帝国データバンクは、上場する外食主要100社の値上げ動向について調査・分析を行った。

大手外食チェーンの値上げ動向に変化がみられる。上場する外食主要100社における、2023年以降の価格改定計画(値上げ、実施済み含む)を調査した結果、10月18日までに値上げを表明したのは42社だった。22年通年における、主要外食100社のうち値上げを実施・表明した企業は58社と約6割を占めたのに対し、23年では約4割の水準にとどまった。

2022年に値上げを行った58社のうち約9割の37社が再値上げを行い、主要外食100社の約4割が前年に引き続き「今年も」値上げに踏み切った。牛丼やハンバーガー、うどんなど、メニュー単価が比較的低く、原材料価格上昇を受け止める余力に乏しい「低価格チェーン」での値上げが多くを占めた。値上げの要因としては引き続き「食肉」「小麦粉」「原油」の高騰による影響が目立った。また、円安による輸入コスト上昇や、一部企業ではアルバイトなどの人件費増を理由としたケースもあり、値上げ要因は食材価格の高騰以外に広がっている。

一方で値下げに踏み切った外食企業もあった。一部メニューに限るといったケースも含め、18日時点で少なくとも6社で2023年中の値下げなどが判明しており、外食産業における値上げ動向は22年に比べて変化もみられる。22年に値上げした外食企業のうち、23年1-9月の客数動向が判明した企業35社をみると、9カ月間すべてで前年を上回ったのは37.5%にとどまった。値上げしていない企業に比べて客数の低下に直面した企業が多かったことも、追加での値上げ見送りや値下げへの方針転換の要因になった可能性がある。

足元では、外食への支出は回復傾向に転じている。総務省の家計調査によると、2023年1-8月における一般外食への支出額は1世帯当たり月平均で1万3000円を超え、コロナ前の19年(1万4050円)に並ぶ勢いで推移した。ただ、コロナ前5年間の平均額と23年の支出額を比較すると、ハンバーガーや喫茶店、ラーメンなどの中華そば分野ではコロナ前を上回って推移する一方、居酒屋などを中心とした外食シーンでの酒類消費は大幅に落ち込むなど、メニュー別で回復度合いに濃淡がみられた。

食材価格の高騰や最低賃金の上昇といったコスト高を背景に、外食企業では2022年以降、相次いで値上げに踏み切った。ただ、23年にメニューの値上げを実施した企業は約4割にとどまり、「価格据え置き」や部分的ながら「値下げ」といった対応を行う企業が6割を占めるなど、価格戦略をめぐる企業の動向には温度差も鮮明となった。