藤井聡太棋王に伊藤匠七段が挑戦する第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負(共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟主催)は、第3局が3月3日(日)に新潟県新潟市の「新潟グランドホテル」で行われました。対局の結果、角換わり腰掛け銀の局地戦から抜け出した藤井棋王が105手で勝利。3勝目を挙げて連覇まであと1勝と迫りました。

藤井棋王の用意

藤井棋王の1勝1分で迎えた本局は今シリーズ3度目の角換わり腰掛け銀に。伊藤七段の作戦に注目が集まるなか、先に工夫を見せたのは意外にも先手の藤井棋王のほうでした。右金を5筋に上がったのは旧型とされる布陣で、続く単騎の桂跳ねで早くも戦いに入ります。

細かな組み合わせの違いで局面は早くも前例のない局面に。この仕掛けを予想していなかったという伊藤七段は連続長考を余儀なくされます。先手陣に馬を作って右辺からの「もたれ戦術」に出たのは実戦的な対処ながら、本局はここからの藤井棋王の指し手が冴えました。

局地戦から快勝

丁寧に自陣のキズを消した藤井棋王は満を持して反撃を開始します。3筋にいる後手の馬めがけて右金を繰り出したのが単純ながら厳しい狙い筋。続く角打ちが基本に忠実な数の攻めとなり藤井棋王が右辺の勢力圏争いを制した形です。直後に決め手が残っていました。

伊藤七段は金を使って敵飛の押さえ込みに活路を見出しますが、この飛車を切り飛ばして二枚換えに出たのが藤井棋王読み切りの寄せ。その後、後手の玉頭には藤井棋王の桂香が次々と殺到し、あっという間に包囲網が完成しました。終局時刻は18時53分、最後は自玉の寄りを認めた伊藤七段が投了。

快勝で先手番を制した藤井棋王はこれでシリーズ2勝1分として防衛まであと1勝に迫りました。敗れた伊藤七段は「馬が負担になる展開で少し苦しい将棋だった」と総括。注目の第4局は3月17日(日)に栃木県日光市の「日光きぬ川スパホテル三日月」で行われます。

水留啓(将棋情報局)

  • 藤井棋王は局後「前例は多くない形」と前置きしつつ用意の作戦だったことを明かした(提供:日本将棋連盟)

    藤井棋王は局後「前例は多くない形」と前置きしつつ用意の作戦だったことを明かした(提供:日本将棋連盟)