永瀬拓矢王座に藤井聡太竜王・名人が挑戦する第71期王座戦五番勝負(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)は、第2局が9月12日(火)に兵庫県神戸市の「ホテルオークラ神戸」で行われました。対局の結果、角換わりの熱戦を214手で制した藤井竜王・名人がスコアを1勝1敗のタイに戻しました。

挑戦者が右玉の趣向

永瀬王座の先勝で迎えた本局、後手番となった藤井竜王・名人は序盤早々に角換わり右玉の趣向を見せます。仕掛けをめぐる駆け引きのなかで移行することはあっても最初からこの形を目指すのは珍しく、SNS上は早くも「(藤井竜王・名人の)棋風からも右玉は意外」「温めていた作戦か」と盛り上がりを見せました。

藤井竜王・名人は右桂を中央に跳ね出した後に自陣を固めて先手に主導権を委ねます。間合いの計り合いが続いたのち、しびれを切らした藤井竜王・名人が5筋の歩を交換したところで本格的な戦いが開始。一歩を手にした先手の永瀬王座はここぞとばかりに左辺からの端攻めに打って出ました。

永瀬王座リードも終盤に分岐点

適当な受けがないと見た藤井竜王・名人が9筋を受け流す方針を採って局面は激しい攻め合いへ。盤面全体を使った押し引きが続いたのち、やがて永瀬王座が先攻のリードを生かして優位に立ちます。馬と角の2枚を敵玉に迫らせて寄せの形を作ったのがうまく、こうなると藤井陣は「玉飛接近すべからず」の悪形を強いられた格好です。

  • 124手目(第71期王座戦五番勝負 第2局  主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)

    124手目(第71期王座戦五番勝負 第2局  主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)

苦戦の時間が続く藤井竜王・名人ですが、秒読みの中で勝負手を放ちます。遊び駒の飛車を犠牲に△4三玉と上がったのがそれで、自玉の安全を優先して入玉に目標を切り替えたのが功を奏しました。やがて先手陣への進軍を成功させた藤井竜王・名人は満を持して永瀬玉への寄せに乗り出します。

200手超えの熱戦に幕

延々と続く一分将棋の中、永瀬王座も自玉を敵陣近くまで進めます。控室では相入玉の可能性もささやかれはじめますが、藤井竜王・名人は最後まで読み切っていました。自陣飛車の王手で寄せの網を絞ったのが決め手。広そうに見えた永瀬玉には意外にも即詰みが生じています。

終局時刻は22時2分、最後は自玉の詰みを認めた永瀬王座が投了を告げて藤井竜王・名人の勝利が決定。これで五番勝負の第1局・第2局はともに後手番が制して両者1勝1敗のタイに戻りました。藤井竜王・名人の先手番で迎える注目の第3局は9月27日(水)に愛知県名古屋市の「名古屋マリオットアソシアホテル」で行われます。

  • 感想戦で藤井竜王・名人は「(図の直前の局面で正確に指されていたら)相当苦しかったと思います」と打ち明けた(提供:日本将棋連盟)

    感想戦で藤井竜王・名人は「(図の直前の局面で正確に指されていたら)相当苦しかったと思います」と打ち明けた(提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

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