■ベテラン俳優陣に囲まれる環境に安心感
――制作発表会見の様子を見ていると、中村さんとベテラン俳優陣の方々がとても仲睦まじく、正に皆が心を開いている印象を受けました。“おじさまトーク”で大盛り上がりでしたね。
僕は「おじさんたち、もう少しメディア慣れしてくださいよ!」と思っていましたけど(笑)。
――おじさまトークを一生懸命パソコンに打ち込んでいる記者に、「今の話の何をメモってるんですか?」と中村さんがツッコんでいたのも面白かったです。
岡部さんの「暑いから体がかゆい」とか記事にしないでしょ!? と思ってしまって(笑)。
――その一方で「20代前半の頃は演劇界の先輩たちとお仕事して飲みに行かせていただいていたので、この環境を『好きっ!』って思っています。ずっとこういう環境にいたい」とも仰っていました。改めてどんなところが好きですか。
優しいんですよ、やっぱり。人は人生を重ねていくと、苦労したり、人の気持ちが分かるようになったりして、どんどん優しくなっていくと思うんです。そんな人たちの中にいると、如実に気を使わなくて済みますし。僕自身、幼い頃から兄の友達と仲良くしてもらったり、親の友達に遊びに連れて行ってもらっていたりしていて、年上の方といることが圧倒的に多かったんです。だから逆に年下の子に慕われると、慣れてなくて、考えないと行動できないというか。おじさんたちに囲まれている今の居心地が良すぎて、今後が怖いですもん。もし後輩ばかりの現場だったらどうしていいか分からなくなりそうで。
■“俳優”と“芸能人”、2つの視点で心がけていること
――年上の方といる環境が好きなのは昔からなんですね。会見では、年上の俳優さんたちに、バシバシとツッコミを入れていましたが、中村さんは現場ではツッコミキャラなんですか。
両方ですね。生瀬さんと悪ノリで盛り上がったり、誰もツッコまないときはツッコんだり。会見についてはいやらしいことを言いますが、主演が一言添えると記事になりやすいので(笑)。
――そんなところまで計算されているんですね!
自分が脇にいたとき「何を言っても記事にならないな」という経験をしてきたので、皆さんのコメントに一言添えるように意識していました。
――若手の頃は、会見がどう記事になっていくか、というところまでちゃんとチェックされていたんですか。
そうですね。売れたかったんで!
――(笑)。研究熱心で素敵です。
やっぱり拡大してくださるのはメディアの方々とWin-Winじゃないと宣伝は成立しないですし、“俳優”という職業とは別枠で、自分をプロデュースして高めていく“芸能人”としての視野も持とうといろいろなことを考えてやってきました。今は使えないこともたくさん言っちゃうくらい自由にやっていますけど。
■いい俳優とは「人としてちゃんとしていること」
――話は変わりますが、先程年下に慕われることに慣れていないと仰っていましたけど、ここ数年は所属事務所で「TopCoat夏祭り」というイベントを開催されていて……。
えっ、夏祭りのお話ありがとうございます! この質問は事務所の仕込みですか?
――違います(笑)。イベントでは後輩の俳優さんたちとも絡んでいますよね。今、トップコートの若手俳優さんがたくさん活躍されていますが、どんな思いで見ていますか。
うれしいです。そして、仕事でも、恋愛でも、人生でも、どんなことでもいっぱい苦労してねという気持ちです。人生がすんなり上手く行って簡単に飯が食えるようになるならそれも最高ですが、やっぱり失敗から得るものってすごく多いじゃないですか。歳を取ってから失敗すると複雑骨折になってしまうので、若い内に小さな失敗をいっぱいして、骨を強くしてほしいです。
――中村さんも、苦労や失敗から多くのものを得てきたんでしょうか。
たくさんの立ち位置や状況を経験してきて、下から上を見上げてきて。その経験があるからこそ、それぞれのポジションにいる方々の気持ちが分かるんです。自分が同じ思いを経験してきたから、辛苦に共感できる。先程もお話しした通り、そうやって人生を重ねていくことで、優しい人になっていけると思います。“いい俳優”に必要なものって何だろうって考えたとき、たとえば「天才的な演技力」というのも魅力的ですが、僕としては、「人としてちゃんとしていること」を一番大事にしたいと思っています。
――演技とか技巧よりも、人としてちゃんとしていることが大事だと。
嫌ですもん、どんなに芝居が良くても人として嫌な人。だから後輩には、望んでできることではないかもしれませんが、とにかくいろいろな経験をしてほしい。そんなことを考えながら見守っています。
1986年12月24日生まれ、東京都出身。05年に俳優デビュー。14年には主演舞台『ヒストリーボーイズ』で第22回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞。近年の出演作として映画『ファーストラヴ』『騙し絵の牙』(21年)、『ハケンアニメ!』(22年) 、『宇宙人のあいつ』(23年)、ドラマ『珈琲いかがでしょう』(21年)、『石子と羽男-そんなコトで訴えます?-』(22年)、舞台『狐晴明九尾狩』(21年)、配信ドラマ『No Activity 本日も異状なし』(21年)、『仮面ライダー BLACK SUN』(22年)など幅広い分野で活躍。待機作には『沈黙の艦隊』(9月29日公開予定)、舞台『OUT OF ORDER』(11月〜公演予定)がある。
ハヤブサ地区の町おこし動画用シナリオを書き上げたミステリ作家・三馬太郎(中村倫也)は、映像ディレクター・立木彩(川口春奈)との打ち合わせに赴く。以前のそっけなさは消え、はつらつと企画を進める彩との会話に心地よさすら感じる太郎だったが、彩は“大事なこと”を太郎に隠していた。そんな中、太郎は亡き父が遺した昔のアルバムから、ほかの写真とは異質の雰囲気を漂わせる、美しい女性(小林涼子)のポートレートを見つける。シャクナゲの花を手に、穏やかに微笑む彼女はいったい何者なのか。そんな第3話では、消防団メンバーを震撼させる最悪の事件が起こる。