「治療アプリ」を研究開発・製造販売する医療系スタートアップ「CureApp(キュア・アップ)」が、高血圧啓発イベント「塩対応食堂」を有楽町駅前広場で5月9日から11日まで開催中だ。

5月9日に行われたメディア向け取材会にはCureApp社⻑で医師の佐竹晃太氏が登壇。高血圧治療における生活習慣改善の重要性と正しい知識について理解を深めてもらうことを目的とする本イベントにかける思いを語った。

■全国の医療機関で導入される「高血圧治療補助アプリ」を開発

日本人の三大死因である脳卒中や心臓病など、生命に関わる病気を引き起こす重大なリスクとなっている高血圧症。現在、高血圧症患者数は、潜在患者も含めて日本に4,300万人存在すると推定されており、このうち実際に治療を受けて血圧をしっかりと管理できている人は30%未満の1,200万人ともいわれているという。その原因のひとつとしては自身の高血圧症に自覚症状がないことが挙げられ、健康診断などで高血圧症を指摘されてもそのまま放置してしまう人も多いようだ。

本イベントを企画したCureApp社は、2014年に2名の医師により創業した医療系スタートアップ。治療効果が治験にて証明され医療現場で医師が患者に処方する「治療アプリ」を研究開発・製造販売する。スマホで動作する疾患治療用のソフトウェア医療機器として、禁煙治療領域と高血圧領域で世界初とされる「治療アプリ」の製造販売承認・保険適用を取得。昨年度の「日本スタートアップ大賞」では審査委員会特別賞を受賞している。

同社の社長で医師の佐竹氏は「当社は、お薬と同じように病院で使われる治療アプリ、スマホアプリによる治療法を開発・普及しているベンチャー企業です」と、自社の取り組みについて紹介した。

「生活習慣病のお薬は、一度飲み始めるとなかなかやめられず、お薬の量を減らしたくても、なかなか生活習慣の改善が難しいという患者さんも少なくありません。そこで当社ではアプリと医師のサポートを組み合わせた『血圧チャレンジプログラム』を提供しています」

保険診療で行われる「血圧チャレンジプログラム」は6ヶ月間のプログラム。医師が臨床試験を経て医療機器として認められた高血圧治療補助アプリを患者に“処方”し、使用のための処方コードを発行する。患者は自身のスマホにダウンロードしたアプリを通じ、自宅など診療の場以外でも生活習慣改善を継続できるサポートを受けられる。患者がアプリに入力した情報は医師側でも確認できるため、診療の効率化と質の向上が期待できるという。同社の高血圧治療補助アプリは2022年4月に製造販売承認取得。同年9月に保険適用され、すでに多くの高血圧患者に利用されているようだ。

「お薬による治療とアプリを使ったプログラムによる治療というかたちで、一人ひとりの患者さんに合わせて新しい治療のオプションを提供しています。当社の高血圧治療補助アプリは現在、北海道から沖縄まで全都道府県の病院で利用が可能で、全国1,000を超える医療機関で導入されています」

■食塩摂取量2g未満でもおいしいメニューを開発

そうした中で同社は5月17日の世界高血圧デーに合わせて「塩対応食堂」を開催。ガイドラインに沿い、1食あたり食塩摂取量が2g未満の減塩料理をふるまうキッチンカーを3日間限定でオープンする。

「塩対応という言葉の素っ気なさと、皆様に健康になってもらいたいという温かみのあるイベントにしたいという主旨のギャップを楽しんでいただきたく、このイベントを開催させていただきました」

同社の高血圧治療補助アプリは、高血圧についての知識や実生活に即した具体的な行動を提示し、正しい生活習慣を定着させ血圧を下げることをサポートする同社の高血圧治療補助アプリは、「知識の習得」「行動の実践」「行動の定着」の3つのステップで構成されている。

本イベントではステップ1「知識の習得」の一部コンテンツを体験可能。普段の食生活に関する簡単な質問に答えると、入力内容にあわせてアプリから普段の自身の塩分摂取レベルのフィードバックがもらえる。

その後、高血圧症患者に推奨される1食分の塩分摂取量である2g未満に抑えた塩対応料理を無償で楽しめる。5月9日から3日間にわたって提供される塩対応料理は、「“塩対応”どんぶり」と「“塩対応”うどん」の2種類を用意した(写真は半人前サイズ。実際の試食では一人1メニューの提供)。

塩分量1.47g の「“塩対応”どんぶり」は、すりごまを混ぜ込んだ玄米ご飯に、炒り卵と鶏そぼろ、グリンピースを乗せ、花形にんじんを添えた彩豊かな三色そぼろ丼。玄米ご飯にすりごまを混ぜ込むことで香りを出し、鶏そぼろは減塩顆粒だしとごま油で炒めることで旨味が広がる味付けに。卵には塩の代わりに減塩顆粒だしを使用することで”風味”を演出している。

塩分量1.92gという「“塩対応”うどん」は、かつお節の豊かな香りと、旨味が詰まった出汁、そして椎茸の旨味が染み出た香り高い風味が決め手のうどん。具材は満足感のあるゆで卵と、出汁が染みた椎茸や薄揚げ、さやえんどうで、塩分0の麺を使用することで塩分量を大きく抑えた。

これらの塩対応メニューは、食を医学的な観点から研究し、レシピ本も複数出版されている伊藤明子先生が開発。日本高血圧学会 減塩・栄養委員会委員である日下美穂先生が監修している。11日は12時から19時までの開催予定だが、提供数は各日約300食でなくなり次第終了となる。

イベントスペースでは血圧測定も可能だ。高血圧について考えるきっかけとして、美味しい塩対応料理を楽しんでみては。