藤井聡太叡王に伊藤匠七段が挑戦する第9期叡王戦五番勝負(主催:株式会社不二家)は、伊藤七段2勝で迎えた第4局が5月31日(金)に千葉県柏市の「柏の葉カンファレンスセンター」で行われました。対局の結果、角換わりから右玉に組み換えて攻め切った藤井叡王が132手で勝利。カド番をしのいでフルセットに持ち込みました。

角換わりシリーズに

2勝1敗と叡王奪取のチャンスを迎えた伊藤七段は得意の角換わり腰掛け銀を採用。これで本シリーズはここまで全局で角換わりとなりました。これを受けて立つ藤井叡王が選んだのは右玉に組み替える力戦形。第1局で伊藤七段が用いた作戦の優秀性を認め転用した格好です。

その第1局では先手の飛車先交換から局面が動いていたところ、本局では後手の藤井叡王が工夫を見せます。4筋に飛車を回ったのは先手の仕掛けを徹底的に封じる意味合いで、場合によっては千日手も辞さない姿勢。ともに研究の範囲内か早いペースで指し手が進みます。

藤井叡王が攻め切りタイに

穴熊に組み替えた伊藤七段はようやく2筋の歩交換を許されますが、藤井叡王はこの瞬間を狙っていました。先手の金と飛車が中途半端な位置にいるのを見越して6筋を突っかけたのが機敏な仕掛け。玉側の端攻めと十字飛車の筋を絡め、攻めのペースを掴むことに成功しました。

主導権を握った藤井叡王の指し手は勢いを増します。玉頭に嫌味をつけておいて右辺の桂頭に最後の一歩を放ったのが盤面を広く見た手筋。直後の馬作りが大きな手となり藤井叡王がリードを奪いました。感想戦ではこの手順中に先手に粘りの受けがあったとされました。

終局時刻は18時2分、最後は形勢の開きを認めた伊藤七段が投了。勝った藤井叡王は貴重な後手番勝利で2勝2敗のタイに戻しました。藤井叡王が八冠を堅持するか伊藤七段が斬り込むか、注目の第5局は6月20日(木)に山梨県甲府市の「常磐ホテル」で行われます。

水留啓(将棋情報局)

  • 藤井叡王は局後「持将棋がなければ次が最終局なので全力で悔いのないよう戦いたい」と意気込んだ(提供:日本将棋連盟)

    藤井叡王は局後「持将棋がなければ次が最終局なので全力で悔いのないよう戦いたい」と意気込んだ(提供:日本将棋連盟)