将棋AIの強さを競うオンライン大会「第2回 マイナビニュース杯電竜戦ハードウェア統一戦」(主催:NPO法人AI電竜戦プロジェクト)は決勝戦が3月17日(日)に行われました。対局の結果、1勝1敗のタイで迎えた決着局を後手番引き分けに持ち込んだ「BURNING BRIDGES」が「水匠電竜」を制して初優勝を飾りました。

水匠の連覇なるか

将棋AIの純粋な強さを競う本大会は、各ソフトが統一されたハードウェア条件の下での対局を重ね優勝を争うもの。第4回電竜戦と第4回世界将棋AI電竜戦TSEC(指定局面戦)で上位につけた計16チームによる総当たりの予選が今年1月から行われてきました。

まず決勝にコマを進めたのは「水匠電竜」(電竜は称号、開発者:たややん)。独自の角換わり定跡を武器に安定した戦いぶりを披露。もう一方の勝ち上がりはBURNING BRIDGES(以下「BB」、開発者:Renzo)。相掛かりを中心に先手番から攻め切る展開を得意とします。

BBが後手番で先勝

水匠先手で始まった初戦、角換わり腰掛け銀から後手のBBは徹底的な待機策を敷きます。水匠は千日手模様の打開を図りますが、受け続けるBBが放った自陣角が攻防手となりこのままBBが制勝。解説の中村太地八段も「水匠が先手で負けることが」と驚きを隠せません。

対局の合間には本大会協賛・協力のインテル株式会社より矢内洋祐さんが登壇し、統合型NPU(GPU、CPUに並ぶエンジン。AIを用いて長時間のパフォーマンスに適合)や現状のデータセンターに関する講演を披露。大会関係者はこれに興味深く聞き入りました。

決着は最終局へ

BB先手で迎えた2局目は相掛かりへ。盤上中央に漂う先手の飛車をめぐってギリギリの攻防戦が始まりました。この飛車を切って猛攻に出たBBですがその攻めは徐々に勢いを失います。最後は駒を蓄えた後手の水匠が万全の指し回しで勝利。スコアをタイに戻します。

先手有利の傾向が顕著なコンピュータ将棋において後手側2連勝の展開は意外ですが、これには先手番の持ち時間を30分に半減させる本大会特有のルールが作用したと推測されます。決着局となる第3局では手番の入札制が行われ水匠が先手に(持ち時間35分減)。

どんでん返しの結末

第3局は水匠が得意の角換わり腰掛け銀から順調にリードを拡大しますが最終盤にドラマが待っていました。評価値上は先手優勢ながら、寄せより入玉を優先したことで紛れが発生。「引き分け後手有利」のルールにより水匠は約100手以内に勝ち切る必要があります。

開始から512手以内に決着しなければ引き分けに持ち込めるBBはなんとか自玉を詰まされないよう粘りの指し回しを見せます。解説者も一喜一憂の熱戦を制したのはBBでした。結局規定手数以内に決着することはなく、1勝1敗1分と意外な形でBBの優勝が決定。

優勝を決めたBBの開発者・Renzoさんは「この結果は私が一番驚いています」と喜びを語りました。

水留啓(将棋情報局)

  • SNS上は「まさかこんな結末になるとは」「BBすごい」と驚きの声であふれた(画面は「YouTube電竜戦公式チャンネル」より)

    SNS上は「まさかこんな結末になるとは」「BBすごい」と驚きの声であふれた(画面は「YouTube電竜戦公式チャンネル」より)