様々な作品で話題を呼び、旬な俳優として注目される高橋文哉が主演を務める恋愛映画『交換ウソ日記』が公開された。同作は櫻いいよ氏による同名青春小説の実写化作品で、高校2年生の希美(桜田ひより)は、ある日移動教室の机の中で「好きだ!」と書かれた手紙を見つける。送り主は、学校イチのモテ男子・瀬戸山(高橋文哉)。イタズラかなと戸惑いつつも、返事を靴箱に入れたところから、ふたりのヒミツの交換日記が始まるが、実はその手紙や交換日記が希美の親友宛てのものだったことが判明する。勘違いから始まった交換日記を通した初々しい恋物語の模様を描く。
2022年のドラマ『君の花になる』も話題となった高橋だが、恋愛作品は「まだ得意か不得意かもわからない」というくらい経験がないという。これまでに様々な役を演じてきたが1周回って等身大の高校生を演じることになった主演映画について、話を聞いた。
■恋愛映画初主演で大事にしたことは?
――恋愛映画初主演作になりますが、難しいところはありましたか?
恋愛映画に初めて主演させていただいたのですが、同世代の方が集まっていて、いろんなキュンポイントがある中でどのように映ったらいいかなとか、何を届けたらいいかなといったことは常に考えながらやっていました。
実は僕、これまで全然恋愛ものをやっていないんです。ドラマで1回がっつりやらせていただいたのですが、まだ自分でも得意・不得意がわからないくらいのレベルで、この作品での胸キュンシーンは緊張しました。責任感からなのか、毎回前夜から緊張していた思い出があります。台本を読んでは「どんな風にやろうかな」と考えていました。
――『仮面ライダーゼロワン』以来キャリアを重ねられての主演という部分で、自分で成長したと感じるところはありましたか?
成長した部分は自分ではわからないですが、改めて「主演って大変だな」と思いました。僕が「主演だから」と苦労したことがあったわけではないのですが、心の持ちようの問題というか……すごく久しぶりの感覚になりながら撮影に臨みました。でも本当にキャストの皆さんが同世代で本当に素敵な人たちばかりだったので、そこに救われながら、何も主演らしいことせずに終わりました。
――演じたられた瀬戸山は「キラキラ王子様」といったキャラクターではなく、いい意味で自分が思ったことを口にしてしまう等身大の男子だなと思いました。その点について意識した部分はありましたか?
等身大という言葉は1番大事にしたかったので、そう見えていたなら嬉しいです。多分勝手にキラキラするタイミングがあるので(笑)、普段は普通の瀬戸山の人となりがわかった方が良いと思って。 日常でどれだけ等身大の瀬戸山を描けるかが大事だと思ったので、台本を読んだ段階から意識していました。あとは、思ったよりクールな人物じゃなかったと思うんです。
たとえばクールな人がたまに強い言葉を言うから刺さるといったこともあると思うのですが、瀬戸山はちょっと違って、本当に自分の思うがままに生きているんだな、ということが伝わればいいなと考えていました。友達の米田といたらすごくうるさかったりするだろうし、でもお腹がすいていたら下を向いて黙っていることもあるだろうし、思うがままに生きつつも、誰かを気遣う事ができる、優しい高校生でありたいなと思って演じていました。
――勝手にキラキラするタイミングというのは、「むにゅキュン」とか「お団子ぽふぽふ」みたいなシーンで…?
そういうシーンの時は、もう周りの皆さんを信頼して僕は何もせずに、ただ瀬戸山としてそこに存在することを意識していました。監督はもちろんですけど、スタッフの方だったり、キャストの皆さんがキラキラさせてくださるので、身を任せていました(笑)
――また、この映画の意外なところとして、マキシマム ザ ホルモンの曲がキーになるというところがあると思います。そこが気になる方に対してのおすすめポイントはありますか?
音楽と寄り添う映画になっていると思いましたし、「最初に聞いたマキシマム ザ ホルモン」と、「最後に聞くマキシマ ム ザホルモン」で気持ちが違うくらいの映画です。期待していただきたいです。
■手紙の字を間違えて直した跡も「いいな」
――これまでに役としてヒーロー、ボーイズグループ、怪奇と対峙する高校生などになったと思うんですが、今回普通の高校生という役を演じる点についてはいかがですか?
「やっと」という感じがします(笑)。どれだけナチュラルにできるかな、とも思いました。非日常っぽいシチュエーションの役が多く、日常を描く作品に出ることが案外なかったので、親しみやすさを感じてもらえたらと。
――今後も恋愛作品をやりたいという気持ちはありますか?
これまでもやりたいと思っていましたし、今もその気持ちはあります。特に高校生の恋愛は、できるうちにやりたいなと。いろんな方から「大人になっていくと、もっと深い恋愛の作品に関わっていくことになる」「そこでしっかりとした役者としての味を出すためには、ちゃんと学生時代を表現しておいた方が良い」とアドバイスをいただくので、しっかりと演じていきたいと思っています。
――いろいろ役者として経験を積んで、変わってきた部分もあるんですか?
台本の読み方は変わってきた気がします。想像力が豊かになったというか、台本だけじゃなくて小説も読んだだけで景色が自分の中でパッと一瞬で頭に浮かぶようになりました。例えばドライブの描写があったら、誰が車の中にいて運転していて、何が置いてあって、どういう場所で、みたいなことが浮かんで、これまでの経験で世界に入り込む力を培うことができたのかなと思って。きっと今までもあったと思うのですが、そこまで明白には見えていなかったことが多かったのかなと思います。だから、最近は本を読んだりすることも楽しくなってきました。
――今回は「交換日記」がキーアイテムですが、撮影の終わりに手紙をやりとりされるといった話もよくうかがいます。今作でそういうことはありましたか?
もちろん手紙をいただく機会もありますし、僕もこの作品で共演した方には書きました。劇中で使った実際の交換日記のノートを全員分ちぎってもらって、クランクアップの時に手紙を書いて渡しました。もう帰り際にぱっと渡したので、反応は見ていないんですけど(笑)
――それはすごくうれしいんじゃないでしょうか?
そう思っていただけたらうれしいです。
――ファンの方からお手紙をもらう機会も多いと思います。
送っていただいた方の人柄が伝わってくるので、僕は直筆の手紙をいただくのがすごく好きなんです。字を間違ってぐしゃぐしゃってしたりとか、修正テープで訂正していたりとか、そういうのもいいなと思います。字を間違えて新しい手紙に書き直す方もいると思いますが、ぜひ僕には間違ったところを直した跡があるまま送ってほしいです(笑)
――もらってうれしい内容などはありますか?
内容というより、もう手紙というもの自体が嬉しいんです。デジタルの時代ですが、この映画を通して「交換日記」もいいなと思ってもらえたらうれしいです。
――高橋さんの世間での存在感もどんどん大きくなっていると感じますが、ご自身で実感されることはありますか?
そんなに実感できていないですけど、街で話しかけていただける機会は本当に増えたなと思って、だからこそ、より「ちゃんとしよう」と思っています。家にいることも多いので、SNSやYouTubeでいろんな方のアクティビティを見て、「スキューバダイビングに行きたいな」「アルコールインクアートをやってみたいな」とか、やってみたいことが増えてきました。ただ行動に移すまでに時間がかかるので、今はやりたいことがたくさん溜まっている状態です(笑)
■高橋文哉
2001年3月12日生まれ、埼玉県出身。2019年、『仮面ライダーゼロワン』で主人公に抜擢され、その後も様々なドラマに出演。『最愛』(21年)や、歌とダンスに初挑戦し話題となった『君の花になる』(22年)での好演も注目を浴び、2022年には日経トレンディが選ぶ「2023年来年の顔」にもなった。主な出演作にドラマ『着飾る恋には理由があって』(21年)、映画『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~ ファイナル』(21年)、映画『牛首村』(22年)、ドラマ『悪女(わる) ~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~』(22年)、『女神の教室~リーガル青春白書~』(23年)などがある。2023年公開のアニメ映画『ブラッククローバー 魔法帝の剣』では声優に初挑戦している。