ウルトラマンシリーズが持つ根源的な面白さを今一度見つめ直し、そこに「リアリズム」という調味料を加えてより味わいを深めた『ウルトラマンブレーザー』が、現在好評放送中である。

毎回バラエティに富んだ外見や特性を備える巨大怪獣が登場。住処を離れ、人間社会に迷い込んできた怪獣に対し、特殊怪獣対応分遣隊=SKaRD(スカード)の隊員たちはまず怪獣の調査・分析を行い、その特性や生態を把握した上で対抗策を考え、特戦獣「アースガロン」を駆使して作戦行動にあたる。怪獣中心に物語が進み、その中でSKaRD隊員たちの人間性が描かれるというのは、シリーズの原点『空想特撮シリーズ ウルトラマン』(1966年)にも通じる怪獣特撮作品の超・王道展開。人智を超えた怪獣の行動によって作戦が難航し、隊員たちが危機に陥ったとき、どこからともなく現れる謎のヒーローがウルトラマンブレーザーである。その正体がSKaRDのヒルマ ゲント隊長(演:蕨野友也)であることは、劇中人物の誰ひとり気づいていない。

第1話では宇宙甲殻怪獣バザンガ、第2話では深海怪獣ゲードス、第3話は甲虫怪獣タガヌラー……と、独自の設定・デザイン・造型が施された「新怪獣」がぞくぞく登場する点が、『ウルトラマンブレーザー』の大きな特徴となった。そんな中で、第6話「侵略のオーロラ」では、従来の「ニュージェネレーション」シリーズを思わせる「過去のウルトラ怪獣&宇宙人」の再登場が見られた。第6話に出てきたのは、『ウルトラセブン』(1967年)第24話「北へ還れ!」で初登場したオーロラ怪人「カナン星人」。『ウルトラセブン』でのカナン星人は、地球人の知らぬ間に北極の空を制圧し、オーロラに似た怪しい光線を用いて上空を飛ぶ航空機を操縦不能にした上、航空機同士を激突させるという恐るべき侵略者だった。

地球防衛軍・ウルトラ警備隊のフルハシ隊員(演:石井伊吉=毒蝮三太夫)はウルトラホーク3号で北極上空を調査中、カナン星人の計略にかかり、300名の乗客を乗せたジェット旅客機と正面衝突の危機を迎えることになる。北極の「灯台」に潜むカナン星人は、モロボシ・ダン(演:森次浩司/現:森次晃嗣)が偵察用に放ったカプセル怪獣ウインダムの電子頭脳を狂わせることに成功するが、ダンはウルトラアイでウルトラセブンに変身。襲いかかるウインダムを軽くあしらうと、カナン星人の野望を粉砕した。カナン星人は宇宙へ逃亡する際、灯台に偽装した宇宙ロケットを使用。彼らの潜伏先だと思われていた灯台が、そのままロケットになって飛んでいくという部分にユニークさがあった。

『ブレーザー』第6話では、ハービーとロビーという名を持つカナン星人が登場。北極を侵略拠点としていた初代カナン星人と違い、ハービーは都内の住宅街に潜んでおり、トレードマークの「黒・金ボーダー」衣服をコインランドリーで洗濯するほど、地球人の生活様式を理解している様子だった。

今回のカナン星人はオーロラ光線で機械の自由に操るだけでなく、機械に宿る「負の感情」を引き出して人間への反逆心をあおるという、以前とはひと味違った侵略活動をしているのが大きな特徴。そんなカナン星人に目をつけられたのが、SKaRDの優秀なメカニックにして、アースガロン操縦員のひとり、バンドウ ヤスノブ隊員(演:梶原颯)である。すでにオーロラ光線を照射されていたアースガロンは、格納庫から勝手に発進し、ゲント隊長とSKaRD隊員たちを襲撃した。『セブン』でのウインダムと同様、頼もしい味方側にあるキャラクターのアースガロンが暴れ出し、これをウルトラマンブレーザーが懸命に食い止める、という珍しいビジュアルが今回の注目ポイントとなった。

また、初代カナン星人にオマージュをささげたのか、今回の彼らは風力発電用の風車に擬態した宇宙船に乗っており、羽根をプロペラのように回転させながら逃亡する部分が目をひいた。この宇宙船を一発で撃墜するべく、ウルトラマンブレーザーが「スパイラルバレード」を投げる際、体を2回ねじって勢いをつける、マンガチックなアクションもすばらしい。もしも機械に感情が宿っているのなら、それはカナン星人が言うような「負の感情」ばかりではない。機械に惜しみない愛をそそぐヤスノブの情熱がアースガロンに届いたかのような「奇跡的な出来事」が起き、カナン星人の計略が粉砕されるという展開の妙味にうならされた。

人気ウルトラ怪獣&宇宙人の設定に適度なアレンジや新解釈を加え、最新キャラクターとしてリニューアルさせるという手法は、前作『ウルトラマンデッカー』(2022年)をはじめ、過去のニュージェネレーション作品でもよく用いられている。それにしても、カナン星人は『ウルトラセブン』での登場から『ブレーザー』で「復活」するまで、実に55年もの歳月がかかったことになる。バンダイ・ウルトラ怪獣シリーズとしてソフビ人形が発売され、テレビ出演までも叶ったカナン星人の、55年目の大躍進に注目である。

8月26日放送の第7話「虹が出た 前編」ではふたたび新怪獣(ニジカガチ)が登場。その一方で、6月12日に行われた本作のプレミア発表会には、カナン星人のほかにも『ウルトラQ』(1966年)のガラモン、『ウルトラマン』のガヴァドンといった超人気ウルトラ怪獣の姿が確認されている。果たしてこの2体はいつ、どのような形で「復活」を遂げるのだろうか。今後も注意深く『ウルトラマンブレーザー』のストーリー展開を、ワクワクしながら見守っていきたい。

(C)円谷プロ (C)ウルトラマンブレーザー製作委員会・テレビ東京