第83期順位戦A級(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は1回戦が進行中。6月18日(火)は菅井竜也八段―増田康宏八段の一戦が関西将棋会館で行われました。対局の結果、相居飛車の力戦から抜け出した増田八段が95手で勝利。一度も形勢の針を譲らない快勝で自身のA級デビュー戦を白星で飾りました。

増田八段の意欲策

ともに角道を開けた3手目の局面で増田八段が工夫を見せます。玉を左に囲う手を急いだのは菅井八段が振り飛車でくるだろうと見込んでのやや挑発的な作戦。対する菅井八段はこれをとがめるべく袖飛車の策をひねり出し、盤上は早くも相居飛車力戦に突入しました。

増田八段は矢倉、菅井八段は左美濃に自玉を収めて第二次駒組みへ。矢倉の銀を立って左辺一帯に圧力をかけたのが増田八段の巧みな中盤術でした。早々に跳ねた後手の桂を狙うことで敵銀をくぎ付けにすることに成功、本格的な戦いを前に作戦勝ちを手にしました。

粘り許さぬ快勝

夕食休憩が明けると増田八段は一気の攻めでリードを拡大します。右銀を繰り出してこれを金と交換、手にした金で後手の角を圧迫。駒の損得は大きくないものの、この攻防で後手陣を守り駒の分裂した悪形に導けたのが大きく、形勢は一気に先手優勢に傾きました。

駒得が駒得を呼ぶ増田八段の攻めは最後まで途切れることがありませんでした。終局時刻は22時3分、最後は自玉が一手一手の寄りなのを認めた菅井八段が投了。序盤の模様の良さを作戦勝ちから勝勢まできれいにつないだ増田八段の快勝譜となりました。

2回戦で増田八段は中村太地八段、菅井八段は永瀬拓矢九段と顔を合わせます。

水留啓(将棋情報局)

  • 勝った増田八段は局後「A級で通用するか不安だったので(勝てて)自信になった」と笑顔を見せた

    勝った増田八段は局後「A級で通用するか不安だったので(勝てて)自信になった」と笑顔を見せた