「念頭に置く」という言葉の使用シーンは主に2つ。ビジネスシーンでもよく使われる慣用句ですが、目上の人に対して使うのは注意が必要です。

本記事では「念頭に置く」の詳しい意味や使用シーン、例文、使い方の注意点を紹介。言い換え表現もまとめました。

  • 念頭に置くとは

    「念頭に置く」の意味や正しい使い方と注意点、誤用、類語などを紹介します

「念頭に置く」の意味と読み方とは

「念頭に置く」は「ねんとうにおく」と読み、忘れないように常に心掛ける、考えている、という意味があります。

「念頭」とは、心の中の思い、という意味の言葉です。

念頭の位置に、該当の事柄を置いておく、ということから「念頭に置く」という慣用表現が生まれたとされています。

「念頭に置く」の使い方と例文

次に「念頭に置く」が具体的にどのような場面で、どのような気持ちを伝えるために使う言葉なのを、例文とともに解説します。

自分の決意を表すとき

「念頭に置く」は、自分自身の決意を表す際、物事に対する向き合い方を示す際に使うことが多いです。

自分自身で決めたことや情勢、他人に言われた大切なことなどを忘れないように、心に留めておく際に使います。

例文は以下の通りです。

・私はビジネスにおいて、「5分前行動」を念頭に置いております
・今後の価格変動を念頭に置き、戦略を立てていきます
・ご教授いただいたことを念頭に置いて、業務を進めてまいります

部下もしくは対等な立場の人に提案や依頼、命令をするとき

「念頭に置く」を使って、他者に対し「~を心掛けましょう(心掛けてください)」「~を忘れないようにしましょう(忘れないでください)」ということを提案、依頼、命令することもできます。

例文は以下の通りです。

・反対意見を言うときは、元の意見を出した人を否定したり傷付けたりしないということを念頭に置いて、発言しましょう
・たとえ飲み会の場であろうとも、取引先と接するときは会社を代表しているということを念頭に置いてくださいね

なお目上の人に対して「念頭に置くこと」を提案や依頼、命令するのは失礼に当たる可能性があるため、部下などの目下の人や、対等な立場の人にのみに使うようにしましょう。

「念頭に置く」を目上の人に使う場合の敬語表現

  • 「念頭に置く」の敬語表現

「念頭に置く」は前述のように、上司や取引先など、目上の人に対して提案や依頼する際に使用するのは避けましょう。

たとえ「念頭に置いてくださいませ」「念頭に置いていただけますよう、お願い申し上げます」などの敬語表現にしたとしても、相手に対してこちらの意見や要望を押し付けるような形になってしまい、上から目線になってしまうためです。

目上の相手に対して、こちらの事情を理解して、覚えておいてほしいという旨を伝える際には「お含みおきください」「お含みおきいただけますと幸甚です」などを使用するといいでしょう。

「含みおく」とは心に留めておく、了解しておく、という意味の言葉で、目上の人に対してもよく使われます。

なお提案や依頼、命令ではなく、あくまで自分の決意を示すときには「ご教授いただいたことを念頭に置いて、業務を進めてまいります」のように、目上の人に向けて「念頭に置く」を使っても問題ありません。

「念頭に置く」にまつわる注意点

ここでは、「念頭に置く」を使うときの注意点について紹介します。

「念頭に入れる」は誤用

「念頭に入れる」というフレーズを耳にすることがありますが、これは一般的には間違った使い方だといわれているため、避けた方がいいでしょう。

これは、後ほど紹介する「頭に入れる」という表現と混同して生まれた表現ではないかと考えられます。

重言とならないように注意

「常に念頭に置く」「いつも念頭に置く」などの表現は、意味が重複するため、避けた方がいいでしょう。

前述のように「念頭に置く」は、常に心掛ける、考えているという意味の言葉であるため、「常に」「いつも」という意味がすでに含まれています。

必ずしも間違いとは言い切れませんが、違和感を抱く人もいるため、「常に」や「いつも」は加えずに「念頭に置く」とした方が、スマートです。

「念頭に置く」の類語・言い換え表現

  • 「念頭に置く」の類義語

ここでは、「念頭に置く」の類語や言い換え表現について紹介します。

肝に銘ずる・肝に銘じる(きもにめいずる・めいじる)

「肝に銘ずる」「肝に銘じる」には、大切なことを心に刻み付けて、しっかりと記憶しておく、という意味があります。

「銘ずる(銘じる)」は、刻み付ける、書き付けるといった意味を持つ言葉です。「肝に命ずる」「肝に命じる」と書くのは誤りなので気を付けましょう。

なお「肝」には肝臓などの「内臓」という意味もありますが、この場合は「心」という意味で使われています。

心に留める(こころにとめる)

「心に留める」には、しっかり覚えておき忘れないようにする、常に意識しておく、などの意味があります。

「上司の教えを心に留めておく」などの形で使用します。

頭に入れる

「頭に入れる」は、ある事柄を頭の中に入れておき、しっかりと記憶しておくこと、という意味です。

「念頭に置く」は常に心掛ける、考えている、意識しておく、といったニュアンスで使われます。一方「頭に入れる」は記憶しておく、頭の中に入れておきそれを取り出せるようにしておく、といったニュアンスで使われます。例えば「地図を頭に入れてから出掛ける」といった形で使用します。

なお前述したように「念頭に置く」と「頭に入れる」を混同して、「念頭に入れる」としないように注意しましょう。

「念頭に置く」の意味を正しく理解し、ビジネスシーンでも使いこなそう

「念頭に置く」は、忘れないように常に心掛ける、考えている、という意味があります。

ビジネスシーンや日常生活でもよく使われるため、正しい使い方を理解しておくことが大切です。特に、目上の人に対して提案や依頼として使用するのは避けた方がいいでしょう。