第82期A級順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、4回戦の広瀬章人八段―菅井竜也八段戦が10月12日(木)に名古屋将棋対局場で行われました。対局の結果、100手で勝利した菅井八段が3勝目を挙げました。

三間飛車対居飛車穴熊の対抗形

広瀬八段1勝2敗、菅井八段2勝1敗で迎えた分水嶺の一局、後手となった菅井八段は迷いなく三間飛車を採用します。先手・広瀬八段の居飛車穴熊により相穴熊の可能性も出たところで菅井八段は美濃囲いにシフトチェンジ。先手陣が急戦に不向きな点に着目して盤上右方から手を作る狙いが見て取れます。

3筋の歩をぶつけた菅井八段は石田流の要領で大駒を展開。右辺での折衝が続くかと思われた局面で一転9筋の歩を突っかけたのが実戦的な手筋でした。この直後、飛車をバッサリ切り飛ばして角を入手したのが驚きの大局観で、美濃囲いの瞬間的な堅さが生きれば振り飛車側から手が続きます。

菅井八段が攻め倒して快勝

形勢互角のまま局面は一気に終盤戦へ。歩の手筋を駆使して香得を果たした菅井八段はこれを8筋に据えて穴熊の急所に照準を合わせました。広瀬八段も持ち駒を投入して徹底抗戦の構えですが、いかんせん自陣に眠る飛車が攻防ともに働かないのがつらい限り。これを尻目に馬を自陣に引き付けた菅井八段がリードを奪いました。

優位に立った菅井八段の寄せは明快でした。追われた角をバサッと切り飛ばして先手玉を薄くしたのが「終盤は駒の損得より速度」を地で行く決め手。王手飛車取りの筋を含みに迫って広瀬玉は一手一手の寄り形です。終局時刻は20時59分、攻防ともに見込みなしと認めた広瀬八段が投了。勝った菅井八段は3勝1敗として名人挑戦に向け前進しました(広瀬八段は1勝3敗)。

  • 菅井八段は昨期の自身の成績(5勝4敗)を上回れるか

    菅井八段は昨期の自身の成績(5勝4敗)を上回れるか

水留 啓(将棋情報局)

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