第17回朝日杯将棋オープン戦(主催:朝日新聞社・日本将棋連盟)は一次予選が進行中。7月24日(月)には第3ブロック1回戦の片上大輔七段―伊藤匠六段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、三間飛車対急戦の熱戦を83手で制した伊藤六段が次回戦進出を決めました。

三間飛車と居飛車右銀急戦の対抗形

振り駒が行われた本局、後手となった片上七段は角道を止めた三間飛車に構えます。早めに9筋の位を取ってあるのが主張で、持久戦の展開に落ち着けば囲いの広さが物を言うという大局観に基づいています。これを見た先手の伊藤六段は自玉を舟囲いに収めたのち、右銀を右辺に繰り出して急戦の構えを取りました。

右辺での折衝で銀交換が行われたのち伊藤六段は角を大きくさばいて攻めを継続します。ここで3筋の歩突きによる反撃をもくろんでいた後手の片上七段ですが、伊藤六段の次の手を見て長考に沈むことに。飛車をじっと1マス浮いたのが受けの好手で、飛車交換になると陣形差で居飛車が指しやすくなるため片上七段は狙いの歩成りを実行できません。

八方にらみの角で伊藤六段が制勝

好調の時間帯が続く伊藤六段はこのあとも緩みない攻めでリードを拡大します。手持ちの角を盤上中央に放って盤面全体を支配したのが攻防に利く好手で、この手を見た片上七段は局後「ここはさすがに(形勢が)悪いと思った」と認めるほかありませんでした。こうなると序盤に片上七段が突いた7筋の歩がとがめられた格好です。

逆転を目指す片上七段は一分将棋の秒読みの中で必死に綾を求めますが、伊藤六段の指し手は冷静でした。終局時刻は11時47分(10時対局開始、持ち時間各40分)、終盤に形勢が接近する局面はありつつも最後まで決め手を与えなかった伊藤六段が攻め切って勝利を飾りました。

  • 他局の結果によっては次回戦で伊藤六段と斎藤明日斗五段による兄弟弟子対決が実現する可能性がある(写真は第52期新人王戦三番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)

    他局の結果によっては次回戦で伊藤六段と斎藤明日斗五段による兄弟弟子対決が実現する可能性がある(写真は第52期新人王戦三番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

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