第50期棋王戦コナミグループ杯(共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟主催)は挑戦者決定トーナメントが進行中。9月6日(金)には渡辺明九段―中村太地八段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、角換わりのねじり合いから抜け出した渡辺九段が144手で勝利。難敵を下してベスト8入りを決めています。
渡辺九段の早繰り銀対策は?
振り駒が行われた本局は先手となった中村八段が角換わり早繰り銀を採用、先手番の利を生かして先攻の構えを取ります。対する後手の渡辺九段は腰掛け銀で対抗、手順に銀矢倉の堅陣を組み上げて専守防衛の方針を打ち出しました。ともに早い攻めはなく、盤上は第二次駒組みに移ります。
中村八段が穴熊に組み替えたのを見て渡辺九段が動きます。遠見の角と呼ばれる自陣角で成り込みを狙ったのが、先手陣の金銀の偏りを突く揺さぶり。中村八段も自陣角を打って後手の狙いを防ぎますが、こちらは打たされた感が否めません。実戦はこの2枚の角の働きが勝負の綾になりました。
働かなかった自陣角
盤面全体を使った押し引きはやがて激しい駒の取り合いに突入。戦いが一段落した局面は玉の堅さで優る先手が指しやすい形勢でしたが、渡辺九段の放った垂れ歩の勝負手への応手を中村八段が間違えます。ここは強く歩を取って角の再活用を目指すのが感想戦での結論で、角と馬の連携で寄せを狙えば優位を維持できたとされました。
敵竜の利きを止めることを優先した中村八段の一手に対し、渡辺九段の放った敵陣九段目への金打ちが場合の好手でした。筋悪ではあるものの、先手の自陣角の働きさえ奪ってしまえば後手玉に怖い筋はありません。終局時刻は20時0分、最後は形勢の開きを認めた中村八段の投了で渡辺九段のベスト8進出が決まりました。
一局を振り返ると、中盤までうまく指し回していた中村八段にとって終盤の失着が悔やまれる展開に。勝った渡辺九段は次戦で伊藤匠叡王―増田康宏八段戦の勝者と対戦します。
水留啓(将棋情報局)