第50期棋王戦コナミグループ杯(共同通信社と観戦記を掲載する21の新聞社、日本将棋連盟主催)の挑戦者決定トーナメントで、羽生善治九段と大橋貴洸七段の対局が、6月25日(火)に東京・将棋会館で行われました。振り駒の結果、先手は大橋七段、後手は羽生九段となり、激しい戦いの末、18時21分に96手で羽生九段が勝利を収めました。

序盤、大橋七段は横歩取りで堅実な指し回しを見せ、羽生九段の出方をうかがいました。羽生九段も相手の動きを慎重に観察しながら、守りを固めていきました。

中盤では、局面が一気に動き始め、大橋七段が積極的に駒を前線に送り込み、羽生九段に圧力をかけました。5筋に配置した大橋七段の馬が盤面を見事にコントロールし、徐々に優位を築いていきます。

一瞬のスキをつき、羽生マジックが炸裂

羽生九段も反撃を試みますが、大橋七段はこれを巧みに受け、さらなる攻撃を開始します。AIの評価値も大橋七段の優勢をはっきりと示し、このまま勝ちきってしまうかに思われましたが、羽生九段の守りの銀の頭に大橋七段が歩を打ち込んだことから、局面は怒涛の逆転へと進展しました。

この歩がいかにも厳しい手に見えるため逃げたくなるところですが、羽生九段はあっさりと銀で取りました。これが見事な好手で、状況はほぼ互角に戻りました。そして羽生九段が敵陣にガツンと金を打ち込み、後手が明確に優勢に転じ、勝利に結びつきました。劣勢にあっても一瞬の隙を逃さずに大逆転を果たす、まさに「羽生マジック」と呼ぶにふさわしい対局でした。

  • これぞ羽生マジック的展開と、SNSでも大きな盛り上がりを見せました(写真は第72期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグのもの 提供:日本将棋連盟)

    これぞ羽生マジック的展開と、SNSでも大きな盛り上がりを見せました(写真は第72期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグのもの 提供:日本将棋連盟)