山本由伸がIL入りの「緊急事態」…メジャー1年目の”変化”とドジャースの”動…

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 日本球界で圧巻の成績を残し、2024年からメジャーリーグへ活躍の舞台を移したロサンゼルス・ドジャースの山本由伸。メジャー挑戦1年目から見事な適応力を見せ、先発ローテーションとして役割を果たしていた。しかし、現地6月15日の試合で緊急降板し、故障者リスト入りに。今回は、山本のここまでの活躍と、今後の展望について見ていきたい。
 

 

 

ここまでの山本由伸
 メジャー1年目の山本由伸の投球データは、日本時間6月18日時点で以下の通りとなる。
 
 14先発 74回 防御率2.92,FIP: 2.21,xERA: 3.12,K%: 27.9,BB%: 5.6
 
 防御率2.92は規定投球回を投げた投手の中ではメジャー13位、FIPは8位となっており、成績・投球内容共に前評判通りの活躍をしていると言って良い。また、韓国シリーズで大炎上した登板を除外すると防御率は2.34まで下がる。
 
 セイバーメトリクス研究家のトム・タンゴが考案したサイヤング賞予想指標によれば、山本はナショナルリーグ9位に位置していた。

 
 山本由伸の最大の魅力
 今シーズンの山本を見ていてもっとも輝く能力は「適応力」だ。今永昇太のフォーシームや、千賀晃大のフォークボールのようにユニーク・圧倒的な変化球を持つわけでもない。
 
 事実、メジャーデビューとなった韓国でのサンディエゴ・パドレス戦ではコントロールが定まらないのもあったが、初球からヒットを打たれ、一時は防御率が2桁に乗ってしまった。一部では12年3億2500万ドルの契約は大失敗との声も出るレベルであった。
 
 しかし、そこからしっかりと立て直し今ではリーグトップクラスの先発投手となった。山本、そしてドジャースのコーチ陣がどのように課題をとらえ、修正していったのか見ていきたい。





シーズン当初の山本の投球
 シーズン初戦のパドレス戦では山本が1回5失点と大炎上してしまったのは衝撃的だった。その後の山本は立て直したものの、投手史上最高の契約総額をもらった選手としては物足りない成績だった。
 
 これは単に山本の投球スタイルがメジャーに合わなかったのではないか。日本球界では「ボールを低めに集めろ」とよく叫ばれており、メジャー移籍当初は山本もフォーシームとスプリットを低めに集めることでピッチトンネル効果を期待し、加えて大きく落ちるカーブでタイミングを外す投球スタイルをとっていた。
 

 
 米メディア『The Athletic』の取材によれば、ドジャースのコーチ陣はNPBでは山本がボールを低めに集めたことを理解しており、基本は低めで良い、目線を変えカーブ・スプリットを活かすために時々高めに投げよう、というスタンスだったようだ。
 
 しかしメジャーではこれが通用しない。山本のフォーシームは縦変化量こそ平均より少し上くらいのレベルだが、低いリリースポイントの影響で打者にはフラットに見える。このためフォーシームを高めに投げ込んだ方が良い。
 
 ところが山本はフォーシームをゾーン真ん中付近に集めてしまい痛打を浴び続けてしまった。山本と似たような形のフォーシームを持つのがザック・ウィーラーとグレイソン・ロドリゲスだが、2人ともフォーシームを高めに集めることで高い空振り率を達成していることが分かる。


 


 
 エリートなスプリットとユニークなカーブが3割越えの空振り率を維持していたため、低い防御率を維持できていたものの、特に長いイニングを投げる先発投手としては必須な速球系がほとんど使い物にならない状態では、契約額に見合うだけの支配力を打者に見せつけることはできていなかった。





ドジャースコーチ陣の対策
 これらの課題に対して山本とドジャースのコーチ陣は様々な策を立てた。まずは投球スタイルの変更だ。5月に入ってからは左打者への内角へカッター、右打者に対しては内角へシンカー、外角へスライダーを導入しスプリット/カーブの縦変化だけでなく、横方向でも打者を攻められるようになった。
 
 特にスライダーについては平均以上の86マイル(約138キロ)でよく落ち曲がるため、「Stuff+」が110以上と優秀な値を記録しており、シーズン通算で空振り率33.3%と新たな決め球を見つけてしまった格好だ。

 
 
 
 また、6月に入ってから投球モーションの修正を行った。野球トレーニング施設『Tread Athletics』の共同創業者である Ben Brewster氏によればリリース前のグローブ角度を地面に対して垂直気味に向けるようになったという。これにより胴体の回転速度が上昇し、球速向上につながるという。
 
 事実、変更を加えたとされる6月7日のヤンキース戦では全球種の平均球速が軒並み1.5マイル程度上昇している。
 

 
 さらにはシーズンを通して少しずつフォーシームの高さが上がっている。フォーシームの高さに反比例する形で、打者がダメージを与える余地が少なくなっており6月の防御率が2試合で0.69と好投を続けている要因だろう。

 
フォーシームの月別平均投球高さ


 
フォーシームの月別xwOBA

 
 





山本の怪我とドジャース先発ローテーション

 現地6月15日のロイヤルズ戦で山本は球速の著しい低下を見せ、2イニングを抑えた後に降板してしまった。当初のチームの発表では「上腕三頭筋の張り」であり、大怪我による長期離脱を予防するためにも、一旦15日間の故障者リストに入れ休ませるとされていた。
 
 そして翌日、ドジャースは「右肩腱板損傷」で山本の15日間の故障者リスト入りを発表。現時点では復帰時期などは不明だが、重症でないことを願うばかりだ。
 

 
 ここまでタイラー・グラスノーに次ぐチーム2位の74回を投げた先発投手の離脱は痛手だが、ドジャースの投手陣全体で見据えれば、それほど大きな影響はないと思われる。
 
 現地水曜日には昨季ルーキーとして124.1回を投げたボビー・ミラーが復帰する予定だ。今季の初登板ではセントルイス・カージナルス相手に6回11奪三振とエース級の活躍を見せていただけに、完全復活に期待したい。
 
 また、球団レジェンドのクレイトン・カーショーが現地水曜日にドジャース傘下シングルAのランチョ・クカモンガ・クエークスにおいてリハビリ登板を開始する予定で、復帰はあと3~4週間で実現するとみられる。
 
 更に回復状況は不明だがダスティン・メイも復帰に向けて調整中だ。このように現状では頭数は足りているので山本にはプレーオフに向けた8月・9月の復帰に向けて、ゆっくり休んでほしい。



 
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【了】