『映画 けいおん!』(11)や『映画 聲の形』(16)で注目を集めた山田尚子監督の最新作『きみの色』が30日に公開される。人が「色」で見える高校生の日暮トツ子は、同じ学校に通っていた美しい色を放つ少女・作永きみ、古書店で出会った音楽好きの少年・影平ルイとひょんなことからバンドを組むことに。それぞれが誰にも言えない悩みを抱えながら、音楽で心を通わせていく3人の間には次第に友情とほのかな恋のような感情が生まれ始める。

今回、約1,600人のオーディションを勝ち抜き主人公3人の声優に選ばれた、トツ子役の鈴川紗由、きみ役の高石あかり(※高ははしごだか)、ルイ役の木戸大聖にインタビュー。声優として出演が決まったときの心境をはじめ、アフレコ現場のエピソードなどを語ってくれたほか、今作で初共演の3人がそれぞれのイメージカラーを明かした。

  • (左から)高石あかり、鈴川紗由、木戸大聖 撮影:宮田浩史

約1,600人が参加したオーディションで抜てき

――オーディションを勝ち抜いて出演が決定しましたが、今作への出演が決まったときはどういった心境でしたか?

鈴川:オーディションを受ける段階では、山田監督作品にまさか受かるとは思っていなかったので、(オーディションで)アフレコブースに行けるのがすごく楽しみという感覚だったんですが、審査が進んでいくうちに、「もしかして……」という緊張感が生まれてきました。合格のお知らせは、事務所の方にサプライズで教えていただいたんですが、頭が真っ白になるぐらい驚いて、うれし涙を流してしまいました。アフレコの日まで、自分がトツ子なんだという実感を持てなかったです。

高石:山田尚子監督の作品は以前から観ていたんです。特に『映画 聲の形』は好きなシーンを何度も観て、練習していたぐらいだったので、まさか自分が参加させていただけるなんて思っていなかったです。なので、(オーディション合格を)聞いたときはものすごく嬉しかったですし、嘘なんじゃないかと夢のような感覚で、すぐ家族に連絡して嬉しさを伝えました。

木戸:声優はいつかは挑戦してみたいと思っていて、山田監督の作品はもともと観ていたので、絶対にご一緒したいという思いがあり、決まったときはすごく嬉しかったです。普段のお芝居と違って、(アフレコ)現場の雰囲気や声の録り方が全く想像つかなかったので、不安もありながら、同時にワクワクもありました。

――3人がバンドを結成し、友情や恋心を育んでいくというまさに青春な作品だと思いますが、脚本を読んだときにはどういった感想を持ちましたか?

鈴川:オーディションのときも実際のセリフで審査をしたんですが、そのときはトツ子はおとなしい性格なのかなと思っていたので、全編を読ませていただいてから、「すごく明るくてパワフルな女の子なんだ」と気づきました。普段、私はあまり明るいタイプではないので、どうしたらトツ子をかわいらしくて、周りを明るくするパワーのある女の子にできるのかなということを考えながら準備をしていました。

高石:セリフの一つひとつに日常の中から切り取ったものがいくつもあるなと思いました。3人で「アイスクリームどれがいい?」「私、これ!」って選んでいるシーンなど、日常の切り取りがすごく素敵だなと。それがどう絵、色、音になるのかとわくわくしていました。

木戸:アニメーション映画の台本というものを初めて見させていただいたときに、セリフの行間が開いていたりと、普段のお芝居のときにいただく台本との違いに驚きました。読みながらアニメの絵を想像したのですが、「読み切ったときに自分がイメージしているものでは全然足りてなくて、ここに色や音楽が加わるんだろうな」と思いました。僕らが歌を歌ってる部分でも歌詞は書いてありますが、どんな音楽なのかというのは書いていなかったので、普段読んでいる脚本以上に想像がつかなかったです。

初対面の会話のきっかけは“温度調節”

――3人そろってアフレコすることがほとんどだったそうですが、アフレコ現場の雰囲気はいかがでしたか?

高石:(印象的なのは)温度調節……?

木戸:そうだね(笑)

高石:(アフレコブースは)自分たちのものという感覚があって、そこはスタッフさんも入らない空間でマイクとモニターがあるだけの無音の世界。(2人とは)はじめましてだったので緊張しつつも「暑いですかね……?」「(温度)下げますか?」と切り出して(笑)。どうその場に馴染めるかということを考えていました。

木戸: 自分たちが緊張しているのもあって、酸素が薄い感じがしました。ブースの外にお茶場を用意してくださっていたんですが、そこがすごくリラックスする場所でした(笑)。ブースの扉を開けると、「よし、やらなきゃ!」という引き締まる感覚があったんですが、基本的に3人で一緒に録っていたので安心感があってよかったです。別のお仕事でナレーションを録ったりすることもありますが、あの空間に1人だと寂しいよね?

高石:紗由ちゃんは1人のときもあったよね?

鈴川:そうなんです! 1人のときは、ブースが神聖な場所というか、「うぅ」と重くなるような場所に感じました。3人でアフレコしたときは私のお腹が鳴っちゃったときに(2人が)ツッコんでくれたりしてくださったので、とてもあたたかくて楽しかったです(笑)。

高石・木戸:(笑)

――初対面での温度調節の話から鈴川さんのお腹が鳴ってしまうエピソードまでお話しいただきましたが、そのほかに覚えている印象的なエピソードはありましたか?

木戸:印象的だったのは台本の持ち方。3人ともそれぞれ個性があって、「それでしゃべれるのすごいなぁ」と思っていました(笑)。ページをめくるときに音を立てちゃいけないので、いろんなやり方があるんだなと思いました。

高石:皆さん、左手に持ってました?

鈴川:私はそうでしたね!

木戸:あかりちゃんが……(笑)

鈴川:マイクを通り越して持っていて(笑)

高石:ほとんどマイクで(台本が)見えない(笑)。でもこれ以外で音を立てずにはできなくて! 難しかった……(笑)

木戸:人によって音を立てないやり方が違うからね。