• 井浦 新

■後輩・深川麻衣の魅力「常に明るくてカラッとしている」

――今回は、深川麻衣さんと2021年の『おもいで写眞』以来の共演になりました。事務所の後輩でもある深川さんですが、印象の変化はありましたか?

いい意味で印象が変わらないのはすごいと思います。常に明るくてカラッとしているんですが少し話し込んでみると、しっかり悩んでいて。そうやって悩みながら努力をしている姿を見ると、“その調子、その調子”って思って見守っています。そこはササポンと違うところです。俳優は悩んで、ミスをしたり、つまずいたりしてる時間もすごく大きな財産だったりするし、それを自分で乗り越えられたら本当に力になると思います。

『おもいで写眞』のときもそうでしたが、役や作品を背負って苦悩している麻衣さんの姿を見ると、逆にこっちも火が付くんです。特に今回の安希子という役はなかなかに難しい役だったので、役をどう咀嚼しようかと、がんばっている姿はとても素晴らしいと思いました。

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■井浦新が思う“役をやり切る力”

――直接アドバイスを送るのではなく、見守るんですね。それはご自身の経験がもとになっているんでしょうか?

そういう経験もあります。俳優の仕事はもちろん、共演者や監督、スタッフさんがいるから、みんなに助けられて、生かされて役が育つこともたくさんありますが、役をやりきる力というのは、本当に自分の力しかないんです。だから、先輩方からの教えや経験から、自力をつけていくしかない。未だに自分もそれを繰り返してますし、どれだけ経験したからといって慣れることも無くなることもないと思うんです。それは先輩方を見ていてもわかることで、これはずっと続くことなんだと。俳優として仕事をやっていく限りは付き物なので、繰り返しできる持久力・体力をつけないといけないんだと思います。

だから、苦しいときは大いに苦しんだ方がいい。苦しみを乗り越えるときの孤独やつらさ、キツさというのは、そのままネガティブにそこに留まっていることでは何も生まれないですから。

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■“表現”は常に孤独と隣り合わせ

――その苦しみを乗り越えた先に、現場での芝居や表現が生まれてくるんですね。

表現というものはどんな仕事でも孤独だと思います。その孤独の中で準備してきたもの・ことを、撮影の現場で共演者や監督、スタッフさんたちと一緒に出し合うというか……。だから、そこでやっと救われるんです。現場で失敗したり、苦しんだりしているときは1人じゃなくて、みんなで分かち合える。だけど、それを乗り越えていく力は自分1人でしか培えないと思います。

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■井浦新
1974年9月15日 東京都生まれ。1998年、映画『ワンダフルライフ』で初主演。以降、映画を中心にドラマ、ナレーションなど幅広く活動。アパレルブランド〈ELNEST CREATIVE ACTIVITY〉ディレクター。サステナブル・コスメブランド〈Kruhi〉のファウンダー。映画館を応援する「MINI THEATER PARK」の活動もしている。 2024年にはNHK大河ドラマ『光る君へ』、『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』(3月15日公開)を控える。映画『人生に詰んだ元アイドルは、 赤の他人のおっさんと住む選択をした』が公開中。