• オダギリジョー

――オダギリさんがプロデューサーも担当された主演作『僕の手を売ります』が配信されています。企画段階から関わってらっしゃるそうですが、今回はどのような経緯でスタートされたのでしょうか。

実はもともと僕がやりたい企画があったんです。それを進めていくうちに、フジテレビのプロデューサー・鹿内植さんが加わることになり、冨永昌敬監督にお願いすることになりました。その後、僕がやりたかった企画は実現不可能になってしまったのですが、せっかくの良いチームを解散させるのはもったい無いし、冨永監督に別の企画を考えてもらったんです。それが面白そうだったので、新しいプロジェクトとして続けていくことになりました。

――ご自身で企画・主演はこれが初めてですよね?

はい。そういう意味ではやはり思い入れがとても強いです。俳優は(脚)本が出来上がってからオファーを頂くのが当然だったので、そういう意味で、ゼロから一緒に立ち上げることにやりがいがあったし、楽しみも大きかったですね。冨永監督の脚本力は昔から尊敬していましたし、演出に関しても完全に信用していたので、今回はクリエイティブな部分を監督に100%お任せして、自分は監督のフォローと、大桑の人物形成に徹しようと考えていました。

――冨永監督とはどんなやり取りを?

早い段階で監督が持ってきてくれたアイデアが、横須賀の2人の姉妹の断片だったり山形の准教授の話の断片だったりしたので、そういった短編的なものをうまくまとめて、日本中を巡るロードムービーにしたい、ということは話していました。

■とにかく冨永監督の脚本は面白い

――演じられた大桑北郎についての印象は?

実は大桑北郎は、冨永監督のご祖父がモデルの一部なんだそうです。どこまでをキャラクターに反映させたかまでは分かりませんが、監督の思いが詰まった役ですね。それを聞くとより大切に演じたいという思いが大きくなりますし、脚本に書かれた大桑をより魅力的にしたいという思いもありました。頼まれたことをなぜか引き受けてしまう、近しい人じゃないにもかかわらずいつの間にかその人の問題も背負ってしまうような人物です。不器用だけど、優しく温かい人ですよね。素敵なキャラクターだと感じました。

――キャラクター作りについて何かアイデアは出されましたか?

衣装合わせのときに、僕が何げなくかぶった帽子の据わりが良かったんです。監督は最初から作業着にこだわっていたんですが、僕が選んだ帽子との相性がピタッと来たんです。その瞬間にすべてのパズルが組み上がったように北郎のイメージが固まっていったのを覚えています。

――冨永監督は10話の連続ドラマ初脚本ですが、読まれた印象はいかがでしたか?

とにかく冨永監督の脚本は面白いんです。監督に初めてお会いしたのが『パビリオン山椒魚』という作品だったのですが、その時点でものすごい作家性を感じていました。今回もそれが存分に発揮されているんですけど、映像を見るだけだと伝わらない部分も実はあって。文字の持つ力というか、文字の表現力が高く、本は本でユニークでかなり面白いんですよ。いつかシナリオブックのような形で皆さんに読んでもらえるといいですけどね。まずはぜひ、本作品を見ていただけますとうれしいです。

●オダギリジョー
1976年生まれ、岡山県出身。2003年にカンヌ映画祭に正式出品された初主演作『アカルイミライ』で一躍注目を集め、その後、日本アカデミー賞新人賞などを受賞。『ゆれる』(06年)、『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(07年)で2年連続して日本アカデミー賞主演男優賞を受賞、テレビドラマ『時効警察』(06年)などでも人気を博す。近年は、ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(21年)、『カムカムエヴリバディ』(21~22年)、『アトムの童』(22年)などのドラマ、『花束みたいな恋をした』『茜色に焼かれる』(21年)などの映画に出演し、現在『サタデーフィクション』が公開中。監督としては『バナナの皮』(03年)、『さくらな人たち』(09年)、『ある船頭の話』(19年)などの映画、『帰ってきた時効警察』第8話(07年)、『オリバーな犬、(Gosh!!) このヤロウ』(21・22年)などのドラマを手がける。

  • 『僕の手を売ります』(FOD/Prime Videoで全10話配信中 ※第1話無料)
    出演:オダギリジョー、尾野真千子、當真あみ、水沢林太郎、大野泰広/松田美由紀 ほか
    (C)フジテレビ