ホンダ、N-VAN e:は、仕事も趣味も”使える”盤石のEV性能 

ホンダは2024年6月13日、新型軽商用EV「N-VAN e:」(エヌバン イー、以下Nバンe:)の価格や航続距離などの詳細と価格を公表し、同年10月10日に発売すると発表した。

【画像】ホンダの本気がバクハツ!? 仕事でも、趣味にも使える要素がたっぷり

Nバンe:は、配送業やサービス/メンテナンス業といった企業による商用利用のほか、建設現場の職人や自営業など個人事業主による商用利用や、趣味やレジャーで活用する乗用ユースもしくは商用・乗用を兼用する使い方など、さまざまなニーズに応えるマルチな軽EVを目指し開発。それぞれの利用に適したグレード体系を採る。

[バリエーションと価格]

※いずれも商用車のため4ナンバー登録となる

※普通充電/急速充電付きの価格。〈 〉内は急速充電なし

■一般向けタイプ

e: FUN…291万9400円

e: L4…280万9400円〈269万9400円〉

■法人向けタイプ

e: L2…265万9800円〈254万9800円〉

e: G…254万9800円〈243万9800円〉

一般向けタイプは全国のホンダカーズで取り扱うモデルで、前・後席を備えた4人乗り仕様のスタンダードタイプ「e: L4」と、同じく4人乗りで趣味やレジャー用途にも活用できるスタイリングや充実装備の「e: FUN」を設定する。

法人向けタイプは、本田技研工業 法人営業部および、新車オンラインストア「Honda ON」扱いで、商用ユースに特化した1人乗り仕様の「e: G」、運転席とその後ろにシートを配したタンデム2人乗り「e: L2」を設定。こちらはリース販売のみとなっている。

なお、法人向けタイプでは事業者向け補助金(LEVO補助金)を適用することで200万円を切る価格を実現。一般向けタイプでも一般向け補助金(CEV補助金)の活用で、軽自動車の最大補助額となる55万円を受け取れる。

Nバン譲りの使い勝手のよさにEVの魅力をプラス

Nバンe:は、ホンダの軽自動車「N」シリーズの商用タイプであるNバンをベースにバッテリーEV化したモデル。フラットで低い床と高い天井がもたらす大容量の荷室空間や助手席側のセンターピラーを廃した大開口部など、Nバンの持つ使い勝手のいいパッケージングをそのままにパワートレーンを置き換えた。

搭載するMCF7型モーターは、最高出力が47kW(64ps)〈e: L4、e: FUN〉、39kW(53ps)〈e:G、e: L2〉、最大トルク162Nm(16.5kgm)を発揮。小型化した電動アクスルや高電圧部品とともにフロントコンパーメントに集中配置、前輪を駆動する。

駆動用バッテリーはパウチタイプのリチウムイオン電池を採用。薄型バッテリーユニットをフロア下に搭載。容量は29.6kWhで一充電航続距離(WLTCモード)は245kmを実現する。

充電方式は普通充電と急速充電に対応(一部急速充電非搭載モデルも設定)。充電性能は普通充電が6.0kW出力に対応し、約4.5時間で満充電が可能(ディーラーオプションの普通充電ケーブル使用時は3.2kW出力で約8.5時間)。急速充電は50kWに対応し、約30分でバッテリー容量80%まで充電できる。

ちなみにバッテリー容量については、ガソリンモデルNバンのプラットフォームを活用した上で室内空間を犠牲にせずに積める最大容量としており、商用ユースに求められる実用航続距離を確保するとともに、普通充電において一晩で充電できる容量とすることで利便性を確保したという。

また、温度による充電能力やバッテリー性能低下を防ぐために、バッテリーユニットに水路を設け冷却・加温する仕組みを採用。バッテリーの高温時にはラジエターで冷却。冬季の使用においては、ヒーターで加温した温水でバッテリーを温めることで充電時間と航続距離を向上させている。

ほかにも外部給電機能にも対応。普通充電ポートにオプションの「ホンダ パワーサプライ コネクター」を接続することで出力1500Wまでの家電製品などが使える。電動工具などの使用や、アウトドアアクティビティなどさまざまなシーンに活用可能だ。

また、「パワーエクスポーター e:6000/9000」を急速充電ポートへ接続すれば6000Wもしくは9000Wの高出力給電も可能。防災拠点などで活用できるほか、停電や災害時などにはV2H(Vehicle to Home)による住宅設備への給電も行える。

13インチタイヤ&ホイールを新採用

EV化に伴い、タイヤ&ホイールが変更されているのもトピックだ。Nバンでは145/80R12 80/78N LTサイズのタイヤを装着しているが、Nバンe:では145/80R13 82/80N LTタイヤに変更した。これはEV化による重量増でブレーキ性能を強化したため。開発当初はタイヤ交換におけるコストなども鑑みて12インチにこだわったという。しかし、長い下り坂での踏力がより必要になることと、適切な制動力を確保するためにブレーキを強化。結果的に1インチアップとなったのだ。

このサイズアップは、サスペンションのチューニングの幅が広がり、最適化も容易になったことも合わせて乗り心地のよさという副産物を創出。懸念していたタイヤのコストもそれほど影響はないとのこと。また、ホイール変更などのドレスアップもしやすくなったが、タイヤの存在感や全体的なフォルムの安定感も高まっており、つるしのままでも十分。Nバンにはない魅力のひとつとなっている。

空間効率を追求した“箱”な室内空間

これらの電動化による特徴と空間効率を追求したNバンe:の開発コンセプトは「e:CONTAINER=移動蓄電コンテナ」だという。EVならではの特徴として挙げられるのが早朝・深夜でも静かに配送できたり、排出ガスがないので屋内や地下でも空気を汚す心配もない。さらに停車中にもエアコンが使えたり、電動機器も使える。これにNバン譲りの大空間と大開口を併せ持つキャビンという、究極にシンプルで、空間価値を極めるべく開発されたという。

外観は基本的にはNバンと変わらないフォルムである。“EVだから特別”感を演出するのではなく、シンプルな中に機能性をアピールする“合理美”なデザインを採用。

内外装を含めたデザインは“コンテナ”感にあふれる。外観では一見して変わりはないように見えるが、バッテリーEV化するにあたって普通充電および急速充電ポートをフロントグリル部に配置している。この部分、回収したバンパーをリサイクルしたものだという。さりげなくサステイナブルな取り組みをアピールする。

インテリアに目を向けると、Nバンをベースとしながらもさらに個性的なしつらえになっている。

ドアパネルはコンテナをモチーフに縦のビードデザインを採用。直線基調でコンテナのようなスクエアな空間を演出する。このビードデザインによりパネルの強度を高めつつ薄肉化を実施。軽量化にも寄与する。また積み荷が接触してもキズが目立ちにくいなど、働くクルマに適したデザインとなっているのだ。

インパネはNバンに共通する直線基調のデザインを踏襲しながら、助手席側はさらに積載性を高めている。助手席を持たないe: Gとe: L2は、ドリンクホルダーや小物入れを廃した積載性重視の専用意匠としている。

また、ドライブセレクターは、ホンダのハイブリッド(e:HEV)モデルに採用するボタン式のエレクトリックギアセレクターを採用。エアコンやECON、パワーウインドーなど使用頻度な高いスイッチ類をインパネ中央に集中配置して操作性を高めている。

メーターは7インチTFT液晶を採用。運転に必要な情報をわかりやすく、シンプルかつ大きく表示する

シートの基本構造はNバンを踏襲。4人乗り仕様は、助手席を収納してフルフラットになるところも同じだ。1人乗りもしくはタンデム2人乗り仕様は、車両左側のシートを取り外した状態でフロアをフラット化。荷室エリアとの段差は生まれるが、高さ方向に積載性が拡大する。

なお、4人乗り仕様は、運転席背面に後席のリアシートピローが収納できるポケットを2つ装備(Nバンは1つ)。後席格納時に外した同ピローがスマートに収納できるのもポイントだ。

積載性能については、e: L4とe: FUNが最大300kg(4人乗車時は150kg)、商用ユースに特化したe: Gとe: L2が350kgとなっている。

4人乗り仕様はホンダセンシングで安全性能も抜かりなし

安全性能については、先進安全運転支援機能として、衝突軽減ブレーキ〈CMBS〉、歩行者事故低減ステアリング、路外逸脱抑制機能、オートハイビーム、パーキングセンサーシステム(リヤ)が全車標準装備。4人乗り仕様(e: L4とe: FUN)はさらに誤発進抑制機能(前進・後退)や車線維持支援システム〈LKAS〉、アダプティブクルーズコントロール〈ACC〉などのホンダセンシング仕様となる。

なお、Nバンe:は、軽商用バンとして初めてサイドカーテンエアバッグを運転席と助手席に標準装備。さらに軽自動車として初めて、衝突事故での2次被害を軽減する技術である衝突後ブレーキシステムを採用しているのも見逃せないポイントだ。

より便利に使えるホンダコネクト

EVの利便性を高める便利ツールが「Honda CONNECT(ホンダコネクト)」。ホンダの会員制サポートサービス「Honda Total Care(ホンダトータルケア)」のIDを取得することで、お出かけ前タイマー設定や充電待機時間設定、最大電流量設定、最大充電量設定、外部給電下限SOC(充電状態)設定を無料で使用でき、スマートフォンアプリからもリモート操作が可能だ。これらの機能を活用することでより快適に移動でき、電気代の抑制や航続距離の向上に役立てられるのだ。

使えるEVをサポートする環境も整備

ホンダは電動化車両の本格販売に先駆け、EVを快適に使える環境を整える取り組み行っている。家電量販店のビックカメラと連携した充電器の設置サービスのほか、エネオス電気の電気料金サービスの取り扱いを全国のホンダカーズで2024年5月13日に開始。また、各地の充電スタンドで充電できる「e MOBILITY POWER」カードの案内も行っており、EVを利用するための環境整備をホンダカーズにて、ワンストップで総合的にサポートしていく。 

e: FUNは多彩なボディカラーで個性をアピールできる

ボディカラーは、趣味やレジャーを楽しむ人向けの4人乗り仕様に多彩なバリエーションを用意。全10色のうち、e: FUNは2トーン3色と、モノトーン5色の計8色から選べる。対して商用特化モデルのe: L2とe: Gはシルバーとホワイトの2色のみで、e: Gはバンパーも無塗装ブラックになる。ボディカラーと設定車種は以下のとおり。

■2トーン

・オータムイエローパール/ブラック〈e: FUN、e: L4〉★

・ボタニカルグリーンパール/ブラック〈e: FUN、e: L4〉★

・ソニックグレーパール/ブラック〈e: FUN〉★

■モノトーン

・オータムイエローパール〈e: FUN、e: L4〉▲

・ボタニカルグリーンパール〈e: FUN、e: L4〉▲

・ソニックグレーパール〈e: FUN〉▲

・ナイトホークブラックパール〈e: FUN〉

・プラチナホワイトパール〈e: FUN、e: L4〉▲

・ルナシルバーメタリック〈e: L4、e: L2、e: G〉

・タフタホワイトⅢ〈e: L4、e: L2、e: G〉

★:10万4500円高

▲:3万3000円高

[主要諸元]〈 〉内は4人乗車時

■e: FUN(FF・ー)

【寸法・重量】

全長:3395mm

全幅:1475mm

全高:1960mm

ホイールベース:2520mm

トレッド:前1310mm/後1315mm

最低地上高:165mm

乗車定員:2〈4〉人

車両重量:1140kg

荷室長:左1495〈785〉mm/右1335〈785〉mm

荷室幅:1230〈1390〉mm

荷室高:1370mm

【パワートレーン・性能】

モーター型式・種類:MCF7・交流同期電動機

定格出力:39kW

最高出力:47kW(64ps)

最大トルク:162Nm(16.5kgm)

駆動用主電池種類:リチウムイオン電池

容量:82.7Ah

総電圧:358V

総電力量:29.6kWh

交流電力量消費率(WLTCモード):127Wh/km

一充電走行距離(WLTCモード):245km

最小回転半径:4.6m

【諸装置】

サスペンション:前ストラット/後トーションビーム

ブレーキ:前ディスク/後L&Tドラム

タイヤ:145/80R13 82/80N LT

 

ホンダは環境負荷ゼロの実現に向け、2030年に100%電動化を目指しており、その足がかりとして手の届く身近な軽商用EVから国内の電動化を本格化する。その第一弾がこのNバンe:である。その後2025年には軽乗用EVを、2026年以降に2種類の小型EVの投入を予定している。未来のホンダを占う試金石となり得るチャレンジングなモデルであることは間違いない。

〈文=ドライバーWeb編集部・兒嶋 写真=澤田和久〉