第82期C級1組順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、別日開催となっていた3回戦の片上大輔七段-伊藤匠六段戦が8月3日(木)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、伊藤六段が117手で勝利し、今期成績を2勝1敗としました。

10日ぶりの対決

7月末に行われた早指し棋戦でも対局した両者。その際は片上七段の三間飛車に伊藤六段が急戦で挑む構図でしたが、本局は後手の片上七段が四間飛車を採用して幕を開けました。玉側の端を詰めた片上七段が右玉に似た布陣に構えて持久戦を志向したのに対し、先手の伊藤六段も居飛車穴熊の堅陣に組んで戦いの時を待ちます。

駒組みが頂点に達したところで伊藤六段は飛車を7筋に回って本格的な仕掛けを準備。この直後、6筋に進出した銀でそのまま後手陣の歩を食いちぎり、タダで取らせたのが驚きの攻め方で、好位置に構えた角のラインを生かして後手の玉頭を直接攻める構想が見て取れます。形勢は難解で、局面は伊藤六段の細い攻めがつながるかどうかが焦点となっています。

伊藤六段が攻め切って2勝目

片上七段は先手陣に銀を打ってなんとかこの角を逸らそうと試みますが、伊藤六段はここで好手を用意していました。「終盤は駒の損得より速度」の格言通り角取りを手抜いて5筋に桂を据えたのがそれで、この桂が後手玉への寄せをにらむ拠点となっては伊藤六段の攻めが切れなくなりました。本格的な終盤戦を前に両者の持ち時間は1時間を切っています。

持ち駒の角と桂を自陣に打ち付けて粘る片上七段に対し、ここから伊藤六段の攻めが加速します。駒損を回復しつつ、6筋に桂を打って角取りとした局面ではすでに片上七段のほうににうまい受けがありません。終局時刻は22時22分、最後は自玉が一手一手の寄りと認めた片上七段が駒を投じて伊藤六段の勝ちが決まりました。

勝った伊藤六段は2勝1敗、敗れた片上七段は1勝2敗となっています。3回戦で伊藤六段は古賀悠聖五段と、片上七段は斎藤明日斗五段と対局します。

  • 伊藤六段は今年度17勝2敗、直近10戦も全勝と絶好調だ(未放映のテレビ対局除く)(写真は第52期新人王戦三番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)

    伊藤六段は今年度17勝2敗、直近10戦も全勝と絶好調だ(未放映のテレビ対局除く)(写真は第52期新人王戦三番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)