エン・ジャパンは、同社が運営する日本最大級の派遣情報サイト「エン派遣」にて、2月21日に、「年収の壁」「年収の壁・支援強化パッケージ」 についてのアンケート調査の結果を発表した。本調査は、2023年12月1日~2024年1月3日までの期間に、「エン派遣」のユーザー2,737人を対象にインターネット形式で実施された。

  • 「年収の壁」という言葉を知っていましたか?

「年収の壁」という言葉の認知度を調査したところ、「詳細まで知っていた」と回答した人の割合は36%、「なんとなく知っていた」は57%であった。

  • 現在扶養内で働いている方/離職中で扶養内で働くことを希望している方に伺います。あなたにとっての年収の壁はいくらですか?

現在扶養内で働いている人や離職中で扶養内で働くことを希望している人に対し、「あなたにとっての年収の壁はいくらですか?」と尋ねたところ、最も多かったのは「106万円」(48%)という回答であった。

  • 現在扶養内で働いている方に伺います。これまでに年収の壁となる金額を超えないよう就業調整を行なったことはありますか?

現在扶養内で働いている人に対し、「これまでに年収の壁となる金額を超えないよう就業調整を行なったことはありますか?」と尋ねたところ、全体では56%が「ある」と回答した。年収の壁が106万円以内の人は62%、130万円以内の人は69%と、多くの人が調整していることがわかった。

  • 現在扶養内で働いている方に伺います。手取りが減らないとしたら、年収の壁を超えて働きたいと思いますか?

あわせて、「手取りが減らないとしたら、年収の壁を超えて働きたいと思いますか?」と尋ねたところ、67%の人が「働きたい」と回答した。

「働きたい」と回答した人の理由として、「現在の設定されている年収の壁では、生活はできても将来的な貯蓄までは手が回らない。心に余裕をもって生活するためにも働きたい。」(28歳女性)や「損にならない働き方ができるのであれば、それが良いと思うから。また、いつか扶養を外れることを目標に働けたらと思うので制限がないのは助かる。」(36歳女性)などのコメントが挙げられた。

「働きたいが現実には無理」と回答した人のコメントには、「子供が3歳未満で保育料がかかり預けられない。長時間働いても保育料の出費があれば働く意味がない。」(29歳女性)や「家族の通院補助や子供の習い事の準備・送迎があり、現実的に時間の確保が不可能なため。」(37歳男性)などの意見が挙げられた。

一方、「働きたいと思わない」と回答した人のコメントとして、「できる事なら育児に専念したいから。」(38歳女性)、「現在の仕事量に満足しているから」(39歳男性)という意見が挙げられた。

  • 「年収の壁」対策として2023年10月より開始された政府による“年収の壁・支援強化パッケージ”について知っていましたか?

2023年10月から政府が開始した「年収の壁・支援強化パッケージ」について知っていたかと尋ねたところ、「詳細まで知っていた」と回答した人は1割に留まった。「年収の壁・支援強化パッケージ」とは、企業への助成金支給や、一時的な上限年収の超過であれば扶養内に留まれる(最大2年)ようにすることで、106万円や130万円の年収の壁を超えて働いた場合も手取り額が減らないようにする制度のことをいう。

  • 「年収の壁・支援強化パッケージ」について、賛成ですか? 反対ですか?

詳細を伝えたうえで、「年収の壁・支援強化パッケージ」に賛成か反対か尋ねたところ、73%が「賛成」(「賛成」が23%、「どちらかといえば賛成」が50%)と回答した。

「賛成」または「どちらかといえば賛成」と回答した人の理由として、「正社員で働きたいけれど融通が効かないシフトや勤務場所などに悩んでいましたが、パートでフルタイムで働いて扶養から外れるのは勿体ないとも思っていたので、有難い。」(29歳女性)や「生活スタイルや家族構成によって働き方はさまざまなので、その中でもより良く働けるように選択肢があることは良いと思う。」(33歳男性)といったコメントが挙げられた。

一方、「反対」または「どちらかというと反対」と回答した人の理由として、「年収の壁を低くする前に、もっと女性が働ける機会を設け、働きやすい社会にすべきだし、そのためには男性も育児参加が当たり前の社会であるべきである。」(30歳男性)、「全ての企業が対応しているわけでは無いし、ずっと続くものでもないから。」(34歳女性)といったコメントが挙げられた。

  • 現在、年収上限106万円もしくは130万円の扶養内で働いている方に伺います。「年収の壁・支援強化パッケージ」の利用状況について教えてください。

現在、年収上限106万円もしくは130万円の扶養内で働いている方に、「年収の壁・支援強化パッケージ」の利用状況について尋ねると、「すでに利用している」はそれぞれ1%、「利用を検討している」と回答した人も、上限年収106万円の人が23%、上限年収130万円の人は36%と、「利用・検討ともにしていない」の回答を下回る結果となった。

「年収の壁・支援強化パッケージ」の利用を検討している背景として、「物価高で家計はどんどん苦しくなるのに、世帯年収は上がらない、お金が貯まらないので、少しでも多く稼いでおきたい。」(32歳男性)や「フルタイムで働くことは難しいが、もっと勤務時間を増やしたいと思っているので。」(40歳女性)というコメントが挙げられた。

「年収の壁・支援強化パッケージ」の利用における不安については、「2年経過後の働き方はどうなるのかわからず不安。」(31歳男性)、「これからかさんでいく教育費を見据えて働ける時に働いて稼いでおきたいが、働く時間が増えることで子どもの負担が増えてしまうことが心配。」(41歳女性)といったコメントが挙げられた。