ふるさと納税は、自分の故郷や応援したい自治体など好きな自治体を選んで寄付することで、税金の還付・控除が受けられる仕組みです。2,000円の自己負担で魅力的な返礼品を受け取ることもでき、そのお得さから利用者は年々増えています。
しかし、このふるさと納税は、2023年10月からルールが改定されるようです。ふるさと納税のどのような点が変わり、そして利用者にはどのような影響があるのでしょうか。
■ふるさと納税、2023年10月からの変更点は
ふるさと納税とは、本来は自分の住まいがある自治体に納める税金を、任意に選択した自治体に寄付することで、翌年の所得税や住民税の控除が受けられる制度です。さらに、実質2,000円の自己負担で、寄付をした自治体から地域の名産品や宿泊券などの返礼品をもらうことができます。
このようなメリットが広く浸透したことで、ふるさと納税は、今や多くの国民が利用する人気の制度となりました。ただし、このふるさと納税は、2023年10月からルールの変更が決定しています。変更点は、以下に挙げる2点です。
1.経費の「5割ルール」の厳格化
ふるさと納税には、「返礼品の調達費用は寄付額の3割以下」「経費の総額は寄付額の5割以下」にするというルールがあります。
たとえば、ふるさと納税で1万円の寄付をすると、受け取る返礼品の金額はおよそ3,000円です。このうち、返礼品の調達費用3,000円を含んだ金額の5,000円が経費と考えられ、実際には自治体に5,000円の寄付が行われます。
しかし、ふるさと納税を管轄する総務省が自治体を調べたところ、これまで経費の範囲に含まれていなかった、寄付金受領書の発行費用やワンストップ特例制度(一定の条件を満たせば、ふるさと納税の確定申告が不要になる制度)の事務費用などの「隠れ経費」が見つかったのです。
また、多くの自治体では、ふるさと納税でより多くの寄付を募ろうと、いわゆる「ふるさと納税ポータルサイト」に情報を掲載していますが、これらポータルサイトの利用に関する手数料の扱いがポータルサイトごとに異なっているのではという指摘も挙がりました。
これら「募集に要する費用」が10月から厳格化し、各種事務に係る費用等やポータルサイト利用手数料の全ても経費に含めることになります。一部の地方自治体では、こうした費用を加えると、経費の総額が寄付額の5割を超える場合もあるようです。
そのため、寄付金額が引き上げられる、返礼品の品質に影響が出る可能性があるなど、ルール変更に伴う懸念が生じ始めています。
2.「熟成肉」「精米」の地元産扱いの厳格化
返礼品として人気のある肉やお米についても、ルールが厳格化します。これまで、地元で熟成・加工された食品であれば、海外や他の都道府県などで生産された肉やお米でも「地場産品」として返礼品にすることができました。
ところが10月からは、熟成肉と精米については、同じ都道府県で生産されたものを原材料とするもののみが地場産品として返戻品に認められるようになります。
たとえば、海外から輸入した肉を地元で熟成させただけでは、今後は返礼品として扱うことはできません。海外から輸入した肉を独自の方法で加工したり、独自の味付けをしたり、その地域で相応の付加価値を付けられた場合のみ返礼品として認められます。
お米の場合、他地域のお米を精米だけして地元の返礼品にすることができなくなります。また、10月からは、セット品で他の都道府県のものと一緒に返礼品にする場合は、地元産の品を全体価格の7割以上にする必要があります。
このように地元産扱いが厳格化することにより、これまで返礼品にできていたものが終了してしまう可能性も出てきました。
■利用者にはどのような影響がある?
ふるさと納税のルールが10月から変わることにより、寄付を受ける自治体としては、寄付額の半分以上のお金が残るようになると期待できます。また、ふるさと納税の「(寄付によって)応援したい地域の力になる」という意義を考えれば、返礼品は他の地域から調達するのではなく、原材料から地元のものを使うのが本来の形なのかもしれません。
ただ、ふるさと納税の制度を利用する側からすると、同じ金額の寄付でも返礼品の量が減ったり、同じ量の返礼品をもらうのに金額が上がったりする可能性があります。また、先ほどもあったように、返戻品の品質に影響が出たり、地元産扱いできなくなる肉やお米が返戻品から外されたりすることもあるでしょう。
つまり、利用者からすると、10月以降はふるさと納税のお得さがこれまでより減ってしまうケースが多くなりそうなのです。
これらの事情を踏まえれば、今年ふるさと納税の利用を考えている場合、ルールが改定される前の9月中に寄付しておくことをおすすめします。
■ふるさと納税は9月中の手続きが良さそう
この10月からルールが厳格化されるものの、ふるさと納税は依然として魅力的な制度です。返礼品の中には、食品のみならず日用品も含まれるため、うまく活用すれば家計の負担を減らすこともできるでしょう。
一方で、ルール改定により、返礼品の量や質、必要な金額に影響が及ぶ可能性があります。今年中にふるさと納税を利用するなら、10月のルール改定前に手続きを済ませておきましょう。