第45回将棋日本シリーズJTプロ公式戦は2回戦が進行中。8月31日(土)には渡辺明九段―豊島将之九段の一戦が広島県広島市の「広島サンプラザホール」で行われました。対局の結果、相掛かりの持久戦から抜け出した渡辺九段が88手で勝利。4度目の優勝に向けて2年連続の準決勝進出を決めています。
本棋戦では異例の無観客試合
台風10号の接近に伴い無観客試合として行われた本局。渡辺九段は兵庫県で行われた王位戦第5局から中2日での対局です。振り駒が行われた本局は両者の息が合って相掛かりに進展、先手の豊島九段は左端の位を取って持久戦を目指しました。ともに角換わり腰掛け銀のような陣を敷いて戦いの時を待ちます。
先に仕掛けたのは後手の渡辺九段でした。6筋の歩を突っかけて桂の活用を目指したのが戦闘開始の合図。これに対し豊島九段も桂を犠牲に敵陣に馬を作り応戦、盤上は激しい攻め合いに突入します。渡辺九段が桂跳ねで銀取りをかけた局面が中盤の分岐点となりました。豊島九段はこれを手抜いてアクセル全開です。
受けの好手で渡辺九段勝利
先手が調子よく攻めているように思われた状況は渡辺九段の受けの好手により一変します。守りの要に思われた金を見捨てて玉を逃げ出したのが好手。これにより渡辺玉には有効な詰めろ(次に詰みを狙う手)がなくなったため、終盤の速度計算が容易になりました。
終局時刻は16時44分(15時36分対局開始)、最後は攻めが続かなくなったのを認めた豊島九段が投了。終局図で豊島九段の玉にはほどきづらい詰めろがかかっていました。快勝で2年連続となるベスト4入りを決めた渡辺九段は10月12日(土)に大阪府で行われる準決勝で稲葉陽八段と顔を合わせます。
水留啓(将棋情報局)