第49期棋王戦コナミグループ杯(共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟主催)は、挑戦者決定二番勝負第1局の広瀬章人九段―伊藤匠七段戦が12月21日(木)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、千日手指し直しとなる熱戦を102手で制した伊藤七段が挑戦まであと1勝と迫りました。
藤井棋王への挑戦権は目前
棋王戦トーナメントは敗者復活戦があるのが特徴。これを勝ち抜いた伊藤七段には挑戦のために2連勝が必須です。振り駒が行われた本局は後手の広瀬九段が3三金型から腰掛け銀に組む趣向を披露しますが、ともに仕掛けを見出せず12時59分に千日手が成立しました。
先後を入れ替え始まった指し直し局は先手・広瀬九段の注文で矢倉戦へ。後手の伊藤七段が持久戦を避けたのは現代的な駒組みで、中住まいの布陣から右桂を使った反撃を含みにしています。局面は今月初旬に本棋戦で指された豊島九段―伊藤七段戦の前例をなぞります。
挑戦の行方は次戦に持ち越し
ともに玉を中住まいに収めてねじり合いが続きます。戦いは双方の角銀計6枚がにらみ合う盤上中央を舞台に激しさを増し、形勢は徐々に広瀬九段ペースへ。盤上はこのあと決断の飛車切りで先手玉を弱体化させた伊藤七段が攻めをつなげられるかが焦点となりました。
受けの時間が続く先手の広瀬九段が自玉への寄せをどう防ぐかが終盤のポイントでした。遊び銀の活用によって自陣の急所を補強した広瀬九段ですが、ガツンと銀をぶつけてこの銀を移動させたのが伊藤七段の勝着。急所の角打ちが実現しては急転直下です。
終局時刻は20時48分、勝負手の連続で一瞬の隙を衝いた伊藤七段が中盤の劣勢を跳ねのけ勝利。この結果を受け12月26日(火)に行われる第2局を制した方が藤井聡太棋王への挑戦権をつかむこととなりました。
水留 啓(将棋情報局)