奈良県で産業用砥石の製造・販売を行っている国広産業。同社は産業用砥石を必要とする業種にとって、欠かせないビジネスパートナーであり、いわゆるニッチトップ企業でもある。そんな国広産業がBtoBでの成功を足掛かりに、BtoCの領域へと進出し始めたのは昨年の夏からのこと。第一弾である産業用砥石を加工した「スマホスピーカー」は発表以来大人気となり、予想を上回る販売数となった。そして、2024年2月、国広産業と協業しているNTT DXパートナーは最新モデルの用意をしているという話が舞い込んだ。さっそく、話を伺ってきたので紹介しよう。
国広産業とNTT DXパートナーは奈良県の施策「デジタルマーケティング伴走支援事業」に採択されたことをきっかけに協業を開始。BtoC向けの製品開発やECサイトの構築などを進めてきた。最初の製品となった人造石製の「stone speaker」のリリースへ向け、両社は全面的に協力し、プロジェクトを成功へ導いた。
産業用砥石から生まれたスマホスピーカー!? BtoBからBtoCへ——国広産業とNTT DXパートナーが協業
——前回の「stone speaker」は、独特の質感と豊かな音の広がりが魅力の製品でしたが大好評だったそうですね。
影石 私たちとしても一般のみなさまに対してアプローチさせていただいた初めての取り組みでしたから、どれだけの方々に響くのか全く予想ができませんでした。ただし、自分たちとしてはそれなりのコンセプトを持って創り上げたものでしたから、ある程度自信はありましたが、内心緊張しましたね。実際に販売を開始して見ると予想以上の反響があり、多くの方々に楽しめていただけたようで、本当に良かったと感じています。
朴 販売先のECサイト「Makuake」でも総合ランキングで上位に食い込むなど、大きな応援をいただき、結果もしっかり出すことができました。クラウドファンディングの達成率も約2400%(※取材時の達成率)と素晴らしい数字で、非常に大きな成功体験をさせていただいたと思っています。
発表以来、多くのユーザーから支持を集めた「stone speaker」
——どのようなところがユーザーに人気だったのでしょう?
影石 私たちの工場で作られる人工の研磨石を素材とすることで得られる「石」の持つ質感や、思わず触りたくなるような雰囲気が良かったという意見が多かったですね。そのほか、インテリアによく映えるという意見もありました。スマホスピーカーとしてもジャズから落語まで幅広く愛用されているという結果も分かりました。
朴 影石社長がおっしゃるように、石という暖かみのある素材感が好みという方が目立ちましたね。例えば、ナチュラルな素材を部屋のインテリアに組み込みたいと考える方は多いですが、実際に「石」を置くとなるとちょうどよいサイズ感のものがあまりなく、あったとしても大理石のような高価なものが多いのが実際です。しかし、研磨石の製造に深い造詣のある国広産業さんなら、コンパクトでリーズナブルな製品を創り出すことができます。そういった意味で、国広産業さんの素材の持つ魅力にはまだまだ開発の余地があると思っています。
噂の第二弾は「アロマストーン」!
——今回は第二弾となる製品ができたと伺っています。さっそくどのようなものなのか教えていただけますか?
影石 今回リリースすることになったのはこちらの「アロマストーン」です。用途に応じた形状違いの製品を3種類、それぞれに2カラー用意していますので、合計で6タイプがございます。
アロマストーンは様々な形で販売されていますが、ユーザーの声を聴いたところ、「香りが続かない」「そもそも香らない」といったケースがあることが分かってきました。ですから、私たちでその原因を究明し、自分たちの持つ技術でそれが解決できないかと考えたのが最初の入り口でした。
——つまり、香りが必ず広がってくれるアロマストーンということですね。
影石 はい。私たちはもともと研磨石を扱う会社ですから、石を使って擦る要素を製品に入れ込むことは得意です。ですから、アロマオイルを調合して私たちのアロマストーンで「擦る」ことで新しい香りとの出会いをスタートさせていただければよいなという思いを込めて製品を開発してゆきました。
朴 「石から香りが溢れ出す」というコンセプトで製品化を進めてきました。様々な角度から分析を進めていったところ、2つのポイントがあることが分かってきました。ひとつはアロマオイルの広がる面積、もうひとつは石自体にアロマが吸収されないこと。この2つのポイントによって、香りの広がりも、⾹りが残る時間も変わってくるのです。
自然石の中にはオイルを吸ってしまうものもたくさんありました。また、オイルを石の上に垂らすだけで、面積を稼げないといった製品も多かったです。これらの問題を解決し、オイルをきちんと気化するようにするには、「硯」や「薬研(やげん)」(漢方薬の薬種などを細かく砕くための、舟形で中が深くくぼんだ器具)のように、ものを擂り合わせるような動作を再現するといった方法を取れば良かったのです。
また、オイルを吸わない石に関しては国広産業さんのノウハウで創り出すことができるので、両者の特長を合わせたデザインを作り込んでいき、現在の形になったというわけです。
実際にいくつかのオイルで試していただいたところ、取材をおこなった会議室が素晴らしい香りで包まれ、室内の雰囲気もがらりと変わった。この効果をぜひ実体験していただきたい
——それがこちらの3種類のデザインなのですね?それぞれ簡単に説明いただけますか?
影石 最初のタイプはオーソドックスな「硯」をイメージしたタイプですね。台座を硯に見立ててオイルを垂らして、石でゆっくりとこすると香りが立ちます。
もうひとつ似たような形のものがありますが、こちらは硯を傾けて置くことができるタイプです。アロマストーンは寝室のサイドテーブルに置くという方も多いので、自分が寝る方向へ表面積が大きい部分を向けられるように設置できます。
最後のものは形をみただけでお分かりいただけると思いますが、薬研をイメージさせたモデルですね。より一層、調合する、自分で創るといった感覚が得やすく、好奇心をくすぐるデザインを採用しました。
この3種類の中でお好みのものを選んでいただければと考えています。
朴 じつはこの製品開発には面白いエピソードがあって、本当はこの3つのタイプが出来上がった後に、ひとつに絞ってリリースしようと考えていたのです。それで100名以上のユーザーにアンケートを取ったところ、本当にきれいに33%ずつという結果が出たのです。これには大変驚き、ここまできれいに分かれるのであれば、製品化した際にもみなさんのお好みで選んでもらっても良いのではないかということで、3つのモデルをすべてリリースすることにしました。
協業も順調! 今後の製品開発にも期待
——国広産業さんとNTT DXパートナーさんが協業されるようになってから2作目となりました。stone speakerと比較して、協力体制に変化はありましたか?
朴 今回とても強く感じたのはコミュニケーションのスムーズさですね。お互いの意思疎通のスピードはかなり速くなりました。このプロジェクトには国広産業さんのスタッフが大勢関わっていますが、初回の製品開発とその成功を受けて、それぞれの立場の方が自分は何をすればよいのか、お互いにどのように連携すればよいのか理解が進んだのだと思います。
影石 私たちの作る研磨石には企業秘密的なノウハウも非常に多く含まれます。お互いの信頼関係が積み重なるにつれ、そういったところをさらけ出すこともできるようになり、意思疎通も広がってきたと私も思います。ですから、お互いのコミュニケーションはより深くなったという点で一致を見ています。
製品開発に関しては、社内とのやり取りももちろんしますが、それだけだと自分たちの領域である研磨石という枠をなかなか超えられない。そこを朴さんを中心としたNTT DXパートナーのみなさんが超えさせてくれると感じています。社内のメンバーもNTT DXパートナーの方々も、ディスカッションを重ねるごとに連携が強くなっていると思います。ぜひ今後も積極的に関わっていただければと考えています。
——最後に、第二弾の製品となる「アロマストーン」に興味が湧いたという読者に一言お願いします。
影石 国広産業のBtoC向けブランド「stone+」では、「暮らしに石を。ときめきを。」というキャッチフレーズを掲げています。みなさんがそれぞれ持っているライフスタイルの中に、「石の質感」「五感で感じられるもの」を詰め込んだ「アロマストーン」で心にときめきを感じていただければと思っています。
朴 今回の製品は従来のアロマストーンやアロマディフューザーをお持ちの方にぜひ手に取っていただきたいと考えています。先ほども触れましたが、香りが広がらないと感じた方がディフューザーへ移行するのですが、そちらは電源が必要になったり、手入れが必要であったり、維持するのも大変です。そういったちょっとした不満を解消してくれる製品に仕上がっていますので、ぜひ私たちの「アロマストーン」に興味を持っていただけたらと思っています。
——製品リリース、楽しみにしています! 本日はありがとうございました!