ソニー生命保険は1月25日、「ダブルケア(子育てと介護の同時進行)に関する調査」の結果を発表した。調査は2023年10月2日~6日、ダブルケアに現在直面している、もしくは過去に経験した男女1,000名を対象にインターネットで行われた。
全調査対象者のうち、「子どもの頃から家族(兄弟姉妹・親・祖父母等)の世話をすることが多かった」人の割合は、男性46.4%、女性36.6%。また、そのうち「家族の世話をすることで、自身の学業・進学・就職等に影響が出たと感じている」人の割合は、男性で66.8%、女性で42.6%だった。
「ダブルケア」最も負担に感じることは?
続いて、ダブルケアで負担に感じることを聞いたところ、「精神的負担」(55.2%)が最も多く、次いで「家事の負担」(31.4%)、「体力的負担」(30.7%)、「仕事との両立」(29.5%)、「経済的負担」(25.2%)が上位に。
実際、ダブルケアに現在直面している人の1日の過ごし方を見てみると、平日では【睡眠・食事・身支度等】が平均7.0時間、【仕事】が平均7.1時間、【家事など家のこと】が平均3.0時間、【育児・介護・介助・世話・見守り】が平均2.8時間、【休養・くつろぎ】が平均2.2時間、【その他】が平均2.0時間。
休日では【睡眠・食事・身支度等】が平均7.7時間、【仕事】が平均2.5時間、【家事など家のこと】が平均4.0時間、【育児・介護・介助・世話・見守り】が平均3.9時間、【休養・くつろぎ】が平均3.7時間、【その他】が平均2.3時間となり、平日だけでなく、休日においても休養やくつろぎに充てる時間を十分に取れないといった実状がうかがえた。
次に、ダブルケアの中で、誰のケアを最優先したい(したかった)・最優先されている(されていた)かという“理想”と“現実”を聞いたところ、“理想”では「子ども一人ひとり(=子ども全員)」が最多の48.0%だったが、“現実”では理想よりも9.2ポイント低い38.8%。「自身の母親」の場合は13.3%と、“理想”(8.3%)と比べて5.0ポイント高くなった。
また、ダブルケアで不安に思っていることを聞いたところ、1位「家計・経済状況」(49.0%)、2位「子どもへの影響」(47.9%)、3位「自身の健康状況」(40.2%)という結果に。経済的負担について想定外の支出はあるか(あったか)と聞くと、56.8%が「ある(あった)」と回答した。
働く「ダブルケアラー」の理想と現実
次に、ダブルケアに直面している有職者に、現在の事業所は、親のケアと育児とが両立しやすい職場か聞いたところ、69.9%が「そう思う」と回答。理由を聞くと、「休みが取りやすい」「勤務の希望が通りやすい」「リモートワークを利用できる」「時短勤務ができる」「残業がない」「職場の理解がある」といった回答が。他方、両立しやすい職場だと思わない人の理由としては、「休みが取りづらい」「長期の休みが取りづらい」「時間的な融通が利かない」「サポート体制が整っていない」「介護休業中の給与の補償がない」「職場の理解がない」といった回答があがった。
ダブルケアと仕事の両立に関する“理想”と“現実”としては、理想では「子育て+親のケア+仕事をバランスよくしたい」が最多の42%となったが、現実では「子育て+親のケア+仕事をバランスよくしている」は28%と、ギャップが生じていることが明らかに。
実際に、「親のケアや育児、ダブルケアを理由に仕事をやめた」経験について聞くと、「親のケアを理由にやめた」人は6.5%、「子育てを理由にやめた」人は12.4%、「実質的にはダブルケアで(育児と親のケアが重なって)仕事をやめたように感じる」が9.6%と、計28.5%が『やめたことがある(計)』と回答。
なぜ仕事をやめようと思ったのかと聞いたところ、「職場が両立しにくい環境」(25.6%)、「学童保育など(放課後の居場所)に入れず両立できない」(25.3%)、「保育園に入れず両立できない」(23.5%)、「介護施設に入れず両立できない」(21.4%)が上位となった。
「ダブルケア」の備えとしてやっておいたほうが良かったこと
次に、ダブルケアに対する備えとして行っていること(または、行っていたこと)を教えてもらったところ、1位「親族(両親や兄弟姉妹など)とダブルケアが起こった場合の負担・分担について話し合う」(24.1%)、2位「親が元気なうちに介護について話し合う」(22.3%)、3位「子育て・介護に関する地域の支援制度を調べる」(21.3%)、4位「誰がいつ要介護になるリスクがあるのか整理する」(19.8%)、5位「子育て・介護に関する経済的な準備をする(貯蓄・保険など)」(17.3%)となり、ダブルケアに突然直面することになった人は少なくないよう。
ダブルケアの備えとしてやっておいたほうが良かったこととしては、「親族(両親や兄弟姉妹など)とダブルケアが起こった場合の負担・分担について話し合う」(31.6%)と「親が元気なうちに介護について話し合う」(31.6%)が特に高く、事前に相談しておくことでダブルケアに備えられると考える人が多いよう。次いで、「子育て・介護に関する地域の支援制度を調べる」(24.9%)、「子育て・介護に関する経済的な準備をする(貯蓄・保険など)」(22.2%)、「誰がいつ要介護になるリスクがあるのか整理する」(20.0%)と続いた。
また、ダブルケアに直面している人に、ダブルケア当事者がつながる場を地域でつくることは必要だと思うか、必要だと思わないかと聞くと、68.8%が「必要だ」と回答した。
なお、同調査は、横浜国立大学 大学院国際社会科学研究院の相馬直子教授、並びにブリストル大学(英国) 社会学・政治学・国際学研究科の山下順子上級講師と協同で行われた。