第83期順位戦B級2組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社・日本将棋連盟)は、3回戦計13局の一斉対局が8月7日(水)に各地の対局場で行われました。このうち伊藤匠叡王―屋敷伸之九段の一戦は103手で伊藤叡王が勝利。攻防に働く飛車の活躍で開幕3連勝を飾りました。

伊藤叡王の「高飛車」作戦

ともに2連勝で迎えた本局は昇級に向けた大一番。3つの昇級枠をめぐって26名が争う今期のB級2組では8勝2敗の成績が昇級に向けた現実的な星取りと予想されます。伊藤叡王の先手番で始まった本局は両対局者の息が合った結果、相掛かりの空中戦に進みました。

右銀を繰り出し速攻の含みを見せた屋敷九段に対して伊藤叡王は飛車の活用でペースをつかみます。一歩交換から飛車を高い位置につけたのは、敵銀の動きににらみを利かせつつ1筋の端攻めを目指す一石二鳥の構え。この飛車は右辺での攻めの役目を終えるとすぐに下段に戻って守備を担います。

飛車が光った一局

後手の屋敷九段は狙い通り銀交換を果たしますが、伊藤叡王はこの瞬間を待っていました。果敢に右桂を跳ね出して反撃に乗り出したのが握った手番を最大限に生かす好手。こうなるとあらかじめ引いた下段飛車が敵飛の成り込みを防ぐ絶好の守り駒として光っています。

逆転を目指す屋敷九段は手段を尽くして何とか竜を作り、猛追しますが、優位に立った伊藤叡王の指し手は冷静でした。後手玉への寄せの形を作っておいてから飛車交換を挑んだのがスマートな決め手。終局時刻は21時20分、最後は攻防ともに見込みなしと認めた屋敷九段が投了を告げました。

勝った伊藤叡王はこれで3連勝スタートとして2期連続昇級に向け前進。次回4回戦では同じく開幕3連勝を飾った服部慎一郎六段との直接対決に挑みます。

水留啓(将棋情報局)

  • 伊藤叡王は約1か月ぶりの公式戦となったが不安を感じさせず(写真は第9期叡王戦五番勝負第5局のもの 撮影:編集部)

    伊藤叡王は約1か月ぶりの公式戦となったが不安を感じさせず(写真は第9期叡王戦五番勝負第5局のもの 撮影:編集部)