福間香奈女流王位に加藤桃子女流四段が挑戦する第35期女流王位戦五番勝負(主催:新聞三社連合)は、福間女流王位の2連勝で迎えた第3局が5月23日(木)に福岡県飯塚市の「麻生大浦荘」で行われました。対局の結果、得意の中飛車を駆使して115手で快勝した福間女流王位が6連覇を達成しました。

加藤流・序盤巧者の仕掛け

順に先手中飛車対居飛車銀冠、向かい飛車対居飛車急戦という戦型で戦われてきたシリーズ。いずれの局も中盤で攻勢に出た加藤女流四段を福間女流王位が終盤でねじ伏せる展開で推移しています。この日の福間女流王位は大方の予想通りに先手中飛車を採用しました。

銀対抗に構えた加藤女流四段が自玉を左美濃に収めたのは第1局と同じ展開ながら、角を引いて攻撃陣の拡充を優先したのは本局に向けた工夫。この角を銀と刺し違えたのは飛車先突破に向けた必要な犠牲で、まずは加藤女流四段にとって指しやすい中盤となりました。

福間流・絶品の角さばき

開き直った先手が端に手をつけた局面が分岐点でした。軽い歩突きで先手の角道を止めにいった加藤女流四段の受けは効果薄。代えては筋悪の金打ちで駒損回復を目指すのが急務で、実戦は手順に1筋を突破した福間女流王位が逆転に成功した格好です。

リードを奪った福間女流王位の指し手は冴えわたります。歩の手筋を連発した後、左辺に残された2枚の角を立て続けに飛び出したのが振り飛車党垂涎のさばき。あっという間に後手玉は受けなしです。終局時刻は16時14分、最後は詰みを認めた加藤女流四段が投了。

シリーズ3勝0敗で防衛に成功、女流王位6連覇(通算10期)とした福間女流王位は「4時間という持ち時間を自分なりに要所で使えた」と充実の様子。敗れた加藤女流四段は「全体的に課題が残るシリーズ」と総括しました。

水留啓(将棋情報局)

  • 福間女流王位の通算獲得タイトル数はこれで58と歴代首位の座はさらに堅固に(写真は棋士編入試験第2局のもの 提供:日本将棋連盟)

    福間女流王位の通算獲得タイトル数はこれで58と歴代首位の座はさらに堅固に(写真は棋士編入試験第2局のもの 提供:日本将棋連盟)