藤井聡太棋聖への挑戦権を争うヒューリック杯第95期棋聖戦(主催:産経新聞社、日本将棋連盟)は、4月22日(月)に挑戦者決定戦の佐藤天彦九段―山崎隆之八段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、終盤の競り合いから抜け出した山崎八段が182手で勝利。自身15年ぶりとなるタイトル戦挑戦を決めました。

大山流の手厚い振り飛車

先手となった佐藤九段は向かい飛車を志向。後手が態度を保留していたところで8筋に角を覗いたのは異例ともいえる一手で、手損覚悟で後手に形を決めさせるこの注文により、戦型は対抗形の急戦に落ち着きました。後手の山崎八段も舟囲いに組んで戦いの時を待ちます。

6筋で歩がぶつかって中盤戦開始。居飛車の抑え込みが決まるかと思われた局面から佐藤九段の指し手が光りました。大駒のさばきを目指してフワッと角を浮いたのがその手始め。4筋に繰り出した左銀との協力で、中央一体は一瞬のうちに振り飛車の勢力圏となりました。

ちょいワル逆転術光る

局後「中盤から少し苦しくした」と振り返った山崎八段ですが、玉側の端歩に手を付け相手に楽をさせません。さらには自陣に引き付けた馬の守備力で局面の泥沼化に成功。戦いが夜を迎えると、さばき中心の中盤戦とは一転して盤上は総力戦の様相を呈してきました。

両者秒読みのなか佐藤九段が先に動きます。自陣に眠る飛車を左辺に大転換したのは攻め合いを望む勝負手でしたが、対して山崎八段が堂々と竜で銀を外したのが読みの入った好手。竜を金銀桂との三枚換えに持ち込んだ山崎八段が盤上の体力勝負で一歩リードしました。

ついに挑戦権獲得

優位に立ってからの山崎八段の指し手は正確でした。自陣四段目に銀を打ち付けて馬をしかりつけたのが激辛の指し回し。手順に空中要塞を築いて再逆転の可能性が限りなく低くなりました。終局時刻は20時46分、攻防ともに見込みなしと認めた佐藤九段が投了。

2009年の王座戦以来となるタイトル挑戦を決めた山崎八段は「実力差はあるが、最後まで(結末が)わからないような将棋にしたい」と語りました。藤井聡太棋聖との間で争われる五番勝負は6月6日(木)に千葉県木更津市の「龍宮城スパホテル三日月」で開幕します。

水留啓(将棋情報局)

  • タイトル挑戦について「最後の舞台だと思ってがんばりたい」と語った山崎八段

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