企業・NPO・学校・区市町村などと連携し、子どもの笑顔につながる様々なアクションを展開している東京都の「こどもスマイルムーブメント」。その取り組みの一環として、中高生が企業などが取り組む地域・社会課題の解決のアイデアを提案して競う「ティーンズ・アイデアコンテスト」が今年度より実施される。8月22日には中高生が地域・社会課題に関心を持ち、自ら行動を起こすきっかけとなる場として、同コンテストのスペシャルセミナーがLIFORK原宿で開催。「こどもスマイルムーブメント」アンバサダーでソニー元CEOの平井一夫氏が講演を行った。

  • 「こどもスマイルムーブメント」アンバサダーでソニー元CEOの平井一夫氏

「ティーンズ・アイデアコンテスト」とは?

ティーンズ・アイデアコンテストは、企業や団体が今まさに中高生に聞いてみたいと思っている地域・社会課題に関するテーマを提案し、その解決策となるアイデアを募集・表彰するコンテスト。

9月30日の募集締め切り後、一次審査として書類審査、二次審査としてオンラインヒアリングが10月中に行われ、12月22日には都内会場でコンテストの最終審査と表彰式を開催する。

募集テーマは「地震が起きても慌てない、安心できるまちにするためには?」(テーマ提案企業: 熊谷組)「赤ちゃんにやさしい、子育てのしやすい地域社会を実現するためには?」(テーマ提案企業: ピジョン)「デジタルデバイド(情報格差)とネット依存を防ぐには?」(テーマ提案企業: イコールチャンス)の3つ。

募集対象は東京都内に在住・在学する中学生・高校生などで、中学生・高校生の2部門それぞれで最優秀賞となる「知事賞」1アイデア、優秀賞2アイデアの計6アイデアが表彰される。来年1月以降、受賞者とテーマ提案企業・団体による受賞アイデアについての意見交換も行われる予定だ。

今回のセミナーではソニー元CEOの平井一夫氏による講演を実施。オンラインによる配信も行われ、90名以上の東京都内に在住・在学する中学生・高校生たちが参加した。

講演の冒頭、平井氏は企業が地域・社会課題に取り組む背景について説明。その上で学生ならではの視点で地域や社会の課題に取り組むことの大切さを強調した。

「企業は最終的に自社の商品・サービスをもっと使ってもらうことを前提に、さまざまな社会課題に取り組んでいます。市場の成長や企業のより大きな発展といった自分たちのためのメリットにつなげていくために社会課題を解決する。

一方で学生の皆さんは、ひとつの問題に対して忖度することなく、しがらみがない中で解決方法を考えることができます。これは皆さんにしか持てない視点で、非常に価値のある視点であることを、ぜひ覚えておいていただきたいと思います」

まずは自分の身の回りから考える

2021年に一般社団法人プロジェクト希望を設立し、代表理事として子どもたちの未来創造のきっかけとなる"感動体験"をつくるプロジェクトを推進している平井氏。

アイデアの発想法や地域・社会課題にアプローチする際のポイントとして、身の回りの問題を発見し、興味のある分野について深掘りすることの重要性についても語った。

「まずは自分の身の回りでどういうことが起きているかを考えていくこと。例えば普段の通学路でも、この頃空き家が増えてきたなとか、駅前の商店街がシャッター街になってきちゃったなとかいろんな気づきがあると思います。そういう発見の中から時間をかけて調べてみたくなるような興味ある分野を深掘りしていく。そして、自分が納得できるまで常に『なぜ?』と問いかけることがとても大切です。どんどん自分で調べてみたり、人に聞いたりすることで問題の本質にも辿り着くことができますし、より良い解決方法が提案できます」

また、企業などに解決方法を提案する際は「トレードオフ」の関係性や「多視点」の考え方を意識することも大切なポイントになるという。

「トレードオフというのは両立できない関係のことです。例えば今みなさんは夏休みだと思いますが、夏休みの宿題に取り組む時間と友達と遊ぶ時間は両立できない関係です。遊ぶだけで宿題はしないということは基本できないので、どこかでこの2つのバランスを取らなきゃいけない。

また、多視点で考えることも非常に重要です。ある問題を取り巻くステークホルダー・利害関係者にはどんな人たちがいて、それぞれの視点から見たときに、その提案がどう映るのか。みんなが納得できるバランスを総合的に考えなければ本当の課題解決にはならないということになります」

講演後には参加者の中高生との質疑応答の時間も設けられ、「今の中高生が身につけるべき力」に関する質問には、次のように回答していた。

「まずは興味があるところからで構いませんので、世の中や社会でどんなことが起きているか、なるべく若いうちから勉強してほしいなと思います。日本や世界のニュースに触れて自分なりに調べて考えてみる。そういう力をぜひ身につけてほしいです」