも、ほとんどがこの点が理由だろう。
 
 しかし、今季は昨季受けたTJ(トミー・ジョン手術)+インターナルブレース手術の影響で投手としての活動は不可、DH専用としての出場だった。当然、投手としてのプラスが無い以上、過去3年間のようなMVP級の活躍は不可能なはずであった。
 

 
 実際にシーズン前のMVPオッズは昨季MVP争いを演じ、ワン・ツーフィニッシュとなったベッツ、ロナルド・アクーニャJr.がトップを形成し、大谷は5位近辺に位置していた。
 
 シーズンが始まってからも例によって優秀な打撃成績を残していたものの、ショート守備と打撃を両立するベッツに後塵を拝していた。HR数も多かったが、DHのマイナスをひっくり返すほどの数ではなかった。
 
 ところが、6月に入ると大谷はギアを切り替え、躍進した。6月のOPSは1.110、HR12本、7月はOPS1.008、HR6本となった。さらに盗塁数も急増し、4~6月平均が5だったのが、7月には12、8月には15と3倍近くになった。
 
 8月23日にはサヨナラグランドスラムをホームで放ち、史上最速での40-40を達成。9月19日には史上初の50-50を達成した。ちなみにシーズン前のある賭けマーケットでは50-50を達成する選手のオッズはマイナス50000であった。それ程誰も予期していないことだった。
 
 このような活躍もあって、前述のベッツは故障してしまったが、同様にエリートなショート守備と30-30を達成する勢いであったニューヨーク・メッツのフランシスコ・リンドアを抑え、現在では2位を大きく離した状態でMVPオッズトップに浮上した。
 
 もともとベッツ、フリーマンを基盤としたドジャースをさらなる高みへ導く存在として大谷を迎え入れたはずだったが、ベッツの故障やフリーマンの不振・離脱もあり、大谷は加入初年度からドジャースの地区優勝に欠かせない存在となった。来季からは二刀流として復帰する大谷に、今から期待が高まっている。







“野戦病院化”を乗り越えて…

 
 前述の通り、オフに大補強を敢行したドジャースだが、ふたを開けてみればロバーツ-フリードマン政権では2018年以来6年ぶりの100勝未達成となってしまった(2020年は116勝換算)。その大きな要因は投手陣に相次いだ故障離脱だろう。
 
 今季の投手陣が生み出したfWARは13.9でメジャー16位と野手陣のfWAR32.1メジャー3位と大きく離されている。ドジャースが誇る圧倒的なファームシステムと選手改造能力をフル稼働させてどうにかシーズンを乗り切ることができたが、結果的に40人のピッチャーが使われることなった。
 
 オフシーズンの補強戦略を見ても、多少の故障離脱はリスクとして取っている側面があった。ガラスのエースと呼ばれるグラスノーを獲得し契約延長したことからも見て取れる。
 
 一方でTJ手術から復帰するウォーカー・ビューラー、屈腱筋手術から復帰予定のダスティン・メイ、肩の手術を受けたクレイトン・カーショーとエース級が続々と戻ってくること、加えて昨季デビューを果たしたボビー・ミラー、ギャビン・ストーン、エメット・シーアン、カイル・ハートの更なる飛躍も期待され、故障と復帰/躍進をバランスすればプラスに傾くはずであった。
 
 ところが5月にシーアン、6月にはハートが、さらに8月には今季デビューしたばかりのリバー・ライアンがTJ手術となり、今季絶望。さらにはメイがリハビリ期間中に食事をしていると食道を損傷し今季絶望ともはや呪いを疑うレベルのことも起きた。
 
 しまいにはローテーションをある程度回していたグラスノー、カーショーが故障、9月には先発ローテ皆勤賞のストーンが肩の炎症で離脱してしまった。過去3年間NPBで150イニング以上を投げていた山本由伸でさえ3か月ほど離脱した。
 
 ドジャースのフロントオフィスは、オフシーズンに組織全体で投手育成とプロトコルに関する検証を行うとしている。米メディア『The Athletic』のKen Rosenthal氏は、2023年に最も球速の速いチームはドジャース傘下のダブルAチームだったことを指摘した上で、球速偏重が原因の一つではないかと指摘している。
 
 カブス放送局のアナリスト Lance Brozdowski氏はマイナーリーグ全体のデータを検証し、ドジャース組織全体の平均球速は94.0マイルでトップだったとしている。これは2位を0.7マイル離す数値である。
 

 
念願のプレーオフでの勝利なるか
 
 この原稿を書いている9月末でドジャースは地区優勝・メジャー最高勝率を決め、MLB全体での第1シードとして来るNLDSへ準備を進めている。過去2年は打線の沈黙や先発の頭数不足などからファンを失望させる結果になっている。
 
 WCS中の5日間の休養日が原因になっているとも指摘され、昨季からドジャースは組織内のマイナーリーガーなどを集めた紅白戦を行い、特にルーティーンが重要とされる野手陣のコンディション維持に努めた。
 
 2020年にワールドシリーズ優勝を果たしたとは言え、Covid-19による短縮シーズンだったこともあり”Mickey Mouse Ring” (= 正当性がない)と揶揄されることも多い。
 
 またこの時はロサンゼルス市内での優勝パレードも行えていない。1988年以来36年ぶりのフルスペックでのワールドシリーズ優勝に向けてドジャースの躍進を期待する。


 


 
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【了】