近年、社員の副業を解禁する企業が増えたこともあり、会社員の副業に注目が集まっています。
今回フォーカスするのは会社員として働く傍ら、Instagram(@saoli723)を中心としたファッション情報の発信や、女性誌の読者モデルも務める阿部早織さん。インフルエンサー活動は「セルフブランディングであり、未来への投資でもある」と語る阿部さんに、副業インフルエンサーのリアルを聞きました。
■「セルフブランディング」としてのインフルエンサー活動
――まずは、インフルエンサーとしてどんな活動をされているのかお聞かせください。
阿部さん: 会社員としてIT企業に勤務しながら、Instagramをメインに低身長ファッションの情報を発信しているほか、女性誌の読者モデルも務めています。
Instagramで発信を始めたのは3~4年前のことです。自己表現の場を広げたいと思ったこと、何かしら肩書を持ちたいと考えたことから、読者モデルにも挑戦するようになりました。
――副業としてインフルエンサー活動を始めた経緯をお聞かせください。
阿部さん: お金を稼ぐことが目的ではなかったので、当初は「副業」という感覚はあまりありませんでした。将来的に、モデル活動やファッションブランドの立ち上げなどを通して、ファッションの世界に身を置きたいと考えていたので、会社に所属しなくても仕事ができるようになるための「ブランディング」が主目的でした。自分の看板を育てるための活動がインフルエンサーとしての発信で、それが結果的に副業になったという感じですね。
――現在、インフルエンサーとしてどのような形で収入を得ているのでしょうか?
阿部さん: メインはPR報酬とモデル料です。PR報酬は、ファッションブランドなどからタイアップ投稿の依頼を受け、そのブランドの商品を着用した写真などを自身のInstagramに投稿することでいただける報酬です。
■インフルエンサー活動で人生の選択肢が拡大
――副業といってもさまざまな選択肢がある中、インフルエンサー活動を副業にするメリットは?
阿部さん: 一番は、自分の将来への「投資」になることです。セルフブランディングはあくまでも個人のものなので、例えば会社を離れることになったとしてもずっと残る財産になります。インフルエンサー活動を通じてファッションや自己表現が仕事になりました。お金以上に、自分がやりたいことができていることの意味は大きいです。
Instagramで発信をしていると、自分から営業しなくても向こうから仕事の依頼がくることも多いです。依頼を受けてやってみたことが、意外と自分に向いていることに気づいた経験もあり、自分の興味の幅や可能性が広がるのも魅力です。
また、本業でインフルエンサーのキャスティングをしているので、副業でのインフルエンサーとのつながりや、自分がInstagramに投稿して得た所感などは、本業にも生きています。インフルエンサー同士のつながりを通して、人脈も広がりました。
――インフルエンサー活動をしていて、一番「楽しい」と感じるのはどんな瞬間ですか?
阿部さん: 人と関わるのが好きなので、コメントなどで私の投稿を見てくださっている方々とやり取りするときが一番楽しいですね。「いいね」やコメントで、常に人とつながっている感覚が持てるのが醍醐味です。
――インフルエンサー活動を始めてから、日々の生活にどのような変化がありましたか?
阿部さん: 友人から以前よりもファッションについて聞かれることが増えるなど、話題が変わりました。収入も多少は増えたので、以前よりもファッションや美容にお金がかけられるようになりましたし、精神的にもラクになりましたね。
Instagramに投稿する写真の撮影は、本業が休みの土日が中心です。早めに起きて活動することで、休日の過ごし方が充実するようになりましたし、将来に投資をしている実感が持てています。
SNSでの情報発信は会社に所属しなくても、家事や子育てをしながらでもできる活動です。今後、結婚・出産でライフステージが変わったとしても続けられるので、人生の選択肢が広がりました。
■華やかなイメージに反して、地道な努力も欠かせない
――副業としてインフルエンサー活動をする上で、大変なことはありますか?
阿部さん: 一番は、本業がどんなに忙しくても締め切りを守らなければならないことです。
タイアップ投稿の場合、クライアントが設定する投稿の締め切りがあります。クライアントに下書きを確認してもらうこともあるので、それも踏まえたスケジュール管理が必要ですし、平日の締め切りも多いので、会社員として働きながらの調整は難しいと感じることもあります。
投稿用の写真は主に自宅で撮影していますが、曇りや雨の日は家の中が暗かったり、服がきれいに見えなかったりするので、撮影には不向きです。天候によって想定していたスケジュール通りにいかないことがあるのも大変なところですね。
――本業と副業を両立するために工夫していることはありますか?
阿部さん: スケジュールを密に管理することです。上司や同僚も私がインフルエンサー活動をしていることは知っているので、会社のGoogleカレンダーに副業のスケジュールも入れて一括で管理しています。
「明日の朝撮影したいから、今夜は飲みに行かないでおこう」など、遊びのスケジュールも含めてしっかり自己管理する必要があります。土日の午前中は撮影時間として確保し、午後に自由な時間を過ごすことが多いです。
――インフルエンサーには華やかなイメージがありますが、実際にやってみて想像と違った部分はありますか?
阿部さん: 4~5年前まで、インフルエンサーには、「最新のファッションに身を包み、高級ブランドのバッグを持って素敵なカフェに行っている美人」のような「憧れの人」のイメージがありました。ところが最近は、どれだけ有益な情報を提供できるか、いかにユーザーのニーズに合った情報を発信できるかが大事になってきています。
もともとは「良い写真を撮ればいい」と思っていたのですが、今は単にファッションの写真を投稿するだけでなく、文字を入れるなどして、いかに低身長さんに役立つ情報が提供できるかを意識するようになりました。
InstagramのAIに認知されるとフォロワー数が伸びやすいので、どれだけアルゴリズムを知っているかもポイントになります。ただ投稿しているだけでは伸びないので、プラットフォームの仕組みを知って、それに合った戦略をとることが大切ですね。
■インフルエンサー活動は「継続」あるのみ
――副業インフルエンサーに向いている人はどのような人でしょうか?
阿部さん: インフルエンサー活動はとにかく「継続」が大事なので、「Instagramが好き」「美容が好き」「ファッションが好き」など、好きなものがあって、その気持ちを原動力に発信を続けられる人です。中には一気にバズる方もいますが、定期的に投稿しないとフォロワーは減っていくので、常にPDCAを回しながら、フォロワーの気持ちを汲み取り、定期的に投稿し続ける必要があります。
本来は2日に1回は投稿したほうがいいのですが、時間の制約もあって、私の場合は週に2回以上は投稿するようにしています。一定の投稿頻度を守るだけでなく、「今求められている情報」を提供することも大事なので、情報収集をすることも、服を買いに行くことも仕事の一部です。これらも含めてスケジュール管理をしなければならないので、好きでないとなかなか続けられません。
あとは、人とコミュニケーションを取るのが苦にならない人ですね。ファッション情報を発信していると、オンラインでのやり取りだけでなく、展示会やイベントなど、オフラインの場でほかのインフルエンサーや企業の方と会話する機会もあります。
スケジュール管理という点では、本業の自由度が高く、平日の日中にもある程度時間が取れる方には特に向いているのではないでしょうか。
――今後やりたいことや目指している姿をお聞かせください。
阿部さん: インフルエンサー活動を始める前から、「同世代の女性を元気にしたい」という想いがあります。SNSやファッションの世界は移り変わりが激しいので、活動の内容は変わっていくかもしれませんが、これからも、同世代の女性を元気にするための活動を一貫して続けていきたいです。
「自分のブランドを持つ」という目標も変わっていないので、今後さらにフォロワーを増やせるよう頑張りたいです。
――最後に、副業としてインフルエンサー活動をしてみたいと考えている方に向けて、メッセージをお願いします。
阿部さん: 会社員として働きながら、情報収集をして、発信する内容を考えて、準備・撮影して、コンスタントに投稿し続けるというのは大変な部分もあります。ですが、インフルエンサー活動はライフステージが変わっても続けられる活動ですし、自分自身を"仕事"にできる活動です。
リモートワークが普及したこともあり、365日自分をブランディングしてくれるSNSを味方につけられるインフルエンサー活動は時代に合っているので、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。