第83期順位戦B級1組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、6回戦計6局の一斉対局が9月26日(木)に各地の対局場で行われました。このうち東京・将棋会館で行われた広瀬章人九段―糸谷哲郎八段の一戦は糸谷八段が128手で勝利。5勝1敗として暫定首位の座をキープしました。
要所の同世代対決
ここまで2勝3敗の広瀬九段と4勝1敗の糸谷八段。公式戦での対決は広瀬九段の16勝6敗と若干の偏りがあります。広瀬九段の先手番で始まった対局は後手の糸谷八段が雁木に組む趣向を披露。広瀬九段は矢倉囲いの枠組みを作ったのち、早繰り銀に似た要領で主導権を求めました。
先攻を許した形の糸谷八段ですが、ここから百戦錬磨の怪力を発揮します。突き捨ての歩に継ぎ歩と、連続の手筋で敵陣に味をつけておいてから6筋に築いた拠点を突き出したのが反撃開始の合図。さながらなだれ攻めのような銀のぶつけを実現して一気に盤上左方の勢力奪回に成功しました。
歩の手筋満載の名局
勢いに乗った糸谷八段の指し手は駒の勢い、着手の早さともに止まりません。3・4筋の歩を連続で成り捨てたのは敵玉そばに作ると金の威力を最大化する手筋。広瀬九段がなんとか金取りの角打ちで反撃したとき、軽い歩の突き出しでこれを緩和したのが「大駒は近づけて受けよ」の格言通りの受けの手筋でした。
終局時刻は20時36分、最後は形勢の開きを認めた広瀬九段の投了により糸谷八段の勝利が決定。一局を振り返ると突き捨ての歩・継ぎ歩・成り捨てなど、さまざまな歩の手筋を炸裂させた糸谷八段の教科書通りの一局となりました。勝った糸谷八段は5勝1敗で暫定首位をキープ、次戦では山崎隆之八段と対戦します。
水留啓(将棋情報局)