第82期順位戦B級2組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、延期となっていた2回戦の井上慶太九段―高見泰地七段戦が7月29日(土)に関西将棋会館で行われました。対局の結果、110手で勝利した高見七段が今期順位戦での初勝利を挙げました。

高見七段意表の仕掛け

両者の初手合いとなった本局、先手となった井上九段は相掛かりの定跡形に誘導します。井上九段が4筋の歩を突いて持久戦を目指したところで後手の高見七段は右銀を繰り出して棒銀の態度をほのめかしました。間合いの計り合いが続いたのち、高見七段が結局この銀を5筋に腰掛けたことで局面は持久戦に落ち着きました。

駒組みが続くかと思われた局面で高見七段は4筋の歩を突いて戦端を開きます。自玉近くでの戦いだけに怖く思われましたが、この後に秀逸な構想が用意されていました。先手が軽快な桂跳ねで銀を取ったときにこの成桂を愚形の金寄りで取り返したのがその手始め。手に乗って2三の地点に逃げ出した後手玉には不思議と寄りつきの手段がありません。

高見七段が無理攻めとがめ快勝

駒割は部分的に銀桂交換で先手の駒得ながら、井上九段は歩切れとなっておりうまい継続手がありません。高見七段がじっと桂を跳ねて手を渡したとき、3筋の歩を突いて局面の打開を急いだ井上九段の勝負手が形勢に差をつける結果になりました。高見七段の受けの好手を見た井上九段は局後、この攻めが無理筋だったことを認めるほかありませんでした。

受けを基調にペースをつかんだ高見七段は満を持して待望の反撃を開始。終局時刻は20時6分、最後は自玉の詰みを認めた井上九段が投了を告げて高見七段の勝ちが決まりました。勝った高見七段は1勝1敗、敗れた井上九段は0勝2敗となっています。3回戦で高見七段は北浜健介八段と、井上九段は村山慈明八段との対戦が組まれています。

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水留 啓(将棋情報局)

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