現在公開されている『劇場版 君と世界が終わる日に FINAL』。2021年より日本テレビとHuluの共同製作ドラマとして日本テレビ系でSeason1が放送され、その後はSeason2~4まで動画配信サービスHuluで独占配信された。ゴーレムウィルスという、噛まれたら化け物になってしまう“謎の感染症”によって突然日常を奪われた人々の過酷なサバイバルと濃厚な人間ドラマを描き、Hulu内でも2年連続で年間視聴者数ランキング1位を獲得(※2021年、2022年)している。
シリーズを通して壮絶な人生を歩んできた主人公・間宮響(竹内涼真)の最後にして最大の戦いを描いた映画版で、響がたどり着く人類最後の希望の都市・ユートピアのタワーにある地下街の住人をまとめている悪党のリーダー・加地裕也を演じるのが、俳優の黒羽麻璃央だ。舞台を中心に活躍し、2022年からはほぼ毎クールドラマ出演し続けるなど引く手あまたの黒羽だが、フィールドが広がる中で、より「力が抜けてきた」と語る。
『劇場版 君と世界が終わる日に FINAL』で悪党のリーダー・加地裕也を演じる
――今作のオファーを受けた時の感想はいかがでしたか?
長く続くシリーズの作品で、劇場版を作るということに対する驚きもありましたし、ファイナルという集大成のような作品にお声がけいただいて非常に嬉しく思いました。
――4年間続いた作品の集大成で、レッドカーペットイベントにも参加されて。
レッドカーペットは人生初でした。「いつかレッドカーペットを歩きたい」と思っていたし、お客様もいっぱいいて、演出もすごく豪華で、これまでニュースで見ていたような中に自分もいるんだな、と。
――主演の竹内さんのすごさを感じたとのことですが、具体的にどのようなところがすごかったですか?
現場での気配りや配慮、コミュニケーション、そしてお芝居で引っ張っていく姿が、もうトータルとして魅力しかないというか。ついて行きたくなるし、ガンガン引っ張ってくれるし、頼もしすぎました。背負っているものも大きいと思いますけども、すごく大きな背中を見させていただきました。
同い年だけど、器の広さ、人間としての大きさを持っている方なんです。すべてに説得力があるし、お芝居を作る時も、段取りが終わった後の「もっとこうした方がやりやすいかな」と話し合う時間に、誰よりも周りのことを見ていることがわかって。
――ご自分が真ん中に立つことも多かったと思うんですけど、竹内さんのすごさを感じられたんですか?
僕なんかもう、へなちょこなんで(笑)。涼真くんの安心感が、根が深いところまで生えているようなところが、“大木”という感じです。
――他に共演者の方で印象に残ってる方は?
板垣李光人くんは、すごくおしゃれで印象に残っています。ミッキーマウスが履くくらいの大きなクロックスを履いていて、「どこで売ってるんだろう」と気になりました。たぶん李光人くんだから似合っているのであって、僕が履いたらあまり似合わないかもしれません(笑)
――アクションシーンも多かったですね。
大変でしたけど、すごく丁寧に作り込まれていて、アクション部の方も自分たちも怪我がないようにみんなで確認しながら臨んでいました。ワイヤーアクションにも挑戦したんですが、次の日は体が痛くて。 1回くらいの僕でもあれだけ痛くなるんだから、もっと飛んでいた人たちは大変だっただろうなと思いました。
――それを乗り越えられたのは、どのような要素が大きかったですか?
それはもう、チームワークです。特に涼真くんとの戦いでは、アクションが始まる前もまるで試合前のように「お願いします!」と言うところから始まって、体育会系のような雰囲気だったので、決して一人で作ってる場面ではなく、相手がいて一緒に 作っているという感覚がありました。
『きみセカ』『エリザベート』『LUPIN』とワイルドな役が続き…
――今回かなりワイルドな役ですが、ミュージカル『エリザベート』や『LUPIN』など、髭を生やす役が続いているような印象もあります。
求められればなんでも、というところですが、たしかにそういう役をいただけることは増えました。いつ「髭を生やしてほしい」と言われるのかわからないので、脱毛もできません(笑)。でもそういう役が増えると、今度は「いい人を演じたいな」という気持ちも芽生えてきて、今はピュアで弱気な役を募集中です。戦うというよりも、怯えて逃げるような……ぜひ事務所の方にお問い合わせください(笑)
――30代になっての変化なのかとも思いましたが、ご自身では心境などに変化はありますか?
あんまりないんです。もしかして今後悩むかもしれないですけど、どんどん仕事が楽しくなっている感覚で。より力が抜けてきたというか。昔は全力投球しかできなかったものが、徐々に良い意味で心に余裕が出てきて、楽しく感じ始めているのかなと思います。物事を重く考えすぎないようになりました。
――フィールドも広がってきていると思います。「売れたな」みたいな実感ってあったりしますか?
難しい言葉ですよね。僕らも「売れたね〜」とか言うことありますけど、「売れる」とは? その基準って何なんだろう? もちろん20代の頃は、もっとざっくりとした「売れたい」みたいな気持ちはありましたけど、今となっては「良くないな」と思うかもしれません。闘争心、エネルギーは持っていた方がいいと思うけど、自分の中では“そこじゃない”という感覚になったような気がします。
素晴らしい人と出会い、素晴らしい作品に出会い、勉強し楽しみながら、作品に関わってくれた方、観に来てくれた方の心が動いてもらうことの方が大事な気がして。「面白い」と思ってもらえる作品に携わることの方が楽しいというか。だから自分のことはどうでもよくて、「作品が良かった」「役が良かった」と言っていただけることが喜びです。
――それでは、最後に作品を楽しみにしている方へのメッセージをいただけたら。
1番感じて欲しいのは、やっぱり響の愛です。いろんな登場人物がいて、いろんな愛がありますが、響という男の物語だから、愛の深さや人を愛する気持ちの美しさ、かっこよさを通して、自分を見つめ直すきっかけになるんじゃないかと思います。人を愛したくなるような作品になっているので、1人で観てもいいし、大切な人と観てもいいし、ぜひ他人を愛する気持ちを再確認してほしいです。
■黒羽麻璃央
1993年7月6日生まれ、宮城県出身。2010年「第23回JUNON SUPERBOY CONTEST」で準グランプリを受賞。主な出演作にミュージカル『テニスの王子様』シリーズ、ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズ、ミュージカル『るろうに剣心 京都編』、ミュージカル『エリザベート』、ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』『ウソ婚』『トリリオンゲーム」(23年)、映画『貞子 DX』(22年)、『最後まで行く』(23年)など。