本記事では三文字の熟語を、かっこよさや面白さ、美しさなどのタイプ別に分けて紹介します。
二文字の熟語や四字熟語に比べると、三字熟語は少しマイナーな存在のように感じられるかもしれません。しかし、簡潔ながらも深い意味がある三文字の熟語は、覚えておけば表現力豊かな文章作りや会話に役立ちますよ。
【三文字の熟語】うまくハマるとかっこいい三文字熟語と意味
ここでは意味がかっこいい、音の響きがかっこいい、といった三文字熟語をご紹介しましょう。覚えておいてここぞというときに使えば、印象的な表現になるかもしれませんよ。
韋駄天(いだてん)
仏教における守護神で、元々はバラモン教の神。南方を守護する増長天(ぞうちょうてん)に属する、八将の一神。
足の速い神とされているため、「韋駄天のように走る」「韋駄天の○○(名前)」などの形で、足が速いことの例えとしてよく用いられます。
怪気炎(かいきえん)
あまりに調子が良すぎて、本当かどうか疑わしい意気を表す言葉です。主に「怪気炎をあげる」の形で使われます。
通常の盛んな意気込み、威勢の良いことを「気炎をあげる」と表すことと対応させて考えるとわかりやすいでしょう。
影武者(かげむしゃ)
敵の目を欺くために、武将などの身代わりを務めた武者のことです。表にいる人を助ける人物、裏から物事を操る人物を表すこともあります。
麒麟児(きりんじ)
才能の傑出した、将来性のある若者のことです。麒麟は中国の架空の生物で、その出現は聖人が現れる前兆であると考えられています。
外連味(けれんみ)
はったりやごまかしをするところを表します。「外連味たっぷりの文章」のように使います。「外連」は歌舞伎や人形浄瑠璃での奇抜な演出のことです。
四天王(してんのう)
元々は仏教における、4人からなる守護神のことです。転じて、ある部門において、また臣下や弟子の中で最も優れた4人を表すこともあります。
真善美(しんぜんび)
人間として理想的な、普遍妥当の価値を表現した言葉です。「真」は認識上の真、「善」は倫理・道徳的な善、「美」は審美上の美しさを表しています。
千里眼(せんりがん)
遠方や将来のことを見通す能力です。「里」はこの場合長さの単位で、「千里」は非常に遠いことを比喩的に表すときによく用いられる表現です。
天地人(てんちじん)
宇宙の万物を表す言葉です。また「天」「地」「人」の順で、物事の順位を表すのに使われることもあります。
登竜門(とうりゅうもん)
立身出世に必要となる難関や試練を表します。中国の黄河にある急流「竜門」を上った鯉(こい)は竜になる、という伝説から生まれた言葉です。
伏魔殿(ふくまでん)
魔物が潜んでいる、立派な建物のことです。そこから、見た目は良いが中は悪事や陰謀がはびこるような、不気味な場所のことも指します。
不世出(ふせいしゅつ)
並び立つものがいないほどの、稀有な能力を持つことを表す言葉です。
不退転(ふたいてん)
逆境でも信念を貫く心、決してくじけない心や態度を表した言葉です。「不退転の決意」といった形で使われます。
【三文字の熟語】日常生活で使える三文字熟語と意味
ここでは新聞や雑誌などのメディアで目にしたり、普段の会話などで聞いたりすることの多い三文字熟語を集めました。見たことはあるけれども意味が曖昧な言葉もあるかもしれません。一度目を通してみてはいかがでしょう。
色眼鏡(いろめがね)
元々は色の付いたガラスをはめた、サングラスなどのメガネを表す言葉です。そこから、偏見や先入観を持って物事を見るときにも用いるようになりました。
有頂天(うちょうてん)
何かに成功して満足の絶頂にあることや、夢中であることを表します。元々は仏教用語で、高次の世界を表す言葉です。
大御所(おおごしょ)
引退してもなお大きな影響力を持つ人を表す言葉です。また、引退していない人に対しても影響力が大きいという意味で使われることがあります。
十八番(おはこ・じゅうはちばん)
その人が最も得意とする物事を表す言葉で、「おはこ」とも、そのまま「じゅうはちばん」とも読みます。
歌舞伎の市川家が得意とした歌舞伎18種から来ていて、「おはこ」と呼ぶのはその台本を箱に入れて保管したからという説があります。
金字塔(きんじとう)
金字塔は、「金」の字に形が似ているエジプトのピラミッドを表す熟語です。そこからピラミッドのように長く後世に残る、偉大な業績のことも「金字塔」と呼ばれるようになりました。
下馬評(げばひょう)
第三者によるうわさ話や非公式の批評、予想を表す言葉です。元は下馬先と呼ばれる馬を下りるべき場所で、主人を待つ従者同士がするうわさ話を指しました。
紅一点(こういってん)
多くのものの中で一つだけ目立つものがあることを表す言葉です。特に多くの男性の中に女性が一人だけいる場合に使われます。
金輪際(こんりんざい)
元々は仏教で大地の最底辺を表す言葉です。そこから物事の限界を表すようになり、特に「金輪際~ない」のように否定を伴って、「決して~ない」という意味で使われます。
修羅場(しゅらば・しゅらじょう)
激しい戦闘が行われる場所を指します。元は仏教用語で阿修羅(あしゅら)王と帝釈天(たいしゃくてん)が戦った場所です。現在では激しいけんかや対立を表すのによく使われています。
太鼓判(たいこばん)
太鼓のように大きなはんこで押した印のことです。そこから、しっかりとした保証があることを表すようになりました。
天王山(てんのうざん)
京都府南部に実在する丘の名前で、羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)が明智光秀を破った場所です。そこから勝敗や運命の重要な分かれ目も表すようになりました。
檜舞台(ひのきぶたい)
ヒノキの木材で床を張った舞台のことです。大きな劇場で使われることが多いため、そこから比喩的に晴れの舞台を意味します。
風物詩(ふうぶつし)
元は風景や季節をうたった詩のことです。そこから季節を感じさせる物事を表すようになりました。
胸算用(むなざんよう・むなさんよう)
心の中で計算し見積もりを立てることです。胸勘定(むなかんじょう)とも言います。
意味の近い言葉に、実現するかどうかもわからないのに、それを当てにして計画を立てることを表す「皮算用(かわざんよう)」があります。
【三文字の熟語】文章にユーモアをプラスする面白い三文字熟語と意味
ここでは意味や響き、漢字、語源などが面白い三文字の熟語をそろえました。取り入れるとユーモアのある文章が書けますよ。
天邪鬼(あまのじゃく)
元は民話に登場する悪賢い鬼で、ひねくれた人のことも表します。他に仏法守護神に踏みつけられている子鬼も天邪鬼と呼ばれます。
安本丹(あんぽんたん)
愚かなことや間抜けなこと、またはそういった人を意味する熟語です。語源には「アホウ」から転じた「アホタラ」から、薬の「反魂丹」から転化した、などの説などが存在します。
響きが面白くかわいらしい印象もありますが、他人に対して使うと悪口になるので気を付けましょう。
兎兵法(うさぎへいほう)
下手な策略を巡らして失敗することを意味する言葉です。ワニザメをうまく利用しようとして結局丸裸にされ、潮を浴びて痛い目に遭ったという、因幡の白兎の神話から来ています。
社用族(しゃようぞく)
社用を口実にして遊興費などを会社の経費で払う人のことです。没落しつつある上流階級を表す「斜陽族」の語呂合わせとして作られました。
素寒貧(すかんぴん)
非常に貧乏でお金がまったくない状態や人を表します。響きが面白く、漢字から意味もわかりやすい熟語です。
素頓狂(すっとんきょう)
非常に間が抜けていることを表す言葉で、「素っ頓狂」とも書きます。場にそぐわない、調子外れの言動を「頓狂」といい、それを強調した熟語です。
「思わず素頓狂な声を出してしまった」などの形で使います。なお他人の人柄に対して使うと悪口になるので気を付けましょう。
太平楽(たいへいらく)
好きなことを言ってのんきにしていることを表す熟語です。元々は雅楽の曲名で、その曲が落ち着いてゆったりとした曲調であることから来ています。
棚牡丹(たなぼた)
「棚から牡丹餅(ぼたもち)」を略した熟語で、思いがけない幸運を得ることを表します。
珍紛漢(ちんぷんかん・ちんぶんかん)
何が何だか全くわからないことを表す熟語で、漢字は当て字です。
由来については、儒者の漢語をひやかした説や、長崎の外国人の言葉をまねした説など諸説あります。
出鱈目(でたらめ)
筋が通らないことや、根拠がなくいい加減なことを表す言葉です。「鱈」の漢字は当て字で意味はなく、サイコロの出た目で物事を決めることが由来という説があります。
唐変木(とうへんぼく)
「まぬけ」や「わからずや」などと同じように、気が利かない人、物分かりの悪い人をののしるときに使う言葉です。
「あの時の私は唐変木だった」のように自虐的に使うのは問題無いですが、他人に対して使うと悪口になるので注意しましょう。
頓珍漢(とんちんかん)
つじつまが合わないことや、まぬけなことを表す言葉です。鍛冶屋が二人で槌を打つとき、息が合っていないので音がそろわず、ちぐはぐになっている様子を表したのが由来とされます。
「頓珍漢なことを言ってしまった」のような形で使用します。
飲兵衛・呑兵衛(のんべえ)
大酒飲みの人を、人名のよう表現した言葉です。「飲み助」とほぼ同じ意味です。
似た言葉の「のんだくれ」は、大酒を飲んで大層酔っぱらうことを指します。
昼行灯(ひるあんどん)
ぼんやりした人や役に立たない人のことです。昼間に灯した行灯は、うすぼんやりとして役に立たないことから来ています。
こちらも他人に対して使うと悪口になるので気を付けましょう。
朴念仁(ぼくねんじん)
無口で無愛想な人や、道理のわからない人を表す熟語です。特に恋愛にからんで用いられるときは、相手の好意に気付かない鈍い人のことを意味します。
こちらも他人に対して使うと悪口になる可能性があるので注意してください。
【三文字の熟語】表現力がアップする美しい三文字熟語と意味
ここでは、日本語の美しさを感じられるような三文字の熟語をご紹介しましょう。特に文学的な表現が必要な際に活用してみてくださいね。季語となっているものも多く、俳句を作る際にも役立ちます。
十六夜(いざよい・じゅうろくや)
陰暦の16日の夜、特に8月16日の夜のことや、その空に昇った月を表す熟語です。
「いざよひ(い)」は躊躇うことという意味で、満月(十五夜)の翌日は月が出るのがやや遅くなることから来ているといわれています。秋の季語です。
朧月夜(おぼろづきよ)
朧月(おぼろづき)が出ている夜のことです。朧月とは霧やもやでかすんで見える春の月で、朧月、朧月夜は、共に春の季語でもあります。
川逍遥(かわしょうよう・かわじょうよう)
川辺を散策することやほとりで遊ぶこと、川に舟を浮かべて遊ぶことを表します。
催花雨(さいかう)
春の花の咲き出す頃に降る雨を表します。花に早く咲くよう催促している雨という意味です。
五月雨(さみだれ)
陰暦5月頃に降る長雨、つまり梅雨時の雨のことです。また、だらだらと繰り返すような物事の例えにも使われます。夏の季語です。
蜃気楼(しんきろう)
大気の密度差で光が屈折し、遠くの建物が浮き上がったり逆さまになったりしたように見える現象を指します。
蜃(大ハマグリ)が気を吐いて空に楼閣を描くという伝説からできた熟語です。春の季語です。
雪月花(せつげっか・せつげつか)
季節の趣ある美しさを表す総称です。特に冬の雪、秋の月、春の花です。
蝉時雨(せみしぐれ)
多くの蝉(せみ)が鳴く声を、時雨、つまり秋の終わりの通り雨に例えた言葉です。ちなみに秋の虫の鳴き声は「虫時雨」と呼ばれます。それぞれ夏と秋の季語です。
手弱女(たおやめ)
たおやか、つまり上品で優美な女性を表す言葉です。対義語は益荒男(ますらお)で、特に古典文学で用いられます。
夏座敷(なつざしき)
夏に涼を取るため、ふすまや障子などを取り外して風通しをよくした座敷のことです。夏の季語です。
花吹雪(はなふぶき)
桜の花びらが吹雪のように散ることです。春の季語でもあります。
冬化粧(ふゆげしょう)
雪が積もり、まるでおしろいをつけて化粧をしたように真っ白になることです。
星月夜(ほしづきよ)
星の光が月のように明るい夜のことで、秋の季語です。オランダの画家ゴッホが描いた絵画の名前としても知られています。
不如帰(ほととぎす・ふじょき)
カッコウ科の鳥を表す熟語です。「ほととぎす」は他にも「時鳥」「子規」「杜鵑」などと書きます。
「不如帰」と書くのは中国の蜀の望帝・杜宇が国を追われ、亡くなってからホトトギスに姿を変えて「不如帰(帰りたい)」と泣いたという故事に由来します。夏の季語です。
三文字の熟語を使って、豊かな日本語表現を
本記事では、さまざまな三文字の熟語を紹介しました。これらの言葉は日本語の豊かさを感じさせるものばかりです。三文字の熟語は二文字の熟語や四字熟語とは異なる独自のリズムを持っており、その中には感性や価値観が込められています。
それらを理解し、実際のコミュニケーションや表現にどのように生かすかを考えれば、今以上に深く豊かな日本語表現が身に付くことでしょう。日本語の奥深さと魅力を引き出すために、これらの熟語を積極的に活用してみてください。