第37期竜王戦1組(主催:読売新聞社)は出場者決定戦が進行中。2月14日(水)には5位トーナメントの計2局が行われました。このうち、東京・将棋会館で行われた永瀬拓矢九段―菅井竜也八段の一戦は171手で菅井八段が勝利。長手数の対穴熊戦を制して2回戦進出を決めました。

激戦の本戦出場枠争い

今期の1組5位トーナメントは9名からなる山を勝ち抜いた1名が本戦出場権を得るもの。振り駒で先手となった菅井八段は初手から中央の歩を突いて中飛車を宣言しました。対する後手・永瀬九段の作戦は銀対抗からの居飛車穴熊。堅陣を築いて仕掛けを探ります。

駒組みが頂点に達したところでタダのところに4筋の歩を伸ばしたのは永瀬九段のひねり出した打開策。空いた空間に金を繰り出せば歩交換が可能になります。これを見た菅井八段は玉頭方面での盛り上がりに作戦をシフトして左辺での桂損の代償を求めました。

千日手の攻防、菅井八段が抜け出す

盤端の攻防で手にした桂香をともに打ち合って戦いは右辺の局地戦へ。永瀬九段が1筋に香を重ねれば菅井八段も数の受けの桂打ちで対抗し制空権は譲りません。形勢互角のまま終盤に突入した本局、千日手含みの金銀の打ち合いが始まった局面が分岐点となりました。

実戦で永瀬九段が選んだのは自陣に手を戻して千日手を回避する手順ですが、結果的にここから菅井八段の猛攻を許すことに。手番を得た菅井八段は一瞬のスキをついて穴熊攻略に乗り出します。終局時刻は22時6分、最後は自玉の詰みを認めた永瀬九段が投了。

ともに勝負手乱発の最終盤にSNS上は「凄い将棋だ」「名局賞候補」「見ごたえのある終盤戦」と賛辞があふれました。勝った菅井八段は次局で斎藤慎太郎八段と対戦します。敗れた永瀬九段は2組降級が決まっています。

水留啓(将棋情報局)

  • 感想戦では激戦となった終盤戦を中心に深夜まで検討が行われた

    感想戦では激戦となった終盤戦を中心に深夜まで検討が行われた