横浜みなとみらいエリアの新商業施設「LIVING TOWNみなとみらい」にレストラン「トラット リア・タブレ(以下、タブレ)」が10月5日オープンした。このレストランを手がけるのは、六本木「La Brianza(ラ ブリアンツァ)」をはじめとするミシュラン掲載店舗を複数店運営するオーナーシェフの奥野義幸氏と、NYのミシュランガイドで12年連続三ッ星を獲得している「Jean-Georges」にて日本人初の副料理長を務め、現在は都内で紹介制レストラン「No Code」のオーナシェフを務める米澤文雄氏という輝かしい経歴のお二人。そんな二人による新たなレストランのコンセプトは、前代未聞の「中東イタリアン」だ。一体どのような料理が提供されるのか、実際に足を運んでみたので紹介しよう。

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    「中東イタリアン」とは?

世界的ブームの中東料理を、日本人に親しみやすいイタリアンにアレンジ

欧米を中心に世界の美食家を虜にしている中東料理は、トルコ料理のケバブやイスラエルのファラフェルなどが代表的な例として挙げられるが、日本での認知度はまだまだ低い。しかし近年の国際化や食の多様化、スーパーフードの認知向上やカレーなどの領域におけるスパイス料理の普及もあり、その味わいに触れる機会が増え、慣れ親しむ人も増えてきている。

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    店内からは芝生のグリーンが見渡せる開放的な「タブレ」

イタリアンをベースとする二人のシェフは、海外での経験も豊富で、米澤氏はニューヨーク時代に中東スパイスを使った料理をいくつも手がけていたという。さらに奥野氏いわく、イタリア人と飲みにいくと二次会で中東料理を食べにいくのが当たり前というほど、イタリア人の生活に中東料理が浸透しているそうだ。このような経緯で、世界の食のトレンドである中東料理のエッセンスを加えつつ、日本人に馴染み深いイタリアンとの融合を図ることで新たなジャンル「中東イタリアン」の料理コンセプトが生まれた。 

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    (左から)奥野義幸シェフと米澤文雄シェフ

店名の由来でもある、スプーンで食べる中東サラダ「タブレ」

店名の「タブレ」とは、中東料理の中でも特にレバンテ地方で一般的な家庭料理のひとつだ。パセリやミントなどのフレッシュハーブと野菜やスーパーフードのキヌアなどをスパイス、オリーブオイル、レモン汁でマリネしたサラダのことで、同店の看板メニューにもなっている。

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    「シグネチャータブレ ヨーグルトのソース」(1,200円)

「シグネチャータブレ ヨーグルトのソース」(1,200円)は、パスタと同じデュラム小麦などから作られるブルグル、キヌア、パセリと季節の野菜や果物と和え、水切りヨーグルトをトッピングしている。スプーンを使い、少しずつ水切りヨーグルトと混ぜていただく。口に入れるとフレッシュハーブと中東スパイス・スマックの香りが広がり、キヌアのつぶつぶ感やキュウリや玉ねぎの清涼感、ひよこ豆のホクホク感、ほおずきとリンゴの自然な甘みが優しく調和していく。仕上げに回しかけられた水切りヨーグルトはサワークリームのような味わいで、サラダ全体にまとまりをもたらし、スパークリングワインを誘う。

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ポテトサラダの概念を覆してくれたのが「熟成ジャガイモのポテトサラダ ムール貝とグリーンアリッサ」(1,500円)だ。メイクイーンという品種のジャガイモを2年熟成させて火入れし、ムール貝とグリーンアリッサ、バジルのソースを添えてある。アリッサとは唐辛子を植物油や塩、ニンニクなどと共にペースト状にした中東の調味料のこと。この料理ではたっぷりのハーブに青唐辛子、スパイス、白ゴマを合わせて緑色に仕上げた米澤シェフオリジナルのアリッサが使われている。熟成されたジャガイモはなめらかな舌触りでねっとりと甘く、白ゴマの香ばしさが訪れた後にスパイシーさが舌に残るグリーンアリッサ、そしてムール貝のミネラル感のあるうま味がそれぞれ良い役割を果たす。「知っているけど初めての味を目指した」というシェフの言葉の通り、馴染みがあるけど新鮮な驚きもある、そんな料理だ。

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    「熟成ジャガイモのポテトサラダ ムール貝とグリーンアリッサ」(1,500円)

カレー粉香る食べ応え抜群なカリフラワーに、中東スパイス・デュカをふりかけたジェノベーゼ

野菜をたっぷり食べる中東の人々の食文化が特に反映されているのが、「カリフラワーのロースト 江戸前ハーブとくるみピーナッツバター&スパイスソース」(ハーフ1,400円、レギュラー2,100円)。米澤シェフが以前勤めていた青山「The Burn」でも人気だったヴィーガンの方向けのメイン料理を、さらにアレンジした一品だ。ローストしたカリフラワーに、カレー粉、カルダモンなどのスパイスをライムジュースで割り、くるみと江戸前ハーブで食感と香りにアクセントを加え、ピーナッツバターでボリューム感を出し、パプリカパウダーで彩りを添えている。ローストしたカリフラワーの香ばしさにピーナッツバターのこっくりとしたうま味、そこに食欲そそるカレーの味わいが合わさり、肉料理や魚料理にも負けない存在感のあるメイン料理となっていた。

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    「カリフラワーのロースト 江戸前ハーブとくるみピーナッツバター&スパイスソース」(ハーフ1,400円、レギュラー2,100円)

イタリアンといえば外せないのがパスタだろう。同店ではこのパスタにも中東のエッセンスが入っている。例えば「バジルとフレッシュケールのジェノベーゼ キタッラ」(1,800円)は、ケールとバジルを3:1の割合で仕立てたソースに、キタッラという太めのパスタ使用し、中東では欠かせないスパイスのデュカを振りかけた。デュカも同店オリジナルのもので、ピスタチオ、コリアンダーシード、白ゴマ、スマックなどを使っている。一般的にパセリが主役にも思えるジェノベーゼだが、ケールの風味がしっかりと感じられるほか、ナッツ由来のオイルのコクが前面に出た咀嚼するほどにおいしいパスタに仕上がっていた。

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    「バジルとフレッシュケールのジェノベーゼ キタッラ」(1,800円)

どの料理も多彩な野菜の魅力を伝えながらも、ハーブやスパイスの妙によって、ワインを飲ませに来る料理ばかり。「野菜メインだと物足りない」などという固定観念を打ち破ってくれる新店だ。ベジタリアン、ヴィーガン料理を謳っているわけではないが、そういったオーダーも個別に対応可能だという。満足感があるのにヘルシー、洗練されていておいしい中東イタリアンを体感してみてほしい。

※料理写真は全てグランドメニューとは異なる特別ポーションサイズです

Trattoria Tabulé(トラットリア タブレ)
営業時間: ランチ12:00-15:00 Close(14:00LO)
ディナー17:30-22:30Close (21:00 Food LO / 21:30 Drink LO)
水曜定休日